質問本文情報
平成二十八年五月二十六日提出質問第三〇〇号
大学における英語授業の外部化に関する質問主意書
提出者 阿部知子
大学における英語授業の外部化に関する質問主意書
大学等における英語授業の外部化について、平成二十八年一月二十日付質問主意書に対する答弁書、平成二十八年四月二十日付質問主意書に対する答弁書及び平成二十八年五月九日付質問主意書に対する答弁書を踏まえ、以下質問する。
平成二十八年五月十七日付答弁書「二の2の(一)の(1)のア及びウ並びに(2)のア及びウについて」において、「大学の設置等に係る提出書類の作成の手引」により文部科学省に提出する「教員名簿」に記載されるべき者は、シラバスを作成し、単位を認定する者であって、請負契約により大学の校務を請け負った事業者に雇用されて当該校務に従事する者ではないこと、及び、同答弁書「二の1の(一)の(1)及び(二)の(1)について」において、請負契約により大学の校務を請け負った事業者に雇用されて当該校務に従事する者は学長の指揮命令権の下で当該校務に従事する者ではないため、学校教育法第九十二条第二項に規定する「その他必要な職員」に当たらないことが明らかにされている。
また、平成二十八年一月二十日付質問主意書で具体的事例として示した平成二十七年四月に開設されたA大学B学部の設置に際して文部科学省に提出された「教員人事」名簿では、A大学B学部の第一年次の「アカデミック・イングリッシュ」は、「兼任」の「講師」である調書番号二十九番、三十八番及び三十九番の外国人がスピーキング&リスニングT及びUを担当し、また、三十四番及び四十番の外国人がリーディング&ライティングT及びUを担当することになっている。ところが、文部科学省により学部設置届出が受理され、定員増が認可されて、B学部が開設されるや、A大学B学部ではY准教授を第一年次の「アカデミック・イングリッシュ」の授業すべてを行う担当教員としている。A大学では、B学部設置の学内での作業の段階から、同学部の英語授業については外部委託をすることが既定方針となっていた。外部委託の方式もA大学の他学部で行われていた請負契約により大学の校務を請け負った事業者に雇用されて当該校務に従事する外国人「講師」による英語授業であり、B学部設置に際して文部科学省に届け出た「教員人事」名簿には、請負契約により大学の校務を請け負った事業者に雇用されて当該校務に従事する外国人「講師」を掲載していた。
このことを踏まえて、質問する。
(一) 平成二十八年五月十七日付答弁書によれば、A大学B学部の具体的事例の場合、大学における学部設置に当たって文部科学省に提出される「教員人事」名簿に掲載するべきは、「Y准教授」であって、学校教育法第九十二条第二項に規定する「その他必要な職員」にも該当しない請負契約により大学の校務を請け負った事業者に雇用されて当該校務に従事する外国人「講師」ではないということになるが、それで良いか確認したい。
(二) 平成二十八年一月二十九日付答弁書「四について」では、「文部科学省は、大学の設置等の認可の申請及び届出に係る手続等に関する規則(平成十八年文部科学省令第十二号)第十四条の規定に基づき、学部等の設置の認可を受けた者又は届出を行った者に対し、当該認可又は届出に係る学部等の設置に関する計画等(以下「設置計画等」という。)の履行の状況を確認するための調査を毎年行っており、その調査の結果、当該設置計画等とその履行の状況が異なることが判明した場合は、原則として、当該設置計画等のとおり履行するよう指導している」とされているが、当初提出された「教員人事」名簿に学校教育法第九十二条第二項に規定する「その他必要な職員」にも該当しない請負契約により大学の校務を請け負った事業者に雇用されて当該校務に従事する外国人「講師」が記載されていた場合は、「当該設置計画等のとおり履行する」ことは誤った指導となると思われるが、A大学B学部の具体的事例の場合は、どのような内容の「指導」を行うことになるのか、伺いたい。
(三) 大学における学部設置に当たって文部科学省に提出される「教員人事」名簿について、A大学B学部の設置届出の際には学校教育法第九十二条第二項に規定する「その他必要な職員」にも該当しない請負契約により大学の校務を請け負った事業者に雇用されて当該校務に従事する外国人「講師」を掲載しておき、学部設置後にはB学部設置の作業の段階から既定方針のとおり、専任教員であるY准教授が、学校教育法第九十二条第二項に規定する「その他必要な職員」にも該当しない請負契約により大学の校務を請け負った事業者に雇用されて当該校務に従事する外国人「講師」が行う授業をすべて担当する旨の届出をすることは、「学部等の設置の認可の申請又は届出において、偽りその他不正の行為があったと認められる場合」に該当するか、伺いたい。また、該当しない場合は、その理由を示されたい。
(四) A大学B学部の設置の際に文部科学省に提出される「教員人事」名簿で、調書番号二十九番、三十八番及び三十九番の外国人がスピーキング&リスニングT及びUを担当し、また、三十四番及び四十番の外国人がリーディング&ライティングT及びUを担当することになっているところを、すべて専任教員であるY准教授が担当することとした場合、Y准教授が担当する授業数は明らかに過大なものであるためY准教授が担当する授業を減らすように指導することとなるのか、そのY准教授が学校教育法第九十二条第二項に規定する「その他必要な職員」にも該当しない請負契約により大学の校務を請け負った事業者に雇用されて当該校務に従事する外国人「講師」を活用して複数の授業科目の授業を別々の場所において同時に実施することとすれば「教員人事」名簿は適正なものとして何らの「指導」も行われないことになるのか、又は、その段階で労働者派遣法との抵触を確認する「指導」を行うこととなるのか、伺いたい。
二 「大学が担当教員以外の者を授業において活用することにより、担当教員を同じくする複数の授業科目の授業が別々の場所において同時に実施されることがあり得る」ことについて
平成二十八年五月十七日付答弁書「二の3の(一)について」で、「大学が担当教員以外の者を授業において活用することにより、担当教員を同じくする複数の授業科目の授業が別々の場所において同時に実施されることがあり得る」具体例として、「例えば、実技を伴う授業科目において授業として実技を行う際に労働者派遣契約に基づき当該実技を監督し得る者を活用することにより、当該授業科目の担当教員は当該実技を行う場所とは別の場所において当該授業科目とは別の授業科目の授業を実施する場合」を示していただいているが、「そのような場合であって」、「学校教育法、労働者派遣法等の関係法令の規定に則して実施されている場合であるか否かについては、個別具体的な状況に即して判断すべきものであることから、お尋ねのケースについて一概にお答えすることは困難である」と答弁いただいている。
このことを踏まえて、質問する。
(一) 具体例として示していただいている事例において、「実技」ではなく「実技にとどまらない英語の授業」を行い、また、その「英語の授業」を「労働者派遣契約」ではなく契約の法的性格から学長が監督することができない「請負契約」に基づき、学校教育法第九十二条第二項に規定する「その他必要な職員」にも該当しない大学の校務を請け負った事業者に雇用されて当該校務に従事する外国人「講師」を活用して行うことにより、当該授業科目の担当教員は当該実技を行う場所とは別の場所において当該授業科目とは別の授業科目の授業を実施する場合も、「大学が担当教員以外の者を授業において活用することにより、担当教員を同じくする複数の授業科目の授業が別々の場所において同時に実施されることがあり得る」具体例として挙げることができるか、伺いたい。
(二) A大学B学部においてY准教授が第一年次の「アカデミック・イングリッシュ」の授業を学校教育法第九十二条第二項に規定する「その他必要な職員」にも該当しない請負契約により大学の校務を請け負った事業者に雇用されて当該校務に従事する外国人「講師」を活用して、複数の授業科目の授業を別々の場所において同時に実施していることについて、B学部長が「個別具体的な状況に即して」「学校教育法、労働者派遣法等の関係法令の規定に則して実施されている場合であるか否か」を明らかにするために、文部科学省及び東京都労働局に出向いて照会したところ、文部科学省及び東京都労働局からは何ら問題の指摘はなく、学校教育法、労働者派遣法等の関係法令への抵触はなかったというが、それは事実か、伺いたい。
三 請負契約により大学の校務を請け負った事業者に雇用されて当該校務に従事する外国人「講師」による外国語授業についての学校教育法や労働者派遣法等の関係法令への抵触の判断について
(一) 平成二十八年一月二十九日付答弁書の「三について」によれば、「文部科学省としては、これまでも、大学における請負契約等に関する留意点について学校法人等に示すとともに、当該留意点について大学から相談があった場合には、当該大学に対し都道府県労働局への確認を促すなど、労働関係法令の適正な運用を指導しているところ」であるとしているが、大学が、学校教育法第九十二条第二項に規定する「その他必要な職員」にも該当しない請負契約に基づき大学の校務を請け負った事業者に雇用されて当該校務に従事する外国人「講師」を活用して英語授業を行っている場合、大学側から自ら進んで、具体的かつ正確な資料を提供して、当該授業が学校教育法や労働者派遣法等の関係法令に抵触するのではないかという照会をすることは、通常期待できないと考えるが、政府は、大学側に任せておけば、自ら進んで具体的かつ正確な資料を提供して当該授業が学校教育法や労働者派遣法等の関係法令に抵触するか否かを照会すると考えているのか、伺いたい。
また、大学側から、自ら進んで具体的かつ正確な資料を提供して、当該授業が学校教育法や労働者派遣法等の関係法令に抵触するのではないかという照会をすることが期待できないとすれば、どのような方法によれば、教育現場における法令順守を徹底することが可能であると考えているか、伺いたい。
(二) 平成二十八年一月二十九日付答弁書の「三について」によれば、「今後、文部科学省の主催する全国の大学を対象とした会議等を通じて、各大学における外国語科目等の教育活動の実態等を把握し」と回答し、平成二十八年五月十七日付答弁書の「二の2の(二)について」で、「「単位を授与することは学校教育法上適正な行為と判断され」るものであるかについては、授業科目の授業が担当教員の定める各授業時間ごとの指導計画の下に実施されているか否かなど授業の実施状況について担当教員が十分に把握し、その責任において学生の成績評価を行うなどの適切な対応がとられているか否かについて様々な事情を総合的に考慮して個別具体的に判断する必要があり」と述べ、また、「「乙講師について労働者派遣法上適正な行為であると判断されるものであるか」については、(中略)授業の開始前や終了後の働き方を含めた様々な事情を総合的に考慮して個別具体的に判断する必要があり」と述べているように、学校教育法及び労働者派遣法等の関係法令に抵触していないかどうかは「様々な事情を総合的に考慮して個別具体的に判断する」ことが必要であると回答している。
そこで、「各大学における外国語科目等の教育活動の実態等を把握」するにあたっては、「様々な事情を総合的に考慮して個別具体的に判断する」ことが可能となる程度にその実態等を把握することとしているかどうか、伺いたい。また、そうでない場合には、どのような調査を行えば、あるいは、どのような方法によれば、「様々な事情を総合的に考慮して個別具体的に判断する」ことが可能となるのか、示されたい。
四 私立大学における外国語授業についての学校教育法や労働者派遣法等の関係法令への抵触の判断を行うべき責任主体について
私立大学における外国語授業について、学校教育法や労働者派遣法等の関係法令が遵守されるためには、学校法人及び大学に対して、その責任と権限を明確に示しておく必要がある。そこで、以下質問する。
(一) 私立大学における外国語授業についての学校教育法や労働者派遣法等の関係法令への抵触の判断を行うに当たって、私立学校法第三十六条を根拠として「どのような組織においても、最終的な意思決定を行う機関は一つである。そうでなければ組織を運営することはできない。学校法人の運営において最終的な意思決定を行う権限は、全て理事会にある。学校法人が設置する大学は、学校法人から独立性を有する自立した団体とは認められず、あくまで学校法人内部の一組織である(一般企業における部、局その他の組織に該当する)ことは明らかである。」という考えは適切かどうか、伺いたい。
また、この見解に従えば、学校法人が設立する「大学における外国語科目等の教育活動の実態」を勘案しての学校教育法や労働者派遣法等の関係法令の遵守についての一切の責任と権限は、学校法人の理事会にあり、大学の学長には何らの責任と権限はないということになるが、それで良いかどうか、伺いたい。
(二) 「我が国の大学におけるガバナンスの仕組みについては、教学面と経営面とが別々の法体系で規定されており、それぞれの法体系が大学に適用されている点を理解する必要がある」(「大学のガバナンス改革の推進について(審議まとめ)」(平成二十六年二月十二日付中央教育審議会大学分科会)十頁)との見解は、私立大学における外国語授業について、学校教育法や労働者派遣法等の関係法令の遵守に係る責任と権限のあり方について、どのように理解することを求めているのか、伺いたい。
例えば、学生への単位認定が学校教育法に抵触するかの判断については学校教育法第九十二条第三項に基づき大学の学長が責任と権限を有し、他方、請負契約により大学の校務を請け負った事業者に雇用されて当該校務に従事する外国人「講師」を活用していることが労働者派遣法に抵触するかどうかについては、私立学校法第三十六条により学校法人の理事会がその責任と権限を有するということになるのか、伺いたい。
右質問する。