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平成二十八年四月二十二日提出
質問第二五五号

消費増税が日本経済に与える悪影響に関する質問主意書

提出者  福田昭夫




消費増税が日本経済に与える悪影響に関する質問主意書


 十%への消費税再増税が再延期される事が決定したかのような報道がなされ、首相はそれを否定している。軽減税率が来年四月から実施されるのであれば、事業者はシステム改修などの準備を急がなければならないが、増税延期観測が浮上している現在、現場は困惑している。
 これに関連して質問する。

一 十%への消費増税は延期されるという予測は各種報道機関により出されており、株式市場にもすでに相当程度織り込まれていて、例えば小売株は消費の逆風が弱まるとの見方から値持ちがよい。消費増税が延期されなければ株は暴落すると言われている。日本経済新聞とテレビ東京が二月二十六〜二十八日に行った世論調査でも、来年の消費増税に対し「反対」は五十八%で「賛成」の三十三%を大きく上回った。このような予測や国民の声があるということをどのように考えるか。
二 三月十八日の予算委員会で安倍総理は来年の消費増税に関し「経済が失速しては元も子もない」と発言している。これは消費増税で経済が失速した場合、社会保障制度にも悪影響を及ぼすという意味か。
三 「経済が失速しては元も子もない」のだから、これからしっかり経済対策を行って増税が可能な経済状況にしていくべきだという意見もある。しかし、一時的な消費刺激策は消費の先食いになることもあり、駆け込み需要に拍車をかけ、逆に反動減を増幅する結果となり、長い目で見れば経済に害になる事も考えられる。つまり一時的な消費刺激策では消費増税による経済の失速を防ぐことはできないと考えるが同意するか。
四 多くの国民は将来の生活に不安を持っている。将来、増税が控えており社会保障制度も崩壊の危機にあるのではないか。国の借金は一〇〇〇兆円を超え、どんなに消費増税を行っても社会保障制度はいずれ崩壊するから、節約してお金を貯めておかねばならないのではないかと感じている。そこに日銀がマイナス金利を始めた。もともと金利はほぼゼロだったので、更に下げても影響は少ない。しかしマイナス金利を導入しなければならないほど日本経済は悪いのかという印象を与え、ますます節約志向が高まっており、それが景気の足を引っ張っている。金庫の売り上げが伸びているということも、国民の不安を示している。一部では預金封鎖もあるのではないかと思っている人もいるようである。不安を除くために今政府がやるべきことは、消費増税を中止、若しくは消費増税を行い強力な財政政策を行う事だ。更に消費増税がなくても大規模な景気対策を行えば国の借金のGDP比は減っていき将来へのツケを減らす事が出来る事をマクロモデルを使った試算で国民に示す事だと考えるが同意するか。
五 このように国も国民もマスコミも来年の消費増税に関して強い関心が集まっているときなのだから、消費増税を行った場合と行わなかった場合の比較を、経済モデルを使って行い国民に示す必要がある。
 二〇一四年度の消費増税の前、二〇一二年一月二十四日に内閣府から発表された「経済財政の中長期試算」においては消費増税を行った場合(一体改革あり)とそうでない場合の比較が行われ、実質GDPの四年間の合計で両者の差は僅か〇.一%となっていたが現実では増税の悪影響はそれより遥かに大きかった。
 また、二〇一三年十月一日の甘利大臣は「来年度四〜六月期に見込まれる反動減、四月に消費税を引き上げると、駆け込み、そしてその後に反動減があるわけであります。その反動減を大きく上回る五兆円規模(景気対策の規模)とする」と発言した。
 これらより、政府は消費増税の影響を軽視していたのは明らかである。見通しが甘すぎたために「経済が失速しては元も子もない」状態を自ら招いてしまったわけである。二〇一四年の消費増税による経済の落ち込みからパラメータを定めれば、来年の消費増税による更なる深刻な経済失速が予測できるのではないかと考える。実際は、政府はその事を理解しているが、その事実を発表していないだけだという推測があるが、このことに関してどのように考えるか。
六 政府は訪日客を二〇二〇年に四〇〇〇万人に増やす目標を掲げている。外国人を歓迎し、大いに消費してもらう政策を進めているのだが、一方では、消費増税によって、可処分所得を減少させ日本人の消費を事実上減らす政策を行っている。なぜ、外国人を優遇し日本人を冷遇するのか。
七 景気対策としてのマイナス金利政策と量的緩和は相性が悪いのではないか。日銀は三月二十八日、金融緩和の為に実施した短期社債(CP)買入れで当初予定していた六〇〇〇億円分を買えず「札割れ」となった。これは債券購入で金利にマイナス〇.六四七%という下限を設けた為である。マイナス金利ということは金利を受け取るのではなく支払うわけで、損失が生じる。逆にカネを借りる側では利益を得るという不健全な取引となる。このような「札割れ」は国債でも起きてもおかしくない。これは金融緩和の限界を意味しており、今後は財政政策に重点を移すべきではないか。
八 答弁書(内閣衆質一九〇第一七四号、以下「答弁書」という)は、「我が国の財政状況は、国・地方の債務残高がGDPの二倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれる」と述べているがこれは間違いではないか。なぜなら今年一月二十一日に内閣府から発表された「中長期の経済財政に関する試算」(以下「試算」という)の四頁には、今後国・地方の債務残高のGDP比は減少していく事が示されているからである。
九 答弁書では「ハイパーインフレーションは、戦争等を背景とした極端な物不足や、財政運営及び通貨に対する信認が完全に失われるなど、極めて特殊な状況下において発生するものであり、現在の我が国の経済・財政の状況において発生するとは考えていない。」とある。このことにより消費増税を延期しても、あるいは相当な規模の財政出動をしてもハイパーインフレーションにはならないと内閣は認識していると理解してよいか。
十 答弁書では「財政に対する市場の信認が喪失し、金利が急激に上昇するようなことがあれば、経済・財政及び国民生活に大きな影響が及ぶと考えている」と述べている。金利上昇が生活に悪影響を及ぼすということであるが、内閣府の試算においては、長期金利は二〇二〇年には三.九%、二〇二四年には四.六%まで急上昇しており、現在の政策が続くと国民生活は悪化するということか。
十一 それとも、「財政に対する市場の信認が喪失し、金利が急激に上昇するようなこと」は二〇二四年度まではあり得ないという事が試算で証明されたと見なすべきなのか。金利が急激に上昇するということは債券価格の急落を意味するから、債券全般から資金が引きあげられ、他の資産への買いが集中する事を意味すると思われる。国債価格の急落による国家財政への懸念増大や、市中銀行の信用の喪失ということか。それは預金、ひいては通貨への信認の喪失になり、国民全般における換物行動を促進し、物価上昇を高進させる。すなわち、「財政に対する市場の信認が喪失し、金利が急激に上昇するようなこと」とは、急激なインフレ、ハイパーインフレとほぼ同義になるのではないか。一方、「財政に対する市場の信認が喪失し、金利が急激に上昇するようなこと」がハイパーインフレではないということであれば、それは適度なインフレ(適度な債券や通貨の信認喪失によって生じる適度な換物行動に起因する適度なインフレ)になると思われる。その場合、内閣の「長引くデフレからの早期脱却」という目標に資するのでないか。

 右質問する。



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