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平成二十八年九月二十七日提出
質問第一五号

オバマ大統領が検討していた核兵器の先制不使用宣言構想に対する安倍首相の発言に関する質問主意書

提出者  逢坂誠二




オバマ大統領が検討していた核兵器の先制不使用宣言構想に対する安倍首相の発言に関する質問主意書


 平成二十八年七月十日のワシントンポスト紙は、““no first use” policy for the United States' nuclear arsenal, which would be a landmark change in the country's nuclear posture”とオバマ大統領が任期終了までに「国の核政策の大転換」を図ることを検討していることを報じた。核なき世界の実現を訴え、二〇〇九年にノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領の崇高な理念の実現の一端であると言える。
 他方、平成二十八年八月十五日のワシントンポスト紙は、“if Obama declares a “no first use” policy, deterrence against countries such as North Korea will suffer and the risks of conflict will rise. Japanese Prime Minister Shinzo Abe personally conveyed that message recently to Adm. Harry Harris Jr.”と安倍首相がハリス米太平洋軍司令官に北朝鮮に対する抑止が弱体化すると反対を表明したことを報じた。
 これに対して安倍首相は、「ハリス長官との間において、アメリカの核の先制不使用についてのやりとりは全くなかった。どうしてこんな報道になるのか分からない」と八月二十日に羽田空港で記者団に答えたことが報じられている。
 しかしながら、平成二十八年九月五日のニューヨークタイムズ紙は、“Obama Unlikely to Vow No First Use of Nuclear Weapons”として、“Mr. Obama seems to have sided with his current advisers, who warned in meetings culminating this summer that a no-first-use declaration would rattle allies like Japan and South Korea”と報じ、オバマ政権内で、先制不使用政策は日本や韓国などとの同盟関係を損ねるとの反対意見が出たため、オバマ大統領は核兵器の先制不使用宣言を取りやめる模様だと報じた。
 これらのアメリカの新聞の報道を見ると、安倍政権からオバマ大統領の核兵器の先制不使用宣言に対して、反対の意向のメッセージが様々な形で伝わっていたと言わざるを得ない。安倍首相が「ハリス長官との間において、アメリカの核の先制不使用についてのやりとりは全くなかった」と述べたとしても、それ以外の様々な機会に安倍首相からオバマ政権に核兵器の先制不使用宣言に反対する意向が伝えられていたのではないか。
 安倍首相は、平成二十八年五月二十七日に広島市で「核兵器のない世界を必ず実現する。その道のりがいかに長く、いかに困難なものであろうとも、絶え間なく努力を積み重ねていくことが今を生きる私たちの責任であります」との演説を行ったが、かかる発言等に疑義があるので、以下質問する。

一 日米間のいわゆる「核の傘」について、定義を示されたい。
二 日米間の「核の傘」で、この「核の傘」が発動されるのはどのような状況下においてであるか。政府の見解を示されたい。
三 オバマ大統領の検討していた核兵器の先制不使用宣言構想について、日本政府の評価はどのようなものか。唯一の核被爆国である日本は、積極的に賛同を示し、全世界に呼びかけるべきではないか。政府の見解を示されたい。
四 平成二十六年四月二十五日の衆議院外務委員会で、岸田外務大臣は、「個別具体的な事態に即して米国が高度の政策的判断を行う事項であると承知をしておりますが、米国の方針については、以下のように承知をしております」として、「米国の核兵器の基本的な役割は、米国及び同盟国、パートナーに対する核攻撃を抑止することであり、米国は引き続き、米国または同盟国、パートナーへの核攻撃の抑止を米国の核兵器の唯一の目的とすることを目標とし」、「米国または同盟国、パートナーの死活的利益を防衛すべき極限の状況下においてのみ核兵器の使用を検討する」と答弁しているが、現在においても日本はアメリカの核の傘の下にあり、その「死活的利益を防衛すべき極限の状況下において」、日本の主権下で核兵器の使用が行われるのか。政府の見解を示されたい。
五 平成二十六年四月二十五日の衆議院外務委員会で、岸田外務大臣は、「実際に核の傘、米側が核兵器を使うときに、その決定に我が国が関与することができるのか」との河野太郎議員の質問に対して、「具体的な対応については、日米間で核の拡大抑止の協議が続けられております。こうした日米間の協議において、そうした対応について考えられていく」と答弁しているが、「死活的利益を防衛すべき極限の状況下において」、日本の主権下で核兵器の使用が行われる場合、日本政府はその意思決定に関与できるのか。政府の見解を示されたい。
六 平成二十六年四月二十五日の衆議院外務委員会での外務大臣の答弁は、これ以後に、これを否定した答弁も見当たらず、現在も有効であると考えるべきである。また外務大臣は「米国または同盟国、パートナーの死活的利益を防衛すべき極限の状況下においてのみ核兵器を使用することを検討している、これが米国の方針であり、生物化学兵器の攻撃に対して、米国は可能性を将来にわたって否定しているとは承知はして」いないとも答弁しており、かかる答弁は、例えば生物化学兵器などの核兵器以外の兵器が使用された場合でも、対抗手段として核兵器が使用されることを意味している。このような状況に対応して、様々な機会に安倍首相あるいは政府からオバマ政権に核兵器の先制不使用宣言に反対する意向が伝えられているのではないか。政府の見解を示されたい。
七 安倍首相が広島市で行った「核兵器のない世界を必ず実現する。その道のりがいかに長く、いかに困難なものであろうとも、絶え間なく努力を積み重ねていくことが今を生きる私たちの責任であります」との演説は、核の傘の、「具体的な対応については、日米間で核の拡大抑止の協議」が行われている中で、「米国または同盟国、パートナーの死活的利益を防衛すべき極限の状況下においてのみ核兵器を使用する」という要件と反するのではないか。現行の米国の方針は死活的利益のみを基準とするものであり、米国やその同盟国への核兵器の使用の有無は直接的な要件ではない。「核兵器のない世界を必ず実現する。その道のりがいかに長く、いかに困難なものであろうとも」との認識があるのであれば、むしろ積極的にオバマ大統領の核兵器の先制不使用構想に賛同を示し、全世界に呼びかけるべきではないか。政府の見解を示されたい。

 右質問する。



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