質問本文情報
平成二十八年十一月二十九日提出質問第一七五号
防衛省へのサイバー攻撃に関する質問主意書
提出者 逢坂誠二
防衛省へのサイバー攻撃に関する質問主意書
「防衛医大のパソコンが外部から不正アクセスされ、これらに接続している防衛省・自衛隊の通信ネットワーク「防衛情報通信基盤(DII)」の一部がサイバー攻撃を受けていたことが二十八日、同省関係者への取材で分かった。」(読売新聞)をはじめ、複数の新聞で同様の報道が行われている。
萩生田官房副長官は、十一月二十八日午前の記者会見で、これらの報道に関して、「日頃から数多くのサイバー攻撃と思われる不正な通信を受信している。報道にあったような事実は承知していない」と述べたものの、十一月二十八日の産経新聞は、「複数の自衛隊高級幹部は「危機的で相当深刻な事態だ。早急に再発防止策を講じる必要がある」と強調。一方、情報セキュリティーを担当する防衛省の斎藤雅一審議官は「個別の案件には答えられない」とコメントした」ものの「防衛省は外部接続を制限するなど防御態勢を強化してきたが、今回はそれを上回る高度な手法から国家などが関与した組織的攻撃の疑いが強い」と指摘している。
このような他国が関与したおそれのある今回の防衛省へのサイバー攻撃(「当該事案」という。)は、わが国の安全保障上の重要な問題であると考えるため、以下質問する。
二 当該事案を政府が最初に確認したのは、いつで、どのような方法によってなのか。政府の見解を示されたい。
三 防衛省に当該事案があった日時はいつかを明らかにされたい。
四 当該事案は、どの程度の時間にわたり、どの程度の回数であったのか。政府の把握するところを明らかにされたい。
五 防衛省のどの部署のシステムが当該事案を受けたのか。政府の把握するところを明らかにされたい。
六 当該事案で秘密情報などを扱うシステムへの侵入や情報流出などの被害の有無を明らかにされたい。
七 防衛省は、十一月二十六日まで当該事案を公式に発表していないと承知しているが、発表しなかった理由は何か。政府の見解を示されたい。
八 当該事案の主体は誰なのか。非国家的行為体であるのか、それともその非国家的行為体に国家が関与していると推測できるのか。政府の見解を示されたい。
九 サイバー攻撃にかかる国家責任を問うためには、その行為が国家に帰属することを証明しなければならない。国際司法裁判所の一九八六年のニカラグア事件判決では、国家責任を発生させる国際違法行為の成立要件としての「帰属」について、いわゆる「実効的支配(effective control)」の有無を基準としている。この基準によれば、サイバー攻撃を実施する集団の行為を単に支援または黙認する行為は当該行為を国家に帰属させることにはならないと承知している。当該事案のみならず、わが国の機関にサイバー攻撃が行われた場合、かかる見解が該当するのか。政府の見解を示されたい。
十 右の問に関して、当該事案のみならず、わが国の国家機関へのサイバー攻撃が行われた場合、その行為が国家に帰属するか否かの検証を行っているのか。政府の見解を示されたい。
十一 「サイバー攻撃と自衛権との関係に関する質問主意書」(質問第七一号)に対する答弁書(内閣衆質一八九第七一号)では、「いわゆるサイバー攻撃と自衛権の行使との関係については、個別の状況に応じて判断すべきものであり、一概に申し上げることは困難であるが、その上で、一般論として申し上げれば、武力攻撃の一環としてサイバー攻撃が行われた場合には、自衛権を発動して対処することは可能と考えられる」と示されているが、当該事案はわが国が自衛権を発動する事案に相当するのか。発動に至らないとすればどのような理由からか。政府の見解を示されたい。
十二 右の問に関連して、他国のサイバー攻撃に対して、わが国が自衛権を発動して対処し得ることが示されているが、他国によるサイバー攻撃がどの程度であれば、自衛権が発動されるのかが明らかではない。例えば、防衛省の情報システムが麻痺する、首都圏の配電システムがダウンするなどの被害が出た場合には自衛権を発動して対処する事例になるのか。国の安全保障の根幹にかかわる作用にもかかわらず、国民には周知されていない。国民に分かりやすい言葉で、具体的な事例を示されたい。
右質問する。