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平成三十年五月十一日提出
質問第二八六号

長距離巡航ミサイルに関する再質問主意書

提出者  宮川 伸




長距離巡航ミサイルに関する再質問主意書


 我が国は平和憲法の下で、保持する自衛力は「自衛のための必要最小限度の実力」に限るとし、これまでも自衛隊の新たな装備の導入に当たっては慎重な議論がなされてきた。にもかかわらず、政府は、平成二十九年十二月、概算要求に上がっていなかった、航空自衛隊の戦闘機に搭載するスタンド・オフ・ミサイルの導入経費を、平成三十年度予算に追加要求すると突如表明した。
 このスタンド・オフ・ミサイルは、一般に「長距離巡航ミサイル」と呼ばれるもので、敵基地攻撃の用途にも使用可能とされている。我が国が当該ミサイルを保有することについて、本当に「自衛のための必要最小限度の実力」を超えることとならないか、慎重に議論する必要があると考えるが、平成三十年四月十七日付の「長距離巡航ミサイルに関する質問に対する答弁書」(以下「本答弁書」という。)では、この点が明らかにならなかったため、再度質問する。

一 政府は、自衛隊の個々の兵器の保有の可否について、従来、「憲法第九条第二項で保持が禁止されている『戦力』にあたるか否かは、わが国が保持する全体の実力についての問題であって、自衛隊の個々の兵器の保有の可否は、それを保有することで、わが国の保持する実力の全体がこの限度を超えることとなるか否かにより決められる」(平成二十九年版防衛白書)と説明してきた。
 他方、本答弁書では、スタンド・オフ・ミサイルの保有の可否について、従来の「それを保有することで、わが国の保持する実力の全体がこの限度を超えることとなるか否か」ではなく、「自衛隊の装備の質的向上を図る観点から導入するものであることから、これを保有することは、自衛のための必要最小限度の実力を超えるものではない」と説明している。
 1 政府は、今般のスタンド・オフ・ミサイルの導入に当たり、自衛隊の個々の兵器の保有の可否について、「自衛隊の装備の質的向上」という新たな基準を設けたとの理解でよいか。
 2 自衛隊において、新たな装備の導入や近代化は、すべからく「自衛隊の装備の質的向上」に当たると考えられ、また、例えば、現行の防衛計画の大綱の下で取り組まれている潜水艦の増勢も、ある意味では「装備の質的向上」に含まれるとも考えられなくもないので、本答弁書で言う「自衛隊の装備の質的向上」の意味するところが必ずしも明らかではない。政府は、この言葉を、どういう定義で用いているのか、見解を明らかにされたい。
 3 本答弁書におけるスタンド・オフ・ミサイルの保有の可否に関する理由を読むと、「自衛隊の装備の質的向上を図る観点から導入するもの」との基準を満たせば、いかなる兵器であっても導入することが可能となり、「それを保有することで、わが国の保持する実力の全体がこの限度を超えることとなるか否か」により判断するとしてきた「自衛のための必要最小限度」の範囲が、従来よりも大幅に拡大されることとなると考えるが、政府の見解を伺いたい。
二 今般導入予定のスタンド・オフ・ミサイル(LRASM/JASSM)について、本答弁書では、「我が国防衛に当たる自衛隊機が相手の脅威の圏外から対処できるようにすることで、自衛隊員の安全を確保しつつ、我が国を有効に防衛するために導入するもの」であると説明している。
 1 政府は、自衛隊の個々の兵器の保有の可否について、「性能上純粋に国土を守ることのみに用いられる兵器の保持が憲法上禁止されていないことは、明らかであるし、また、性能上相手国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器の保持は、憲法上許されない」とする一方、「それ自体の性能からみて憲法上の保持の可否が明らかな兵器以外の兵器」が存在することを示唆している(昭和四十四年四月八日、衆議院議員松本善明君提出安保条約と防衛問題等に関する質問に対する答弁書。以下「昭和四十四年答弁書」という。)。
  スタンド・オフ・ミサイル(LRASM/JASSM)は、性能上、我が国領空から朝鮮半島全域、中国の一部及びロシアの沿海地方を射程圏内に含むことから、「それ自体の性能からみて憲法上の保持の可否が明らかな兵器以外の兵器」に該当すると考えるが、政府の見解を伺いたい。
 2 昭和四十四年答弁書において、政府は、「それ自体の性能からみて憲法上の保持の可否が明らかな兵器以外の兵器」について、「自衛権の限界内の行動の用にのみ供する意図でありさえすれば、無限に保持することが許されるというものでもない」と説明している。
  昭和四十四年答弁書の趣旨からすると、スタンド・オフ・ミサイル(LRASM/JASSM)の導入理由が、「我が国防衛に当たる自衛隊機が相手の脅威の圏外から対処できるようにすることで、自衛隊員の安全を確保しつつ、我が国を有効に防衛するため」だとしても、それを「無限に保持することが許されるというものでもない」と考えるが、そのような理解でよいか。もしそうであれば、当該ミサイルの導入に当たって、具体的にどのような制限があると考えているのか、政府の見解を伺いたい。
 3 政府は、F一五の導入に際しては、「要撃性能に主眼がおかれた、専守防衛にふさわしい性格の戦闘機であり、その付随的に有する対地攻撃能力も限定的であること等から、他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるようなものでない」ため、憲法が禁じている「戦力」にはならないと説明(昭和五十三年二月十四日、衆議院予算委員会要求資料)してきたが、約九百キロメートルの射程範囲を持つスタンド・オフ・ミサイル(LRASM/JASSM)をF一五に搭載すると、その対地・対艦攻撃能力が飛躍的に向上することから、右の説明に反し、F一五が、憲法が禁止する「戦力」に該当することにならないか、政府の見解を伺いたい。
三 政府はこれまで、スタンド・オフ・ミサイルの導入理由として、敵艦艇の侵攻阻止・上陸部隊の排除や弾道ミサイル防衛(BMD)イージス艦の防護といった任務に従事する自衛隊員の安全確保を挙げている。
 このうち、BMDイージス艦の防護については、「昨年夏の概算要求以降、北朝鮮による核・ミサイル開発がこれまでにない重大かつ差し迫った脅威となっており、BMD任務に従事するイージス艦を防護する必要性が高まっております」(平成三十年三月二十日、衆議院安全保障委員会における小野寺防衛大臣答弁)とし、北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威に言及している。
 1 本答弁書では、スタンド・オフ・ミサイル導入の背景として、「諸外国の航空能力の進展が著しい」と説明しているが、約九百キロメートルの射程を持つスタンド・オフ・ミサイル(LRASM/JASSM)の導入が必要となった理由は、北朝鮮の航空能力が著しく進展したためであるとの理解でよいか。
 2 防衛省は、「諸外国の航空能力の進展」について、「諸外国における軍事技術の著しい進展等によりまして、具体的に申し上げると、海上部隊あるいは航空部隊による連携した武力攻撃が行われる場合に、その脅威が及ぶ範囲は侵攻してくる部隊の周囲数百キロ以上に及び得る」(平成三十年三月二十三日、参議院外交防衛委員会)と説明している。
  政府は、北朝鮮が「海上部隊あるいは航空部隊による連携した武力攻撃」を行う場合、その脅威が及ぶ範囲は、最大周囲何百キロメートルに及ぶと分析しているか伺いたい。
 3 防衛省は、日本海等に展開するBMDイージス艦に対する新たな脅威について、「長射程の対艦ミサイルを搭載した艦艇」を挙げるとともに、「相手は対艦ミサイル搭載艦艇とともに護衛のための戦闘機を運用することも考えられます」と説明(平成三十年三月二十三日、参議院外交防衛委員会)している。
  政府は、北朝鮮が「長射程の対艦ミサイルを搭載した艦艇」を保有するとともに、「護衛のための戦闘機を運用する」能力も保有していると分析しているか伺いたい。併せて、北朝鮮が開発・保有する艦対艦ミサイル、空対艦ミサイル及び空対空ミサイルの種類及び射程距離について、政府の承知するところを明らかにされたい。
 4 日本海に展開するBMDイージス艦を防護するために、性能上、我が国領空から朝鮮半島全域、中国の一部及びロシアの沿海地方を射程圏内に含むスタンド・オフ・ミサイル(LRASM/JASSM)を保有することは、「自衛のための必要最小限度の実力」を超えるおそれがあると思われるが、政府が、当該ミサイルを保有しても、「自衛のための必要最小限度の実力」を超えないとする理由を明らかにされたい。

 右質問する。



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