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平成三十年六月十四日提出
質問第三八七号

「働き方改革法案」の適用除外及び高度プロフェッショナル制度に関する質問主意書

提出者  柚木道義




「働き方改革法案」の適用除外及び高度プロフェッショナル制度に関する質問主意書


 わが国の労働者の働き方の改革において、長時間労働や過労死の対策が重要であることは論を俟たない。この長時間労働と過労死の問題は職種に関係なく改善を図る必要があるが、今国会提出の「働き方改革法案」(以下、「本法案」という。)では適用除外がある。また、裁量労働制が本法案から削除されたが、労働時間・休憩・休日の規制が全く適用されず、残業代も一切ないため裁量労働制よりさらに労働者にとって不利な制度である「高度プロフェッショナル制度」は本法案から削除されていない。この結果、長時間労働や過労死がむしろ助長されるおそれがある。
 以上の問題意識に立って以下質問する。

一 本法案では民間企業等の労働者が対象となっているが、公務員は対象外である。公務員の中でも公立学校の教職員の待遇について尋ねる。
 1 公立学校の教職員の長時間労働
  全国各地の公立学校の教員の長時間労働は看過できない。二〇一六年六月の岡山県教育委員会の教職員勤務実態調査によると、月あたりの超過勤務時間の平均が小学校で約六十四時間、中学校で約八十七時間という結果である。長時間労働による心身両面への悪影響は児童生徒に対する教育の質の低下につながるものであるため、速やかに教員数の増員を図るべきと考えるが政府の見解如何。
 2 臨時・非常勤教職員の待遇改善
  教育現場では臨時・非常勤教職員が増えており、それぞれ活躍しているが給与が低く、昇給もなく「同一価値労働同一賃金」とかけ離れている。臨時・非常勤教職員の待遇改善が働き方改革につながると考えるが、見解如何。
二 適用除外となっている自動車の運転業務等について
 1 過労死ゼロに向けた対策
  現行の「限度基準告示」(労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準)では、自動車の運転業務等が適用除外とされている。この点、本法案において、自動車の運転業務については、罰則付きの時間外労働の上限規制の適用除外とせず、改正法の一般則の施行期日の五年後に、年九百六十時間以内の規制を適用することとし、将来的に一般則の適用を目指すとされている。しかし、自動車の運転業務に関しては、例えば、道路貨物運送業が過労死等で長年ワーストワンになっている現状もあり、長時間労働是正は待ったなしの状況である。五年間の猶予期間であっても、一般則と同じく、「休日労働を含み、一か月あたり百時間未満」、「休日労働を含み、二か月ないし六か月平均で八十時間」という条件は適用すべきと考える。政府は、本法案の内容で、過労死等防止対策の観点から十分だと考えているのか。政府の見解如何。
 2 改善基準告示の見直し
  自動車の運転業務に関しては、「改善基準告示」(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)があり、拘束時間や休息時間等について基準を定めている。改善基準告示は、バス、タクシー、トラック業界の労使代表と厚生労働省との合意の上、一九八七年に制定したもので、告示に法的拘束力はないが、休息時間等は、交通安全を確保するための基準として、その役割を果たしている。「働き方改革」を進めるのであれば、この改善基準告示も、ワーク・ライフバランスに資するものに見直すことが必要だと考えるが、改善基準告示の見直しについて政府の見解如何。
三 中小企業の実態への配慮
 1 二〇一七年九月労働政策審議会の諮問・答申後に追加された項目として、「行政官庁は、当分の間、中小事業主に対し第一の二(=時間外労働の上限規制)の9の助言及び指導を行うに当たっては、中小企業における労働時間の動向、人材の確保の状況、取引の実態その他の事情を踏まえて行うよう配慮するものとすること」と附則に記載された。時間外労働の上限規制が法律で規制されれば、大企業であれ中小企業であれ、違反した場合には一律に適用されることになるが、「配慮」とは具体的にどのようなことを想定しているのか。「配慮」してどのように助言・指導を行うのか。
 2 法律の施行期日は、中小企業については施行が一年延期とされている。働く企業の規模によって、時間外労働の上限規制など、適用される時期が異なっても良いのか。二〇一七年九月に「働き方改革関連法案」が労働政策審議会で諮問・答申されてから、すでに半年以上が経過しており、この間準備時間がなかったわけではない。企業規模にかかわらず、法律の着実な施行が求められると考えられるが、この点につき、政府の見解を伺いたい。
四 本法案の「高度プロフェッショナル制度」について
 1 対象業務は、「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務」とあるが、具体的にはどのような業務が定められるのか。
 2 省令を定める場合や一度制定された省令を改正する場合には、労働政策審議会で議論が行われるのか。
 3 二〇一五年二月十三日付の「今後の労働時間法制等の在り方について」の中で、高度プロフェッショナル制度の対象業務について、具体的なイメージとして、金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリストの業務(企業・市場等の高度な分析業務)、コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度な考案又は助言の業務)、研究開発業務が挙げられているが、こうした業務の一部では裁量労働制が適用されており、新たに高度プロフェッショナル制度を創設する必要性はないと考えるが政府の見解如何。
 4 高度プロフェッショナル制度について、安倍総理は二〇一八年三月一日の参議院予算委員会で「千七十五万円以上の方ということで限定させていただいているわけでありまして、交渉力の高い方々であり、そういう方々でありますから基本的には交渉能力の高い方であります」と答弁しているが、年収が千七十五万円以上だと、なぜ交渉能力が高いと断定できるのか。その理由につき、政府の見解を伺いたい。

 右質問する。



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