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令和二年二月二十日提出
質問第六七号

河川法に関する質問主意書

提出者  中島克仁




河川法に関する質問主意書


 安倍総理は、第二百一回国会の施政方針演説において、「昨年の台風十九号では、八ツ場(やんば)ダムが利根川の被害防止に役立ちました。水力発電や農業用水などを目的とするダムについても、緊急時には省庁の縦割りを打破し、一元的に活用するための対策を、全ての一級河川を対象に、この夏までに取りまとめます。相次ぐ自然災害の教訓を活かし、全国で、川底の掘削、堤防の整備、無電柱化を進めます。」という方針を示された。これ自体は素晴らしい方針と思料する。
 一方で、一級河川富士川水系早川支流雨畑川には、日本軽金属株式会社所有の雨畑ダムが設置されており、国土交通大臣より同社に対していわゆる水利権が許可されている。そして、雨畑ダムの貯水池および上流部には、平成三十年十一月時点で土砂千五百六十一万立方メートルが堆砂していると言われている。
 このことを踏まえ以下質問する。

一 河川法第四十四条は、「河川の状態が変化し、洪水時における従前の当該河川の機能が減殺されることとなる場合」、ダムの設置者に対して、河川管理者の指示に従い、当該機能を維持するために必要な施設を設け、又はこれに代わるべき措置をとる義務を負わせている。そして、「河川の状態が変化し、洪水時における従前の当該河川の機能が減殺されることとなる場合」については、主に、河道貯留の減少、洪水伝播速度の増大および背水・背砂の影響という三つの場面が想定されている。
 このうち、背水・背砂の影響に関しては、同条の指示の基準として、河川法施行令第二十四条第一号において、「当該ダムの設置に伴う上流における河床又は水位の上昇により災害が発生するおそれがある場合においては、必要に応じ、堤防の新築又は改築、低地の盛土、河床のしゆんせつ、貯水池末端附近における自然排砂を促進させるための予備放流その他これらに類する措置を行なわせること。」と定められている。
 雨畑ダムの貯水池および上流部は、堆砂が千五百六十一万立方メートルにも及んでおり、ダム上流部の雨畑川の河床が上昇し、令和元年十月の台風十九号で周辺地域において、土堤防の崩壊、本村地区の浸水被害が発生している。
 1 このような状況は「当該ダムの設置に伴う上流における河床又は水位の上昇により災害が発生するおそれがある場合」に該当し、「河川の状態が変化し、洪水時における従前の当該河川の機能が減殺されることとなる場合」に当たるのではないか。これに対する判定基準などはあるのか。
 2 国土交通大臣は、日本軽金属株式会社に対して、河川法第四十四条に基づく指示を行ったか。行っていないとすればその理由は何か。
二 日本軽金属株式会社のニュースリリースによると、令和元年十二月二十日の第二回雨畑地区土砂対策検討会において、日本軽金属株式会社から、第一段階(常時満水位以上の堆積土砂の除去)、第二段階(過去最大規模の土砂流入でも対応できるポケット造成)という搬出目標が提示されたとある。
 この際の堆砂土砂の除去量及び時期は、同会議に構成員として参加している国土交通省関東地方整備局の資料によると、第一段階が令和四年三月末までに約三百万立方メートル、第二段階が令和七年三月末までにさらに三百万から四百万立方メートルとなる。また、日本軽金属株式会社の搬出目標以外にも、国土交通省関東地方整備局から、過去最大規模の土砂流入が生じた場合でも計画堆砂量を上回らない容量まで土砂を撤去することが対応例として提示されており、同社は第三段階に向けて専門機関と共同で検討していくこととしている。
 しかし、これらが日本軽金属株式会社の負担すべき費用の問題などにより実現されないことは十分に想定できる。国土交通大臣が、日本軽金属株式会社の提示した搬出目標が適切に実行されるために、その実施を確保するために何かしら取りうる措置はあるのか。
三 河川法第十八条は、河川管理者に対して、工事原因者に対する工事の施行命令を規定する。日本軽金属株式会社が、負担すべき費用の問題などにより自ら提示した搬出目標を実現しない場合には、国土交通大臣は同社に対して、河川法第十八条に基づく施行命令を出すことができるのではないか。
四 日本軽金属株式会社が、河床のしゅんせつなどに関して負担すべき費用の問題などにより、自ら提示した搬出目標を実現しない場合、国土交通大臣は同社に対して、河川法第七十五条に基づく水利権の許可の取り消しをしたうえで、ダム撤去による河川の原状回復などの命令を行うことは可能か。どのような場合に命令を出すことができるのか、基準などは存在するのか。
五 日本軽金属株式会社が、河床およびダムのしゅんせつなどに関して負担すべき費用の問題などにより、破産などして、法人が消滅し、水利権の保有者でありダムの管理者が法人として消滅することも十分に想定される。河川法は、このように水利権の保有者であり、ダムの管理者が法人として存在しなくなった場合については想定しているのか。一級河川に設置された民間企業所有ダムの上流部および貯水池における土砂の搬出がなされないことに関連して、河川法第七十五条に基づく水利権の許可の取り消しおよび行政代執行などのような形で、安倍総理が施政方針演説で述べられたように、国が自ら「川底の掘削」を実施することは法律上可能か。
六 河川法第二十三条の「流水の占用」という概念は、ある特定目的の為に、その目的を達成するのに必要な限度において、公共用物たる河川の流水を排他的・継続的に使用することと定義されている。そのため、流水占用の許可は、公水たる河川の流水を許可された範囲内で私的に使用する権利(流水に対する一面的な権利)を付与するにすぎず、流水を所有する(流水に対する全面的な支配権)を付与するものではないと考えられている。この点、日本軽金属株式会社は、河川法第二十三条に基づき、複数の発電所について、水利権の許可を受けている。報道によれば、日本軽金属株式会社の許可申請書において水利使用の目的は「水力発電」とされるものの、その特定の発電所の水利使用計画書の中では「電力はアルミ精錬上重要なものであり」などと言及されており、別の発電所の水利使用計画書の中では「アルミニウム精製、加工をはじめとしてアルミニウム関連製品の製造加工」などと言及されており、アルミニウム精錬やアルミニウム関連製品の製造加工のための水力発電目的で水利権の付与を受けているものと考えられている。しかし、報道によれば、同社は、既に静岡市清水区内にある蒲原製造所でのアルミニウム精練は終了しているとされ、同社が水力発電施設によって発電した電力の一部を中部電力に売電している、との指摘がなされている。これに関して質問する。
 1 「流水の占用」を規律する特定目的が終了または消滅した場合には、流水の占用の許可は消滅すると考えられないか。特定目的の終了または消滅により、流水の占用の許可が消滅するならば、別の目的のために流水を使用する場合には、新たな目的のための新たな流水占用の許可を得る必要があるのではないか。
 2 日本軽金属株式会社の発電施設に係る水利権の目的は、水力発電のみと指定されているが、発電した電力をアルミニウムの精錬やアルミニウム関連製品の製造加工に使用することを前提としており、売電することは想定されていない。アルミニウム精練やアルミニウム関連製品の製造加工のための発電から売電のための発電へと実質的に目的が変更されているとすると、新たな目的のための流水占用の許可が必要とはならないのか。特定目的の終了または消滅、新たに別の目的の流水占用の許可を得る必要性を定める基準などはあるのか。
 3 日本軽金属株式会社の発電施設に係る水利権の目的は、水力発電とのみ指定されているが、発電した電力をアルミニウムの精錬やアルミニウム関連製品の製造加工に使用することを前提としており、売電することは想定されていない。同社が売電を主目的として発電を行っているとすると、これは河川法第七十五条第一項第三号にいう「詐欺その他不正な手段により」水利権の許可の付与を得たとして、水利権の許可の取り消しなどが行われるか。「詐欺その他不正な手段により」水利権の許可を得たというための基準はあるか、あれば示されたい。
 4 日本軽金属株式会社の発電施設について、水利権の目的が許可申請当時の目的とは実質的に異なっているとするならば、この事実関係を調査するためにも、国土交通大臣は、職員に対して、河川法第七十八条に基づく立入検査を行わせるべきではないか。本件は「この法律を施行するため必要がある場合」に該当するのではないか。その判断基準等があれば、示されたい。

 右質問する。

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