衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成三十年七月十七日提出
質問第四五四号

安倍総理が進める「新しいアプローチ」に基づく北方領土・平和条約締結交渉に関する質問主意書

提出者  篠原 豪




安倍総理が進める「新しいアプローチ」に基づく北方領土・平和条約締結交渉に関する質問主意書


 二〇一七年一月二十日の国会の施政方針演説で、安倍総理が「先月、訪日したプーチン大統領と…北方四島全てにおける『特別な制度』のもとでの共同経済活動について交渉開始で合意し、新たなアプローチのもと、平和条約の締結に向けて重要な一歩を踏み出しました」と述べたように、二〇一六年五月六日のソチ首脳会談で安倍総理が、北方領土問題や平和条約の締結問題に関する交渉を「新たな発想に基づくアプローチ」で進めるとした提案が、二〇一六年十二月十五日の山口首脳会談で合意され、現在、そのプロセスが継続しているが、交渉の成否を決める幾つかの問題について、政府の認識を以下、質問する。

一 基本的な国際情勢認識
 プーチン大統領が、ロシア国内で極めて反対が強い北方領土の返還に応じるためには、それに勝る戦略的な譲歩を日本から勝ちとって、政治的なリスクを回避できることが前提であると考える。
 そのロシアにとって、最大の問題は、いまも続くNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大で、ロシアにすれば、クリミア併合やウクライナ危機を契機とした対ロ制裁のそもそもの原因は、冷戦後、互いの軍事同盟を拡大しないという最高首脳間の合意を破って、東欧やバルト三国のみならず、ジョージアからウクライナまで勢力圏に取り込もうとしている西側諸国、とりわけ拡大の先鞭をつけた民主党のビル・クリントン大統領にあると考えている。
 このため、ロシアにとって対日関係の打開は、ウクライナ危機後の対ロ制裁で足並みをそろえる主要七カ国(G7)の一角を揺さぶるという意味合いがあるとされている。
 従って、ロシアにとって、北方領土返還に見合う日本の戦略的な譲歩とは、日本がウクライナ問題を巡る西側の対ロ制裁網から事実上離脱することを意味すると考えざるを得ない。
 しかし、この西側の同盟を崩壊させ、日本が国際的に孤立しかねない決断を北方領土返還のためにできるとは到底考えられないが、日本政府が現に領土交渉を進めようとしている以上、このような困難な状況を打開して領土交渉を進めることが可能であると考えていると思料されるが、その根拠はどこにあるのか示されたい。
二 安全保障との関係
 ロシアは、千島を対米安保上の要地と位置づけ、現在、北方領土の軍事基地の強化を精力的に進めている。
 その関連で、ロシアは、平和条約締結後に歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すとした一九五六年の日ソ共同宣言の有効性を認めているが、両島に米軍基地が新設される可能性があるのなら引き渡しには応じないことも明らかにしている。
 そうした中、二〇一六年十一月上旬、領土問題の協議などを加速するためモスクワ入りした谷内正太郎国家安全保障局長は、ロシアのパトルシェフ安全保障会議書記と会談した際、パトルシェフ氏からの、日ソ共同宣言を履行して二島を引き渡した場合、「島に米軍基地は置かれるのか」との問いに、「可能性はある」と答えたとされる。
 1 ウラジオストクの海軍基地は、ロシアの太平洋艦隊の拠点で、日本に北方領土を返還した場合、その目と鼻の先に米軍基地がつくられる可能性があるのであれば、それはロシアにとって安全保障上受け入れがたいと考えられるが、日本政府は、それでも、ロシアが返還に応じる可能性があると考えているのか。考えているとすれば、その根拠は何か。
 2 日米安保条約第五条は、我が国の施政の下にある領域内にある米軍に対する攻撃を含め、我が国の施政の下にある領域に対する武力攻撃が発生した場合には、両国が共同して日本防衛に当たる旨規定している。従って、防衛義務を果たすために米軍が日本の施政権が及ぶ地域であればどこでも駐留することは、可能であると考えるが、北方領土が返還された場合に、北方領土を日米安保条約第五条の適用範囲であるとしながら、米軍の駐留はしないとする判断が、日米安保条約の解釈上、許されるのか。許される場合には、その根拠を示されたい。
 3 日米地位協定第二条一項は、「(a)合衆国は、相互協力及び安全保障条約第六条の規定に基づき、日本国内の施設及び区域の使用を許される。個個の施設及び区域に関する協定は、第二十五条に定める合同委員会を通じて両政府が締結しなければならない。(後略)」と規定しているが、その意味は、外務省の部内向け解説書「日米地位協定の考え方増補版」によれば、米側は、我が国の施政下にある領域内であればどこにでも施設・区域の提供を求める権利が認められていること、また、特定の施設・区域の要否は、本来は、安保条約の目的、その時の国際情勢及び当該施設・区域の機能を総合して判断されるべきものであろうが、かかる判断を個々の施設・区域について行うことは実際問題として困難であるので、むしろ、安保条約は、かかる判断については、日米間に基本的な意見の一致があることを前提として成り立っていると理解すべきである、と説明している。
  これはつまり、米国が必要だと判断して要求する基地については、日本も必要と判断して提供することが、日米安保条約の前提になっているので、ロシアが北方領土を日本に返還した後、米国が北方領土に米軍基地を設置することを要求してきたら、日本は基本的にそれに同意する以外の選択肢がないものと理解して良いか。
 4 「新しいアプローチ」に基づく北方領土問題の解決では、北方領土は、日本に返還されるのではなく、両国の主権を害さない共同経済活動が行われるある種の日露「共同管理」地域になることが想定されている。仮に、こうしたことが実現された場合、日米安保条約の適用は、法解釈上、どのようになるのか。領土返還交渉において、日本が米軍基地を設置しないとロシア側と約束する根拠となり得るのか。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.