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令和元年十一月十一日提出
質問第七一号

傷病手当金と老齢年金との調整に関する質問主意書

提出者  西村智奈美




傷病手当金と老齢年金との調整に関する質問主意書


 傷病手当金と老齢年金との調整について、全国健康保険協会が、老齢年金を受給していないにもかかわらず、傷病手当金の返納を求めた事案に端を発して、年金行政、健康保険行政における窓口の対応および、健康保険法の傷病手当金と老齢年金との調整についての不公正・不公平な問題点が浮かんできたので、問題提起を行う。
 退職後の傷病手当金を受給している者が、六十五歳に到達した際に老齢年金を繰り下げていたところ、その傷病手当金の受給期間中に死亡した。
 遺族が遺族年金の裁定請求を行った際に、大手前年金事務所の窓口において、「亡くなった者の未支給年金を受給したら傷病手当金との調整が行われることとなるので、その請求はしない」と申し出たにもかかわらず、「亡くなった者が繰り下げていた老齢年金の裁定請求及び未支給年金の請求を行わないと遺族年金の裁定請求を受け付けられない」と指導されたために、一旦は亡くなった者の老齢年金の裁定請求と未支給年金の請求手続きを行った。
 しかしながら、未支給年金は受け取った遺族の一時所得となり、遺族に対しての所得税、住民税及び国民健康保険料、介護保険料などの負担が増加することが判明したため、大手前年金事務所に対して、亡くなった者の老齢年金の裁定請求と未支給年金の請求を取り下げるよう依頼した。
 このような経過があり、未支給年金を受け取っていないにもかかわらず、後日、全国健康保険協会大阪支部から遺族に対して、傷病手当金の返納の更正決定の通知がされた。
 このため、全国健康保険協会大阪支部に対して説明を求めたところ、未支給年金の受給がないことが確認できたので、傷病手当金の返納の更正決定を取り下げるとの連絡を受けた。ところが、一ケ月後に全国健康保険協会大阪支部から、更正決定を取り下げるとの判断に誤りがあったので、やはり返納してもらう必要がある、この更正決定に不服がある場合は、近畿厚生局社会保険審査官に対して、審査請求をするようにとの連絡を受けた。
 そこで、未支給年金を受給していないにもかかわらず、傷病手当金との調整を行うとした全国健康保険協会大阪支部の更正決定は不当であるとして、傷病手当金の返納の更正決定取り消しを求める審査請求を行った。
 当該、審査請求の決定書においては、健康保険法第百八条第五項に「老齢退職年金給付の支給を受けることができるときは、傷病手当金は、支給しない」と規定されており、また医療保険者職員の健保法運用の指針として用いられている「健康保険法の解釈と運用」において、老齢退職年金給付が裁定されていない場合は、傷病手当金を支給すべきであるが、裁定請求されている場合は、調整を行う旨の解説がされていることから、老齢年金の裁定請求がされている場合は、未支給年金の受給の事実がなくても、全国健康保険協会大阪支部の行った傷病手当金返納の更正決定は、適法かつ妥当であるとして棄却された。
 本事案を通じて、年金事務所の窓口対応の問題点および、健康保険法第百八条第五項において「退職後の傷病手当金を受けるべき者が、老齢退職年金給付の支給を受けることができるときは、傷病手当金は、その差額を支給する」としていることについて、以下質問をする。

一 年金事務所の窓口において、遺族年金の裁定請求の際に、その配偶者の老齢年金裁定請求及び未支給年金の請求事務を法的根拠がないにもかかわらず、遺族年金の裁定請求者の意思を確認しないまま、機械的にセットで行っていることについて、老齢年金裁定請求及び未支給年金の請求を行うことにより税金や社会保険料の負担が増えることや傷病手当金との調整がされるなどの不利益を説明したうえで、遺族年金の請求者の意思に基づいてその請求事務を行うように全国の年金事務所に通達し、窓口対応を改めるように徹底するべきではないか。
二 未支給年金を受け取った遺族が、退職後の傷病手当金と未支給年金の調整により不利益な負担を被ったケースがこれまでにもあるのではないか。平成十二年の健康保険法の改正により傷病手当金と老齢年金の調整を行うようになったことから、それ以降の記録について調査し、該当者に負担分についての救済を行うべきではないか。
 ついては、平成十二年の改正以降の@傷病手当金と老齢年金の調整を行った件数と金額および、Aそのうち傷病手当金と未支給年金との調整を行った件数と金額について各々示していただきたい。把握していないとするならば、それを調査すべきではないか。
三 健康保険法第百八条第五項の資格喪失後の傷病手当金と老齢年金との調整の趣旨は、その保険金の「支給」が重複した場合は、傷病手当金の支給額が減額されるというものであると解するのが妥当である。
 その根拠としては、健康保険法第百八条第六項に「保険者は、傷病手当金の支給を行うにつき必要があると認めるときは、老齢退職年金給付の支払をする者に対し、老齢退職年金給付の支給状況につき、必要な資料の提供を求めることができる。」とあり、また、全国健康保険協会大阪支部から送付された傷病手当金の返納を請求する書類において「老齢年金の受給」を傷病手当金の返納の理由として記載している。
 以上のことからも、「支給を受けることができるとき」=「老齢年金が裁定されている」とする解釈は誤りであり、老齢年金を受給した場合に傷病手当金と調整すべきであるので、調整の基準を「裁定請求の有無」ではなく、「年金支給の有無」に改めるべきである。
 現在、全国健康保険協会は日本年金機構との間で、事務連絡平成二十九年三月三十一日付厚生労働省保険局保険課発、全国健康保険協会宛「健康保険法第百八条等に基づく紹介事務について」に基づいて、傷病手当金と年金の併給調整を行うための情報の提供を受けているが、そこには、実際に年金の支給があったかどうかについての情報は含まれていない。実際に傷病手当金と老齢年金の併給が確認された場合のみ返金請求が行われるよう情報照会の内容を改め、「年金支給の有無」についても照会し、健保協会と年金機構で情報共有するべきではないか。政府の見解を問う。
四 そもそも、「疾病、負傷に起因する休業による所得減少」を保険事故とする健康保険法に基づく傷病手当金と、「老齢」を保険事故とする国民年金法及び厚生年金保険法に基づく老齢年金は、保険事故の対象が異なるのであるから、「所得補償」として併給調整を行うとする健康保険法第百八条第五項の規定には問題があるので、退職後の傷病手当金と老齢年金の調整について改正すべきではないか。政府の見解を問う。
 なぜなら、「所得補償」であるとの根拠は、下記の事実と矛盾するからである。
 @ 退職後の傷病手当金の受給期間中は老齢年金の裁定請求をせずに、当該傷病手当金受給期間終了後に繰り下げた老齢年金を受け取った場合は、当該傷病手当金は調整されない。
 A 退職後の傷病手当金は老齢年金と調整するのに、在職中の傷病手当金は、老齢年金と調整されない。
 なお、傷病手当金と、障害年金を調整するのは、同一の傷病に起因する場合である。これは、同一の保険事故であるから調整を行う趣旨であり、一方、老齢年金と傷病手当金との調整は、保険事故が異なるのであるから調整すべきではない。例えて言うと、保険の目的が異なる、火災保険と自動車保険の保険給付を調整しているようなものであり「保険」である観点からは納得できない調整である。

 右質問する。

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