衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成二十八年五月三十日提出
質問第三二一号

臨床研究に関する質問主意書

提出者  郡 和子




臨床研究に関する質問主意書


 去る五月二十五日の厚生労働委員会において審議された「臨床研究法案」および臨床研究に関して、以下の通り質問する。

一 治験薬GMPへの準拠、保険併用の可否、未承認医薬品の授受について
 1 五月二十五日の厚生労働委員会での「臨床研究法案」の質疑において、特定臨床研究の未承認医薬品について「治験薬GMPに準拠することを求める」との答弁を厚生労働大臣からいただいた。治験薬GMPへの「準拠」を求めるということは、医薬食品局が管轄する、又は医政局研究開発振興課と共管するといった形が必要と考えるが、どうか。あるいは、「準拠」であって直接「適用」ではないため、必ずしも医薬食品局の管轄又は共管が必要ではないと考えているのか。
 2 ICH−GCP準拠、治験薬GMP準拠、ということだが、この場合の「準拠」と「遵守」「適用」との違いについて、説明いただきたい。
 3 先進医療Bも未承認医薬品を用いるならば特定臨床研究ということだが、未承認医薬品を用いる特定臨床研究は、先進医療Bとして承認されない限りは保険併用できないのか。
 4 臨床研究法は薬事法令ではないため、特定臨床研究であることを根拠として、当該研究を未承認医薬品の授受を禁じる薬事法第五十五条の適用除外とすることはない、と理解してよいか。すなわち、依然として、「臨床研究において用いられる未承認医療機器の提供等に係る薬事法の適用について」(平成二十二年三月三十一日付薬食発〇三三一第七号)及び「「臨床研究において用いられる未承認医療機器の提供等に係る薬事法の適用について」に関する質疑応答集(Q&A)について」(平成二十三年三月三十一日付薬食監麻発〇三三一第七号)の考え方に沿う限り、同法第五十五条が禁じる未承認医薬品の授受は許容される、という理解でよいか。
 5 未承認再生医療製品においても「「臨床研究において用いられる未承認医療機器の提供等に係る薬事法の適用について」に関する質疑応答集(Q&A)について」の考え方に沿うことで授受が認められることになるか。あるいは、授受を認めるためには異なる規制上の対応が必要となるか。
 6 未承認再生医療製品においても治験薬GMPへの準拠を求めるのか、あるいは異なる規制上の対応を求めるのか。
二 有害事象報告・GLPへの準拠について
 1 医薬品等の臨床研究における有害事象や副作用の報告については、現在、治験、先進医療、医学系指針で、報告書式や報告ルートが異なるため現場が対応に苦慮しており、行政としてもデータが蓄積しない状況になっていると承知している。特定臨床研究において治験薬GMP準拠とすることから、医薬食品局が共管し、有害事象や副作用情報の報告書式や報告ルートも揃えていくことによって、よりICH−GCPに近づくと考えるが、いかがか。
 2 ICH−GCP準拠ということから、人に投与する前の安全性を試験する非臨床安全性試験等においても、未承認医薬品の品質基準であるGLP(good laboratory practice)への「準拠」を求めることになるか。
三 結果の信頼性及び「スポンサー」による届出、及び薬事法外の法令とすることについて
 1 五月二十五日の厚生労働委員会での「臨床研究法案」の質疑に対する答弁において、特定臨床研究はICH−GCPに「準拠」することになり、結果の信頼性については同等だが、治験ではないため承認申請資料として「一般的には使用できない」、すなわちその扱いは同等でないとの見解を厚生労働省は示したと認識している。海外の研究者が承認申請を目的とするもの以外にも適用される薬事関連法規に基づくGCPで臨床試験を実施し、日本の研究者が特定臨床研究法に従って多国籍共同臨床試験を行う場合であって、海外の規制当局から日本のデータの信頼性に関する説明を求められたときには、厚生労働省は、ICH−GCPに準拠しており結果の信頼性は同等だが、申請資料としては同等ではないと説明するのか。また、現在国際共同研究を計画立案中の研究者が海外の規制当局に対して説明しうる英語表現をご教示いただきたい。
 2 ICH−GCPは、「スポンサー」が主導し臨床試験に関する全般的な責任を担う制度設計となっている。一方、治験・医学系指針は、実施機関の長の了承又は許可を必要とされ、実施機関の長と研究責任者の責任を書き分ける制度設計になっている。臨床研究法に基づく実施基準は届出を行った者が「スポンサー」となりICH−GCPと同様の制度設計となることが想定されると理解してよいか。あるいは、治験・医学系指針と同様の制度設計を想定しているのか。
 3 企業が資金提供するのではなく、自らの企業資金によって実施する未承認医薬品の企業主導臨床研究であって承認申請を目的とするものでないものは、特定臨床研究「一」に該当するのか。もし該当しない場合、有効性安全性を明らかにしようとするものではなく薬物動態等を明らかにしようとするときは、臨床研究法の適用となるのか。
 4 特定臨床研究は厚生労働省への届出を義務とするため、実務上は治験と同様の事前審査が行われることも考えられる。一方、米国のIND(investigational new drug)制度をはじめとする諸外国の制度では、薬事関連法に基づくGCP規則に従う研究者主導の臨床試験は、法令上は許可制だが運用上は届出同様としているという実情がある。あえて国際標準とは異なり、薬事法外にて特定臨床研究を規制しなければならなかった理由は何か。
四 臨床研究法と医学系指針の区分について
 1 医学系研究指針の侵襲・介入ありの研究のうち、未承認又は適応外医薬品等を用いるもの、企業資金提供があるものは特定臨床研究となるため、同指針の侵襲・介入ありの研究の主たる適用対象は、手術方法・手技等に関するもの、承認医薬品を用いるものであって企業資金提供のないもの、という理解でよいか。さらに、後者のうち承認医薬品を用いて有効性安全性を明らかにしようとするものは特定臨床研究ではないが、臨床研究法の適用を受ける、という理解でよいか。
 2 手術・手技についての研究であって、かつ臨床研究法の適用となる医薬品等も用いる場合には、医薬品に関する部分は臨床研究法、手術・手技に関する部分は医学系指針、となるのか、それとも法の適用される医薬品等を用いる場合には手術・手技も含めて法の適用とされるのか。
 3 臨床研究法で新たに規定されるICH−GCPに準拠した実施基準は、医学系指針とは別に作成するのか、あるいは現行の医学系指針にある規定は同一として、上乗せ規定を設けることになるか。
五 資金源による適用の線引きと産学連携・研究推進について
 1 諸外国では、企業の資金支援や承認申請目的の有無にかかわらず医薬品臨床試験は薬事法で一律に規定され、米国では研究者主導の試験は企業試験と比べて運用上規制緩和されるため産学連携が促進されている。日本の場合、企業等が資金提供する研究は特定臨床研究として規制され、結果を承認申請に使えないということだと、承認・製品化を目指した産学連携が促進されず、企業資金がアカデミア主導の研究に投入されず講演料等に流れてしまうことが懸念されるが、いかがか。
 2 公益財団等を経由する企業資金も特定臨床研究として扱うということであるが、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)やNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)等の公的資金で企業も参画し資金提供するものも同様の扱いとなるのか。
六 学問の自由と人間の尊厳・被験者の人権のバランス、手術・手技に関する研究の扱いについて
 1 五月二十五日の厚生労働委員会での中島克仁委員の質問に対し、塩崎国務大臣は「臨床研究に関しましては、行政による研究計画の事前審査を受けることを義務づけることについては、臨床研究に係る制度の在り方に関する報告書において、学問の自由、それから医療現場への負担、あるいは当局の体制等を踏まえた実効性といったようなことを考えると、実施には慎重であるべきとされている」と答弁している。大臣答弁にある「学問の自由」、「医療現場の負担」、「当局の体制」の三点について、日本がアジア・アフリカ諸国が実施できているような事前審査をできないとする理由を、具体的に説明されたい。
 2 五月二十五日の厚生労働委員会での中島克仁委員の手術・手技に係る臨床試験に関する質問に対して、塩崎国務大臣は「EU、米国でも原則として規制をしていないという事実」と答弁している。EU指令は手術・手技に関する共通法令を設けていないが、米国(公的研究費を受ける施設のみ)、フランス、オランダ、スウェーデン、韓国、台湾においては、手術・手技も法令により規制しているという事実を認識しているか。
 3 欧州評議会では、医薬品と手術・手技を区別しない「生物学および医学の実践に関する人権および人間の尊厳の保護のための条約」(以下、「人権と生物医学に関する欧州条約」)があり、四十七加盟国中二十九か国で批准されていると承知しているが、この事実を認識しているか。
七 補償と保険について
 1 被験者の健康被害補償について、五月二十五日の厚生労働委員会で中垣政府参考人は、「通常の医療の一環として医薬品が処方され、適正に使用されている患者を対象にその医薬品に関する臨床研究を行うという場合」には「原則として医薬品副作用被害救済制度の対象」と答弁しているが、企業が資金提供していても研究者主導であればこの解釈のとおりという理解でよいか。
 2 被験者の健康被害の場合における医療費自己負担分について、医薬品シーズに係るアカデミア主導による健康人対象の早期・探索的臨床試験であってさえも、それを被験者に負担させないことは、学術研究機関の資金運用体制や混合診療禁止の原則との関係で、難しいと承知している。五月二十五日の厚生労働委員会での私の質問で「民間保険会社が医療費をカバーするような保険契約が可能になるような検討はぜひ進めていただきたい」と大臣にお願いした。その理由は、行政的な指導がないと新たな形の保険契約を可能にすることは難しいためである。この点についてはぜひ行政も関与する形で検討していただきたいが、いかがか。
 3 企業主導治験における健康被害補償保険契約は会社ごとに包括契約となっている場合が多く、研究者主導の個別臨床研究では計画ごとに契約しているため効率が悪い。包括契約とできない主たる原因は公的資金が一年ごとの契約を原則としているためである、と承知している。健康被害の補償保険契約による被験者保護の実効性を高めるために、補償保険契約を柔軟に行えるように公的資金の運用を改善することが望まれるが、いかがか。
 4 公的研究資金を補償保険契約に使うことはできるようになった。医療費の自己負担分等に係る補償の支払いにも使えるようにすべきだと考えるが、いかがか。
 5 将来目標としては、医薬品副作用被害救済制度のような基金を臨床研究においても設けることが、公的資金の有効活用という観点から望ましいと考える。産科補償制度に倣えば実現不可能ではないと考えるし、国民の信頼も得られると考えるが、いかがか。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.