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平成二十八年九月二十六日提出
質問第二号

他都府県から沖縄県への機動隊派遣に関する質問主意書

提出者  仲里利信




他都府県から沖縄県への機動隊派遣に関する質問主意書


 去る平成二十八年七月から現在までにかけて、東京都や千葉県等六都府県の警察から機動隊員が沖縄県東村高江等に派遣された事案については、平成二十八年八月一日付で質問を行い、平成二十八年八月八日に内閣衆質一九一第一五号で答弁を得た。
 その際に、本職が沖縄県公安委員会からの要求と警察庁、他都道府県公安委員会とのかかわり方を質したところ、政府は「警察庁はあらかじめ沖縄県警察から連絡を受けた」ことや、「援助の要求は沖縄県公安委員会の判断の下、適切に行われた」こと、「派遣は各都府県公安委員会の判断の下、適切に行われた」こと、並びに「派遣に伴う経費は警察法第三十七条第一項の規定により国庫が支弁する」ことと答弁した。
 しかし、沖縄県内の地元紙の調査及び報道、さらには市民による情報公開請求結果によれば、沖縄県公安委員会の「警察職員の援助要求について」の文書の日付は平成二十八年七月十二日付けであるが、その前日の七月十一日に警察庁から警視庁や各県警本部あてに「沖縄県警察への特別派遣について(通知)」という文書が出され、「派遣期間及び派遣部隊については次のとおりであるから、派遣態勢に誤りなきを期されたい」との厳命が下されたとのことである。また、派遣要求に当たり「沖縄県公安委員会の会議は全く開かれていない」し、そのことを市民団体が追及すると沖縄県警察は「公安委員一人一人に説明した」と釈明したとのことである。
 さらに、六都府県から派遣されている機動隊のガソリン代や高速道路代等の費用を沖縄県警察が負担していることが明らかになったとのことである。
 ところで、本職は質問の三において「援助要求は沖縄県公安委員会が行ったのか、それとも沖縄県警察本部長が判断したのか」と質したが、政府は「沖縄県公安委員会の判断の下、適切に行われた」と答弁している。
 これらを踏まえて、以下お尋ねする。

一 本職の質問に対して政府が答弁した内容で「沖縄県公安委員会からの援助要求の前に既に警察庁が各都府県に対して派遣の指示を下していた」ことや、「沖縄県公安委員会の判断は事後承認であった」こと、「経費は全て国が負担すると言いながら沖縄県警にも負担させていた」ことなどの事実は明らかに答弁と異なる内容であることから、そのことの経緯と理由、目的などについて政府の承知するところを明らかにした上で、議員の質問に対して明らかに事実と異なる答弁を行ったことについて政府の釈明を求める。
二 警察庁が沖縄県公安委員会からの要求前に各都府県警察本部に対して、沖縄県への特別派遣の文書を出したことは、警察法第六十条第二項の「あらかじめ」との関わりからすれば明らかに違法であると思われるが、政府の見解を答えられたい。
三 本職の質問に対して政府は「沖縄県からの援助要求に対しては、各都府県の公安委員会の判断の下、適切に行われた」と答弁したが、警察庁から各都府県の警察本部への通知は文面からして有無を言わさないものであり、あくまでも「厳命」であることからすれば、派遣は実際には政府や警察庁が主導して決めたものであり、各都府県公安委員会としての意思決定は全く行われず、また自主的に判断を行う余地は全くなかったものと言わざるを得ないが、政府の見解を答えられたい。
四 本職の質問に対して政府は「沖縄県公安委員会の判断の下、援助要求の決定が適切に行われた」と答弁したが、それが真実であるならば、沖縄県公安委員会の協議の日時、場所、内容、その他の議事録について政府の承知するところを明らかにした上で、沖縄県公安委員会の決定前になぜ警察庁の通知文書が各都府県の警察本部に通知できたのかということについて政府の見解を答えられたい。
五 各都道府県の公安委員会の事務は「自治事務」であり、政府や国家公安委員会、警察庁の関与を受けることなく、自主的に、かつ、独立した立場で決定し、自らの権限を行使できるはずであるが、政府の見解を答えられたい。
六 警察組織の政治的中立性の確保と民主的運営の確保のため、警察法では公安委員会が警察組織を管理することになっていることに鑑み、沖縄県警察が公安委員会の判断を得ないで直接各都府県警察や警察庁に援助の要求を行ったり、事前の連絡調整を行ったりすることは単に法の趣旨を逸脱するだけではなく、捻じ曲げる由々しい行為であると言わざるを得ない。また、政府や警察庁の関与は「たとえ国家的要請及び全国的な調整の観点であっても必要最小限の範囲に限定されている」との識者の指摘もある。ましてや今回の東村高江周辺や名護市辺野古で住民や県民が行っている抗議活動は沖縄県の地方自治と民主主義を守るための取り組みであって、およそ法が予定する「全国的な調整の観点」の必要性からは程遠い内容であることは明らかである。よって、今回の東村高江周辺や名護市辺野古への他都府県の機動隊派遣は明らかに警察法の趣旨に反したものであると思われるが、政府の見解を答えられたい。
七 質問二から六までに関連して、警察庁が七月十一日付けで警視庁や各府県警本部あてに発した「沖縄県警察への特別派遣について(通知)」は、警察法第十六条第二項の「警察庁長官の指揮監督権」に基づき、同法第五条第四項第四号のロ又は同法同条同項第二十四号に規定される警察庁の所掌事務として実施したものであると承知しているが、政府の見解を答えられたい。
八 本職の質問に対して政府は「派遣に伴う経費は警察法第三十七条第一項の規定により国庫が支弁する」と答弁したが、このような支弁は同法同条同項のうち、第七号の「警衛及び警備に要する経費」としてか、それとも他の規定に基づくものであるならばその規定名を明らかにされたい。
九 質問八に関連して、政府が答弁したように「派遣に伴う経費」が警察法第三十七条第一項に基づき国庫が支弁すべきものであるならば、それはとりもなおさず「国が統括する事務に要する経費」として「国の責任分担」で支弁することに他ならない。そうであるならば、今回の東村高江周辺や名護市辺野古への他都府県の機動隊派遣の根拠規定は、政府が答弁したように「警察法第六十条第一項」の規定に基づく沖縄県公安委員会若しくは沖縄県警察の援助要求ではなく、同法第五条第四項の規定に基づく警察庁の所掌事務として、同法第十六条第二項に基づく警察庁長官の指揮監督によるものであると思われるが、政府の見解を答えられたい。
十 質問九に関連して、なぜ六都府県の機動隊のガソリン代や高速道路代、修理費を沖縄県警察が負担しなければならないのかということについて政府の承知するところを明らかにした上で、その支出が法令違反であるか否かについて政府の見解を答えられたい。
十一 東村高江周辺のヘリパッド建設工事を阻止しようとして非暴力・無抵抗で抗議活動を行っている住民や県民に対する「度を越した警備」を見ると、沖縄県の公安委員会を始め各都府県の公安委員会は地方自治法に基づく自治権を放棄し、強権的に物事を進めようとする政府に余りにも迎合しているのではないかと思われるが、政府の見解を答えられたい。
十二 沖縄県内の地元紙によれば、東村高江周辺のヘリパッド建設に関する警備体制への情報公開請求で、沖縄県公安委員会は一部非公開の理由として「犯罪を敢行しようとする勢力等がこれに応じた措置をとるおそれがある」とし、その釈明で「犯罪勢力は現地で反対行動を行っている市民を指しているのではなく、情報公開することで、情報を利用する広義の勢力を指している」としているが、あまりにもとってつけたような釈明であり、現場で行われている暴力的な警備からすれば、住民や県民を犯罪者や犯罪組織の一員としか見ていないことは明らかである。このような考えは、政府や警察庁は警察法第五条第四項第四号のロの「地方の静穏を害するおそれのある騒乱に係る事案」若しくは同法同条同項第二十四号の「警察行政に関する調整」、さらには同法同条同項第六号の「広域組織犯罪等」として、警察庁長官が同法第十六条第二項及び同法第五条第四項の警察庁の所掌事務として警察庁長官が率先して「都道府県警察を指揮監督」していることに帰結すると推察するが、政府の見解を答えられたい。
十三 本職は、平成二十七年の第百八十九回国会において内閣官房・内閣府の権限を見直すための一連の法改正(平成二十七年法律第六十六号)により国家公安委員会に内閣の重要政策に関する総合調整機能が付与されることとなった際、その行く末や行使方法等に強い危機感を抱いた。なぜならば、その時々の政権が閣議で決定さえすれば、内閣の重要政策として各都道府県の公安委員会や警察に忠実に履行させるためのシステムが構築されるのではないかと思ったからである。それは取りも直さず「嘗ての翼賛体制」を彷彿させるものであり、政権が決めたことは有無を言わさず実行させるための体制に他ならないからである。そうであるが故に、今回の東村高江周辺への六都府県からの機動隊の派遣や、その警備方針、警備内容等が、正しく「内閣の重要政策に関する内閣の事務を助け」、「内閣官房を助け」るためのものであり、警察法第五条第二項及び第三項の規定に基づき、政府(内閣及び内閣官房)が国家公安委員会及び警察庁に担わせ、さらに警察庁長官は警察法第十六条第二項の規定に基づき沖縄県や六都府県の警察を指揮監督したものである。このようなことは公安委員会の形骸化に繋がり、自治事務である警察行政をないがしろにすることになり、ひいては警察法の目的を大きく損なうことになると考える。よって、本職は警察法で規定する「個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持」し、「民主的理念を基調とする警察の管理と運営を保障」するという法の目的を達成するため、「公安委員会への内閣の重要政策に関する総合調整機能の付与」や、「警察庁長官の都道府県警察の指揮監督権」、「警察行政に関する調整」等の諸規定を廃止すべきであると考えるが、政府の見解を答えられたい。

 右質問する。



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