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令和元年十月四日提出
質問第一四号

MMT(現代貨幣理論)に関する質問主意書

提出者  中谷一馬




MMT(現代貨幣理論)に関する質問主意書


 いわゆるMMT(現代貨幣理論)とは、自国通貨を発行できる政府・中央銀行は、自国通貨建てで国債を発行している限り、財政赤字を拡大してもデフォルト(債務不履行)することはないという理論とされる。
 国家は、国民に対して納税義務を課し、「通貨」を租税の支払い手段として法令で決める。MMTでは、これにより、「通貨」には、納税義務の履行手段としての需要が生じることで、国民は、価値を認めることになると考える。結果として通貨は、民間取引の支払いや貯蓄手段として利用されるようになり、流通するようになる。
 また、MMTでは、誰かの債務は別の誰かの債権であり、誰かの赤字は別の誰かの黒字であると考える。単純化すると、政府部門の赤字は民間部門の黒字(海外部門も含めれば、国内民間部門の収支+国内政府部門の収支+海外部門の収支=0)だと言える。世界的に見ると、アメリカ合衆国の民主党のオカシオコルテス下院議員が支持を表明したことで話題になり、経済学者や著名投資家などがMMTに対してコメントするなど、MMTへの注目が集まっている。
 こうした状況を踏まえ、我が国においても様々な研究・検討を行う必要があると考え、政府の見解を確認したく、以下質問する。

一 日本の債務残高は対GDP比で二〇一七年度末に二百三十六%を超え、金額で千二百九十四兆円となっている。日本の債務残高は、対GDP比で見ても、二〇一〇年に破綻寸前と言われたギリシャを上回っているが、金利については十年物国債金利が世界最低水準で推移しており、金利はマイナスまで下がり続けている。こうした状況を踏まえて伺うが、債務残高が変化すると金利が変化するという因果関係はあると考えているのか、ないと考えているのか。また、あると考えているのであれば債務残高がいくらになったら金利がどうなるかなどの予測をされているのか、具体的な数値の見通しを含めて、政府の見解を伺いたい。
二 日本の政府債務がまだ四百兆円の頃(二十年ほど前)から、「GDPと変わらないほどの政府債務があったら金利は騰がり、通貨は暴落してハイパーインフレになって大変なことになる」と言われてきた。これは、財務省が商品貨幣説に立っているからであるが、いくら時間が経っても物価は騰がっていない。それにもかかわらず、今でもいつか起きるはずだと言う声があるが、日本はMMTに基づいた政策を実行しているとの考えから財政破綻はしないという声もある。ニューヨーク州立大学のステファニー・ケルトン教授も、「巨額の財政赤字でもインフレも金利上昇も起こっていない日本はMMTの成功例」などと主張しているが、こうした意見を政府はどのように捉えているのか所見を伺いたい。
三 二〇一九年四月四日に、日本銀行の黒田総裁は、「いわゆるMMTの評価については、これが必ずしも整合的に体系化された理論ではなくて、全体の把握が容易でないということで、その本質をつかむことはなかなか難しいのではないかと感じておりますが、MMTの基本的な主張について、自国通貨建て政府債務はデフォルトすることがないので、財政政策は財政赤字や債務残高などを考慮せずに景気安定化に専念すべきであるというふうに理解いたします。このように財政赤字や債務残高を考慮しないという考え方は極端な主張であり、なかなか受け入れられないのではないかというふうに考えております。」という発言をされているが、政府も同様の見解であるか。同様の見解であれば、何がどのように体系化されておらず、理論としてどの部分が欠落していると政府は考えているのか、詳細についてご見解を伺いたい。
四 平成十四年に、海外の格付け会社が日本国債の格付けを引き下げた。その際、当時財務省の財務官であった日本銀行の黒田総裁が、ムーディーズ・S&P・フィッチ宛に出した質問状には「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。」という記載がある。この内容については、今でも政府公式見解として変わりはないか、所見を伺いたい。
五 二〇一九年四月四日の参議院決算委員会にて、日本銀行の黒田総裁は、「銀行は信用創造で十億でも百億でもお金を創り出せる。借入が増えれば貸付としての預金が増える。これが現実。どうですか、日銀総裁」と問われ、「銀行が与信行動をすることで預金が生まれることはご指摘の通りです。」と認めた。いわゆるMMTでは、この信用創造を政府に当てはめ、政府が財政赤字支出をするに当たり国債を発行し、事業を行えば、財政支出額と同額の民間預金が生まれ、貨幣供給量が増える。したがって、資金供給の逼迫により金利が上昇することなく、財政破綻はしないと考える。政府部門を赤字にすれば民間は黒字になる、つまりは、政府が国債を発行すればするほど民間の預金が増えるという意味であり、経済は活性化すると言えるが、如何か。政府はどのように捉えているのか、見解を伺いたい。
六 経済学者のステファニー・ケルトン氏や経済産業省の中野剛志氏は「政府は、自国通貨発行権を有するので、自国通貨建て国債が返済不能になることは、理論上あり得ないし、歴史上も例がない。」という趣旨の発言を述べているが、この認識は正しいと思うか、否か、政府の見解を伺いたい。
七 財務省のウェブサイトでは、日本の国家財政において、歳出全体の約三分の一を公債金収入に依存していることについて、「将来世代へ負担をつけ回して」と述べている。また財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会財政制度分科会の二〇一九年六月十九日の資料によると、「現代の世代の受益と負担の乖離やその結果としての公債残高累増が意味することは、こうした将来世代へのツケ回しに他ならない」と述べている。しかしながら、財務省が作成した個人向け国債の広告動画や資料においては、「未来への贈り物。個人向け国債」と言うメッセージを配信している。国債について異なる意味合いのことが述べられているが、将来へのツケなのか、未来への贈り物なのか、政府の見解を伺いたい。
八 将来、国債を償還する時にその原資になるのは、将来世代が納める税金であると考えられるが、仮に国債が償還されなくなった場合、それにより直接的な不利益を被る者は国債の保有者という認識で正しいか、政府の見解を伺いたい。
九 財務省は二〇一九年四月十七日に開催された財政制度等審議会財政制度分科会において「説明資料(わが国財政の現状等について)」という資料を公開している。
 この資料の中には、「MMTに対する批判、コメント」という欄が設けられ、MMTに対する批判的なコメントのみが抜粋されている。そして批判的なコメントを述べた者としてクリスティーヌ・ラガルドIMF(国際通貨基金)専務理事の「MMTが本物の万能薬だとわれわれは思っていない。MMTが機能するようなケースは極めて限定的である。現時点でMMTが持続的にプラスの価値をもたらす状況の国があるとは想定されない。(理論の)数式は魅惑的だが、重大な注意事項がある。金利が上がり始めれば(借金が膨張して)罠にはまる。」という発言が記載されている。しかしながら、ラガルド専務理事は「デフレに見舞われたりするなどの状況下では、短期的には効果的かもしれない」とも述べているが、その発言は記載されていない。
 このように財務省がMMTに関して、肯定的な発言を排除し、わざわざ否定的なコメントだけを抜粋してまとめた資料で、説明を行っている理由について政府の見解を伺いたい。

 右質問する。

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