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平成二十八年九月二十七日提出
質問第一八号

日銀の政策変更で今後国債の暴落は起こり得なくなったのではないかという疑問に関する質問主意書

提出者  福田昭夫




日銀の政策変更で今後国債の暴落は起こり得なくなったのではないかという疑問に関する質問主意書


 異次元の金融緩和で日銀が刷ったお金で国債を大規模に買うだけで、円安が進み日本経済はデフレから脱却できるという考えが間違いだったことが明らかになってきている。日銀はマネタリーベースが、年約八十兆円に相当するペースで増えるよう国債購入等を行っていたが、政府の思惑とは逆に円高に向かい、輸出企業の業績悪化の懸念が高まり、経済の悪循環が始まっていた。物価下落もあり、二年間で二%のインフレ率を達成するという目標は完全に失敗に終わり、デフレ脱却に関しては全く見通しが立っていない。日銀は、九月二十一日、金融緩和の目標を、長期金利を〇%程度とする金利目標に変更した。出口戦略の第一歩と思われるが、これだけでは景気回復は難しいと思われる。一方で、八月二日に閣議決定された二十八兆円の経済対策に関しては、誰もが実質GDPを押し上げる効果があると認めている。問題は経済対策の規模が十分でないという点である。
 また、前回の質問主意書(第百九十回国会提出の質問第二五五号)に対する答弁書(内閣衆質一九〇第二五五号、以下答弁書という)に関しても質問する。

一 長期金利を〇%程度とする金利目標は、国債価格支持政策であり、日銀が指定する利回りで国債を買い入れる「指し値オペ」などで実現する。これによって国債の暴落は起こり得なくなったと考えるが同意するか。
二 答弁書(内閣衆質一九〇第一七四号)の八についてで、ハイパーインフレは我が国の経済・財政状況においては発生しないと断言された。国債暴落もハイパーインフレも起こりえない状況になった現在、これらを防ぐために導入された基礎的財政収支の黒字化は有害無益な目標になったと考えるが同意するか。またデフレ脱却までは財政規律を守る必要がなくなったと考えるが同意するか。
三 例えば日経センターによる日本経済フォーキャスター四十二人(機関)による予測の平均では、二十八兆円の経済対策を織り込んでも実質GDP伸び率は二〇一六年度で〇.六七%、二〇一七年度で〇.九四%、二〇一八年度で〇.九二%に過ぎず世界的にも日本の低成長が際立っている。OECDやIMFは、更に厳しい見方をしている。政府目標の二%成長を大きく下回るし、二〇二〇年頃GDP六〇〇兆円はとても無理ということになる。政府目標が達成できる程度にまで経済対策の規模を拡大したらどうか。
四 政府は国の借金が一〇〇〇兆円を超えている事を気にして、国債発行の規模を抑えようとしていると思われるが、内閣府が二〇一〇年八月に発表した乗数によれば、国債の発行を増やせば増やすほど、国の借金の対GDP比は減って行くのであり、実質的に国の借金は減るのだから心配しなくて良いのではないか。この乗数の計算では、国債増発で金利は上昇すると仮定されており、今後長期金利は上昇しないことになったのだから、国の借金の対GDP比はさらに減少すると思われるが同意するか。金利固定の場合の乗数は一刻も早く発表されるべきだと考えるが同意するか。
五 答弁書の八についてでは、累増が見込まれるのは国の債務残高であって、国の債務の対GDP比ではないと答弁の間違いが訂正されたと理解してよいか。
六 日銀は国債を大量に保有している。政府と日銀を統合政府と考え連結させて財政を考えるなら、日銀が保有している国債はもはや国の借金とは言えないのではないか。
七 それでも国の借金を気にするのであれば、日銀が保有する国債が償還期限を迎えた時、借換債として、無利子・無期限のものにコンバートすればよいのではないか。そうすれば返済義務がなくなり、これは完全に国の借金ではなくなる。景気が回復し日銀が無利子・無期限の国債を売らなければならないときは、政府が買い戻せばよいのではないか。
八 内閣府の行っている中長期の経済財政に関する試算によると、毎年長期金利は急騰すると予測していて下がると予測した年は一度もないが現実はジワジワ下がり続けている。例えば今年七月二十六日に出された試算(以下試算という)によれば、長期金利は二〇一六年度〇.三%、二〇一七年度〇.八%、二〇一八年度一.七%、二〇一九年度二.七%、二〇二〇年度三.四%、二〇二一年度三.八%、二〇二二年度四.一%となっている。過去十数年間、実際の金利低下の傾向を一度も予測できなかったのは、内閣府の能力不足であり内閣府は国民の税金を使って試算を行っているという自覚が感じられない。今後長期金利は〇%程度に維持されるのだから、この試算は現実離れしたものになったのではないか。
九 試算は直ちにやり直して発表されなければならないのは明らかだ。このモデルで長期金利を〇%に固定し他のパラメーターを変えずにやり直せば、当然のことながら名目GDPも実質GDPも物価も税収もかなり押し上げられ国債費は押し下げられるはずである。また財政収支も改善するはずだと思うが同意するか。そうならなかったらこのモデルは経済を正しく記述できていないことになると思うが、同意するか。いずれにせよ直ちに試算をやり直して発表すべきではないか。
十 長期金利を〇%程度に維持する政策はインフレ率が二%を安定的に超えるまでとしているが、その後も長期金利が暴騰しないようにすると理解してよいか。国債暴落という将来不安が日本人を節約志向にさせ消費者マインドの悪化につながっている。国の国債価格支持政策の意味が深く理解されれば、国民に安心感を与え、過度な節約の必要性が感じられなくなり、デフレ脱却への大きな一歩となると考えるが同意するか。
十一 日銀は価格が変動する有価証券を四二二.五兆円保有している。一方で保有資産の損失に対する備えとして
 引当金 四.五兆円(負債の部)
 準備金 三.二兆円(以上、平成二十八年九月十日現在。日銀営業旬報より)(純資産の部)
 利益余剰金 〇.四兆円(平成二十八年三月三十一日現在。日銀財務諸表より)(純資産の部)
 の計約八兆円を保有している。つまり僅か一.九%の価格変動で債務超過になる。これは問題ないと考えるか。
十二 二〇一四年度に消費税率は五%から八%に引上げられたために、実質所得も消費も大きく落ち込み、経済は深刻な打撃を受け、未だに増税前の水準に回復していない。内閣府は二〇一二年一月二十四日に消費増税による実質GDPの押し下げ効果は四年間の合計で僅か〇.一%だと言っていたが、実際は実質GDPの伸びは二〇一三年度二.〇%、二〇一四年度マイナス一.〇%で、何と三%も落ち込んだ。内閣府の予測能力の欠如は二〇一九年十月の再増税にも暴露されようとしている。試算によれば、実質GDP成長率は二〇一八年度一.九%、二〇一九年度二.〇%、二〇二〇年度二.一%となっており、消費増税で可処分所得が低下した影響は全くないと主張している。消費増税の時期が十月だから、駆け込みと反動が打ち消すなどという言い訳は許されない。国民からみれば政府は増税しなければならないほど大変なことになっているのかと思い、更なる節約をする。その結果、消費が更に低迷し、経済が停滞、税収減少、GDPは伸びなくなる。政府は前回の消費増税の失敗を繰り返そうとしているように思えるが同意するか。
十三 答弁書の六についてで、アベノミクスで名目GDPは二十七兆円増加したとある。しかし、この中には消費増税によってかさ上げされた分が十兆円程度あり、さらに原油価格下落によって押し上げられた分も除けば、二十七兆円より大幅に少なくなるのではないか。政府目標は名目三%成長であり、三年間では四十五兆円増加していなければならないはずで、客観的に見れば大失敗ということにならないか。
十四 消費税を社会保障の財源としたことが、失敗の原因になっていないか。消費税収ほど、景気に左右される財源はない。消費税率を八%から十%へ引き上げる時期は、もともと二〇一五年十月と決まっていたが、景気悪化が理由で二〇一七年四月に延期され、同じ理由でさらに二〇一九年十月に再延期されたし、今後再々延期の可能性もある。つまり消費税収は、景気が悪化すれば税率が変化し、税収が大きく変わる。このような極めて不安定な財源を社会保障の財源にすべきではないと考えるが同意するか。
十五 現在の中学の公民の検定教科書では国債が国の借金であり、国民一人当たり巨額の借金を抱えていることになるといった、あたかも家計での借金と同じであるかのように説明されている。しかし実際は国債は家計の借金とは全く異なる面もある。
 1 日銀が刷ったお金で国債を買い取ることができ、償還期限が来るたびに借換債を発行するとすれば、政府は返済の必要がない。
 2 世界の多くの国では国の借金は増え続けているが、GDPも増えていて、その比が一定の値以下なら借金がいくら増えても問題になっていない。この点でも大きく異なる。
  従って、国債=国の借金=悪という説明は正しくない。こういった捉え方をしている限り、緊縮財政=善、積極財政=悪ということとなり、日本は永遠にデフレ地獄から抜けられなくなると思うが同意するか。

 右質問する。



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