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平成三十年三月二十九日提出
質問第一八七号

麻生財務大臣の「人民裁判をやっているわけではない」との発言に関する質問主意書

提出者  逢坂誠二




麻生財務大臣の「人民裁判をやっているわけではない」との発言に関する質問主意書


 平成三十年三月二十八日、麻生太郎財務大臣は、同月二十七日に行われた前財務省理財局長への証人喚問において、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律(「議院証言法」という。)第四条でいう「証人は、自己又は次に掲げる者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのあるときは、宣誓、証言又は書類の提出を拒むことができる」に基づく証言拒否を繰り返したことに関して、「人民裁判をやっているわけではない。自分が訴追される話は話さなくていい」と述べた。
 議院証言法第一条では「各議院から、議案その他の審査又は国政に関する調査のため、証人として出頭及び証言又は書類の提出(提示を含むものとする。以下同じ。)を求められたときは、この法律に別段の定めのある場合を除いて、何人でも、これに応じなければならない」と明示されているが、日本国憲法第六十二条でいう「両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる」に由来する国政調査権の具現化されたものの一つであると考える。
 日本国憲法第六十二条に由来する国政調査権といえども一定の限界があり、例えば基本的人権を侵害する調査は許されない。例えば、思想の露顕を求めるものは絶対許されない。もっとも、国会での虚偽答弁、それにともなう行政文書の改ざんなど、わが国の民主主義の根幹を揺るがし、国家公務員制度への重大な信頼失墜に関わる事案については、日本国憲法が保障する国民の知る権利や国政調査権と議院証言法第四条の規定との相克の上で、解決されるべきものであると考える。
 前財務省理財局長が衆参の予算委員会の証人喚問において、証言拒否を繰り返したことは、まさに日本国憲法が保障する国民の知る権利や国政調査権と議院証言法第四条の規定との相克の上で解決されるべき問題であり、財務大臣が「人民裁判をやっているわけではない」と安易に揶揄すべき問題ではない。
 これらを踏まえ、以下質問する。

一 「人民裁判」とはどのようなものであると考えているのか。政府の見解如何。
二 前財務省理財局長が衆参の予算委員会の証人喚問において、証言拒否を繰り返したことに関して、それを追及した野党議員の質問について、「人民裁判をやっている」と述べた麻生大臣の認識は政府内で共有されているのか。政府の見解如何。
三 例えば大辞林によれば、「人民裁判」とは、「社会主義国家などで、人民の中から選ばれた代表が行う裁判」、または「多数者が少数者を私的に断罪すること。つるしあげ」と説明されている。わが国は「社会主義国家」ではないし、国会での証人喚問は「私的に断罪すること。つるしあげ」でもない。麻生大臣は謝罪し、「人民裁判をやっているわけではない」との発言を撤回すべきではないか。政府の見解如何。
四 前財務省理財局長への証人喚問は、当該者の国会での虚偽答弁、それにともなう行政文書の改ざんなど、わが国の民主主義の根幹を揺るがし、国家公務員制度への重大な信頼失墜に関わる問題を解明するために行われたものである。麻生財務大臣は当時から現在に至るまで財務大臣を務めており、当然、政治責任を負うべき立場にある。本件事案は、日本国憲法が保障する国民の知る権利や国政調査権と議院証言法第四条の規定との相克の上で解決されるべきもので、直接的な利害関係にある麻生財務大臣が「人民裁判をやっているわけではない」と発言することは極めて不適切であり、また、今後の財務省の内部調査に影響を及ぼすのではないか。政府の見解如何。

 右質問する。



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