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令和二年三月二十四日提出
質問第一三四号

黒川検事長の勤務延長に関する質問主意書

提出者  川内博史




黒川検事長の勤務延長に関する質問主意書


 本年一月三十一日、東京高等検察庁の黒川検事長の勤務延長が閣議決定された。政府は、国家公務員法の定年制度が検察官については検察庁法により適用除外されているという従来の政府解釈を変更し、一般職の国家公務員である検察官の勤務延長については一般法である国家公務員法の規定が適用されることとした。黒川検事長の勤務延長という人事は、従来の政府解釈に従えば成しえなかったものである。
 政府解釈の変更過程について、政府は、これまでの国会審議において概要以下のとおり説明している。
 法務省は国家公務員一般の定年の引上げに関する検討の一環として検察官の定年について検討を行い、昨年十月から十一月にかけて検察官の定年引上げに関する検察庁法改正案について内閣法制局の審査が行われ、了承されたが、臨時国会に法案は提出されなかった。本年の通常国会への法案提出まで時間があるため、法務省において改めて見直しを行ったところ、特定の職員に定年後も引き続きその職務を担当させることが公務遂行上必要な場合に、定年制度の趣旨を損なわない範囲で、定年を超えて勤務の延長を認めるとの勤務延長制度の趣旨は検察官にもひとしく及ぶべきであることから、一般職の国家公務員である検察官の勤務延長については、一般法である国家公務員法の規定が適用されると解釈することとした。法務省は、この解釈変更について、本年一月十七日から二十一日にかけて内閣法制局と、一月二十二日から二十四日にかけて人事院と、一月二十三日には内閣人事局とそれぞれ協議を行い、異論はない旨の回答を得て、最終的に結論を得た。その後、一月二十九日に森法務大臣が黒川検事長の勤務延長について閣議請議を行い、一月三十一日に閣議決定されたものである。
 以上を踏まえ、以下、政府の見解を伺いたい。

一 本年二月十九日の衆議院予算委員会において、近藤内閣法制局長官は「法令の解釈というのは、当該法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮し、また、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意して論理的に確定されるものであり、政府による法令の解釈は、このような考え方に基づき、それぞれ論理的な追求の結果として示されてきたものであって、諸情勢の変化とそれから生ずる新たな要請を考慮すべきことは当然であるとしても、なお、前記のような考え方を離れて政府が自由に法令の解釈を変更することができるという性質のものではないと考えていると。ただ、このようなことを前提に検討を行った結果、従前の解釈を変更することが至当であるとの結論が得られた場合には、これを変更することがおよそ許されないというものではないと考えている」と答弁しているが、今般の解釈変更は、ここでいう「およそ許されないというものではない」と解されるのか、どのような場合に許されるのかの具体的な判断基準とあわせて伺いたい。
二 本年三月十三日の衆議院法務委員会において、森法務大臣は、既に内閣法制局の了承を得ていた検察庁法改正案の見直しについて「昨年十二月ごろ、担当者において、果たしてこの解釈を維持するのが妥当なのかという観点に立ち戻って検討を行うなどして、その後、省内での議論を経て、勤務延長制度について今般の解釈に至ったものでございます。」と答弁している。この内閣法制局の審査を終えて条文が固まっていた検察庁法改正案を見直し、検察官の勤務延長規定を新たに追加した法案が策定されるまでの意思決定の過程を明らかにする必要がある。
 1 本年三月九日の参議院予算委員会において、森法務大臣は、昨年十月ごろに内閣法制局の審査を終えていた検察庁法改正案については、「法律案の提出に至っておりませんので、私の方で臨時国会の法案としての説明は受けておりません。」と答弁しているが、森法務大臣がこの案に勤務延長の規定が含まれていないこと及びこの案が内閣法制局の審査を終えていることを知った時期をそれぞれ、お示しいただきたい。また、内閣法制局の審査に供する案の決裁権者を明らかにされたい。
 2 昨年十二月ごろに行われた担当者による検討は、森法務大臣の指示により始められたのか。そうであれば、指示を行った時期をお示しいただきたい。大臣の指示によるものでなければ、森法務大臣は、担当者による検討が行われることについて、事前に報告を受けるなどして把握していたのか。そうであれば、把握した時期をお示しいただきたい。いずれにも該当しない場合、森法務大臣は担当者による検討が行われていることをいつ把握したのか、その時期をお示しいただきたい。
 3 内閣法制局の審査を終えて条文が固まっていた検察庁法改正案を見直して検察官の勤務延長規定を新たに追加した法案が策定されるまでに、大臣による口頭了解や文書決裁等も含め、どのような手続を経たのか伺いたい。また、当該手続に関して、意思決定過程が明らかとなる文書は保存されているのか、確認したい。
三 本年二月十三日の衆議院本会議において、安倍内閣総理大臣は「検察官については、昭和五十六年当時、国家公務員法の定年制は検察庁法により適用除外されていると理解していたものと承知しております。他方、検察官も一般職の国家公務員であるため、今般、検察庁法に定められている特例以外については、一般法たる国家公務員法が適用されるという関係にあり、検察官の勤務延長については、国家公務員法の規定が適用されると解釈することとした」と答弁しているが、今般の解釈変更について、安倍内閣総理大臣は、いつ、誰から、どのような形で(文書、口頭など)説明を受けたのか。
四 憲法第六十七条は「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。」と定めている。このように、民主主義を体現すべき者である内閣総理大臣として、安倍内閣総理大臣は、今般の解釈変更について知った時点で、政府内部における解釈変更で済ませるのではなく、改正法案を提出して国会の議決を経るよう指示すべきであったと考えるが、政府の見解を伺いたい。また、今般の解釈変更の際に法改正を行うことは検討したのか。検討したのであれば、どのような理由で、法改正によらず解釈変更で対応することとなったのか伺いたい。

 右質問する。

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