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令和二年六月十二日提出
質問第二六四号

犯罪加害者家族(特に子どもたち)に関する質問主意書

提出者  中谷一馬




犯罪加害者家族(特に子どもたち)に関する質問主意書


 表題に関する政府の見解を確認したく、以下、質問する。

一 凶悪な犯罪による被害は、いつ誰の身に及ぶかは誰にもわからない。
 犯罪被害に遭うことは、大変つらく悲しいことであるので、犯罪被害者がいつでもどこでも支援が受けられる支援体制の構築が不可欠である。我が国においても犯罪被害者等基本法が施行されて以降、犯罪被害者等の権利利益の保護をする施策が全国的に進んでいる。
 その一方で、犯罪加害者家族に対する支援施策については未だ取り残されている現状がある。このことは日本社会においても問題視されており、「NHK クローズアップ現代 犯罪加害者家族たちの告白」「モントリオール世界映画祭最優秀脚本賞受賞映画 誰も守ってくれない」「鈴木伸元氏著作 加害者家族」「東野圭吾氏著作 手紙」など、犯罪加害者家族が取り上げられた社会問題を提起するような作品が見られる。こうした状況がある中、政府は、犯罪加害者家族が置かれている現状をどのように捉え、どのような研究、検討、議論を行っているのか、所見を伺いたい。
二 犯罪加害者家族を支援している「NPO法人 ワールドオープンハート」が、下記の問いを投げかけ、ワークショップを行っている。
 「太郎さんには専業主婦の妻と三歳になる息子がいます。しかしながら太郎さんは花子さんという女性と不倫をしています。ある時、妻と別れようとしない太郎さんに腹を立てた花子さんが、妻と離婚しなければ二人の関係を家庭や職場にばらすぞと迫りました。そして口論の末に太郎さんが花子さんを殺害するに至ったという事例があった時に、この事件において太郎さんの妻と息子は加害者であるか、被害者であるか。」
 政府はこの太郎さんの妻と息子は加害者だと考えるか、それとも被害者だと考えるか、見解を伺いたい。
三 犯罪学者のトラヴィス・ハーシが、社会的絆理論の中で、「人は社会との絆がある時には犯罪することを留まるが、愛着・コミットメント・規範意識・関与の社会的な絆が弱まった時に犯罪を起こす。」ということを検証している。
 犯罪加害者家族の支援をすることは、犯罪加害者が刑務所から出所した際に、絆の受け皿を作ることになり、それが再犯の防止にもつながり、結果として社会の利益になると考えるが、政府の見解を伺いたい。
四 欧米諸国における犯罪加害者家族支援では親が逮捕・受刑中の子どもたちへの支援に対して特に力が入れられており、子どもたちへの経済的支援・心理的支援が行われている。
 加害者の子どもたちへの支援が社会的に認められているのは、親の状況に左右されずに健康に育つという子どもの権利擁護に加え、親が犯罪者というスティグマ(烙印)によって自傷行為や非行、犯罪の世代間連鎖を断つという目的意識が共有できているからであると考えられている。政府は、こうした諸外国の犯罪加害者家族、特に子どもたちに対する支援についてどのように考えているのか、所見を伺いたい。
五 犯罪が起こると、「なぜ犯罪を起こす要因を作ったのか?」と加害者家族を非難する論調が巻き起こることがあるが、犯罪加害者家族にはいつ誰がなるかわからない。以前、十八歳の少年が運転する車が小学生の列に突っ込み、小学生が意識不明の重体になるという痛ましい事故があったが、家族が車で交通事故を起こして、悪意の無い犯罪加害者になる可能性は誰にでもある。そして、家族が起こした犯罪に巻き込まれた判断能力を持っていない子どもたちは被害者であると考える。自ら選択できない属性によって差別に晒される加害者家族の子どもたちを適切に保護することができなければ、子どもたちは健全に成長できず、貧困の世代間連鎖のような負のスパイラルを社会的に生み出すことになると懸念する。
 現在、犯罪被害者等基本法の下で、被害者家族の児童・生徒に対する支援に関する教員や専門職(スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー)への研修は行われているものの、加害者側の子どもたちが取り残されてしまっているという指摘がある。
 また、親や兄弟が犯罪者となった犯罪加害者家族の子どもたちに関する調査がなされておらず、データがないことも問題視されている。
 児童福祉法第一条には、「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。」と書かれているので、犯罪加害者家族の子どもたちの権利を保障する必要があると考える。
 こうした観点から加害者家族の子どもたちがどのような状況に置かれているのか、実態調査を行い、その結果に沿って、家族が起こした犯罪に巻き込まれた子どもたちを包括的に支援する方法を政府として検討すべきと考えるが如何か。所見を伺いたい。

 右質問する。

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