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平成三十年六月二十九日提出
質問第四二〇号

尊い命が失われたカンボジアPKOを評価、検証し、未来の政策に活かすことに関する再質問主意書

提出者  井出庸生




尊い命が失われたカンボジアPKOを評価、検証し、未来の政策に活かすことに関する再質問主意書


 先日提出した「尊い命が失われたカンボジアPKOを評価、検証し、未来の政策に活かすことに関する質問主意書」(平成三十年六月七日提出、質問第三六三号)(以下「前回主意書」という。)に対して、答弁書(内閣衆質一九六第三六三号、平成三十年六月十五日)(以下「前回答弁書」という。)をいただいた。
 前回主意書においては、四の3で、今後のPKOにおける警察官の派遣の可能性について質問したところ、前回答弁書においては、「四について」で、PKO参加に関する一般論のような答弁しかいただけなかった。前回主意書は、高田晴行警視の殉職を無駄にしないためにも、警察官に国際貢献、海外派遣で一層の活躍の場を与えるべきではないかという意図を持って提出したものであった。そこでまず、改めて、警察官に関する、今後のPKO活動における派遣の可能性について伺いたい。

一 今後のPKO活動における警察官の派遣についての、政府の基本的な考え方を明らかにされたい。
二 カンボジアPKOにおいて、前回主意書の四の3に記載した「現地警察への教育」、例えば「交差点の図を描き、カンボジアでは、車は必ず右側通行でなければならないことを伝える」活動や、「車のブレーキ痕を地面に作り、それを見せながら、交通事故発生時に警察官が取るべき措置について講義する」活動を行ったことに関する評価を伺いたい。
三 本書(前回主意書における「本書」をいう。以下同じ。)においては、本来の任務である「現地警察への助言・指導・監視」の他に、「政党事務所の警戒や政党要人の車両による帯同警護、演説会場での警護など」や「刑務所での長期間に及ぶ夜間警戒勤務」(一四九ページ)、「検問業務」(一五〇ページ)、「国境監視活動」(一五一ページ)といった業務も行うことになったことが記載されている。更には、「逮捕権の行使」を求められ、「あきらかなPKO協力法違反」であることなどから対応に窮した我が国文民警察隊の山崎裕人隊長が、「閑職に追いやられた」ことも記載されている(一五四ページ以下)。また、政府は、平成五年十一月に発表した「カンボディア国際平和協力業務の実施の結果」において、「時として、地方のUNTAC文民警察署等の現場において、我が国の文民警察要員の本来業務からみて疑問のある指示等が行われている例も見られた」と言及していることから、政府が、PKO協力法に抵触する事実があったと認識していると思われる。特に警察庁は高田警視殉職直後、平成五年五月十一日の衆議院地方行政委員会で、当時の城内康光長官が「警護活動そのものは(中略)私どもとしてはそのことは法律で書いてあることでは読めないというふうに理解をしておるところ」(会議録一一ページ)と答弁しているほか、同趣旨の答弁が衆議院外務委員会(同月十二日、会議録二三ページ)、同内閣委員会(同月十三日、会議録一八ページ)など、高田警視が亡くなった平成五年五月の間に複数回あり、想定された業務から逸脱する業務があったことを指摘している。
 1 ここに挙げた「現地警察への助言・指導・監視」以外の業務、即ち「政党事務所の警戒や政党要人の車両による帯同警護、演説会場での警護など」や「刑務所での長期間に及ぶ夜間警戒勤務」、「検問業務」、「国境監視活動」、「逮捕権の行使」は、現在のPKO協力法(国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律、平成四年法律第七十九号)の下において、警察官が行うことは可能か。また、自衛隊員又は警察官以外の文民なら可能か。いずれも、根拠を明らかにして説明されたい。
 2 カンボジアPKOにおける警察官の任務が、「現地警察への助言・指導・監視」以外の種類の業務にも広がった、あるいは広がろうとしたことについて、どのように評価するか明らかにされたい。
 3 このように、活動期間の中途という時期に任務が広がったことについて、どのように評価するか明らかにされたい。
 4 2又は3において、消極的あるいは否定的に評価する場合には、それを避ける対策についてどのように考えているかも御教示願いたい。
四 本書によると、高田警視は「カンボジア派遣中、ほかの隊員たちに『教育の大切さ』をことあるごとに口にしていた」(三六九ページ)という。高田警視の遺志を継ぐために、カンボジアの現地には、タカタハルユキスクールが建設、寄贈されたことは前回主意書でも指摘した。高田警視ら、文民警察官の本来の任務は「現地警察への助言・指導・監視」であり、それはまさに、内戦終結後の脆弱な平和・治安の中で、現地警察が確固たる治安を確立できるよう、日本の警察が、現地の警察を「教育」することが求められていたと言っても過言ではない。実際、文民警察隊のアンピル班は、自発的にラナリット派の警察官を集めて、「ポリス・アカデミー」を開講して様々な指導に当たり、高田警視も防犯活動の授業を担当して、深夜まで準備を重ねて、教壇に立っていたという(本書三七五ページ参照)。
 1 警察官がPKO活動で果たすことができる役割には、様々なものがあるとも思われる。今後のPKO活動においてどのようなものが考えられるか、具体的に示されたい。
 2 一方で、近年のPKOは、先進国の不参加が相次ぎ、近隣国、途上国中心の派遣となっている。とりわけ、PKOに参加することによって得られる日当、つまりは外貨を獲得することが派遣の目的となっているとの指摘もあり、日本の警察がカンボジアで実施したようなPKOの教育的機能が失われつつあるのではないかと危惧している。政府は、現在のPKOが「国造り」という観点で教育的機能を果たしていると考えるか、見解を問う。
 3 2のような指摘とともに、PKOそのものが、よりリスクの高いものに変容しつつある中で、日本の警察が国際社会で果たすべき役割とは何かを考えたときに、PKOに限定せずとも、新興国、途上国の政情が安定して、まさに国造り、治安維持に本格的に取り組もうという段階においては、日本の警察は、カンボジアでの経験も踏まえ、まさに現地警察の指導教官役を果たすことができるのではないか。警察庁は、独自の国際貢献に現在どのように取り組み、今後の海外派遣にどのように取り組むか、現状と今後の方針を問う。日本の警察ならでは、日本の警察だからこそできる国際貢献、海外派遣があれば、具体的に述べられたい。
五 前回主意書の五の3においては、文民警察官たちが保管してきた記録、映像などについて、五の4においては文民警察隊長だった山崎裕人氏の「総括報告」について、今後の取扱いについて質問したところ、前回答弁書では、いずれも「今後、取得することとなった場合には、公文書等の管理に関する法律等の関係法令の規定に基づき、適切に対応することとなるものと考えている」との旨の答弁をいただいた。これらの記録等はいずれも、歴史的価値を有する公文書として、やがては国立公文書館の管理の下、国民が閲覧できるようにすべきと考える。また、政府をはじめとする、PKOに係る省庁や関係者は、これらの記録を、活動の検証に利用すべきであるとともに、そこから教訓を引き出し、将来の我が国からのPKO要員の派遣、更には我が国による途上国への派遣支援の際に役立てるべきであると考える。前回答弁書にいう「適切に対応する」とは、このような利活用をも含むものか。見解を伺いたい。
六 最後に、カンボジアの現状について政府の見解を伺う。前回主意書でも申し上げたように、二十五年前、日本を含む多くの国がカンボジアの国造りを支援し、また、同時に尊い命が失われる事態となった。二十五年経った今、カンボジアでは選挙が行われようとしている。しかしながら、平成二十九年には、最高裁の決定により最大野党の救国党が解体され、報道機関も新聞の発行停止やラジオ局の閉鎖に追い込まれるなど、その選挙の公正さに疑問を持つ声が多く上がり、選挙支援を打ち切る国々が出てきている。また、国を追われた救国党前党首のサム・レンシー氏は朝日新聞の単独インタビュー(平成三十年四月十二日)に対して、野党不在のまま選挙が実施されれば「それはフェイク選挙だ」、与党人民党が制しても「政権に正当性はない」と述べ、救国党の復活やメディアの活動再開などに日本の協力を求める考えを示した。更に本年六月には、在日カンボジア人らが、日本政府による選挙支援中止を求めるデモ行進を東京で行っている。また、パリの日本大使館近くでも、在仏カンボジア人らによる同様の趣旨の集会が開かれている。政府はこうしたカンボジアの現状をどのように評価し、直近の選挙を含めて、今後カンボジアとどのように向き合うのか、政府の姿勢を伺いたい。
 結びに、前回主意書と本主意書が、日本の今後の国際貢献の在り方の議論の一助となることを望み、また、二十五年前、日本として初めてPKOに参加した時の当事者たちの経験と残された教訓が、これからの日本にとってかけがえのない財産となることを願いたい。

 右質問する。



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