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令和二年九月十六日提出
質問第二七号

覆土なし除去土壌での食用作物の試験栽培に関する質問主意書

提出者  阿部知子




覆土なし除去土壌での食用作物の試験栽培に関する質問主意書


 超党派議員連盟「原発ゼロの会」では、環境省が飯舘村長泥地区における「除去土壌再生利用実証事業」の一環として、除染で生じた除去土壌を汚染されていない土で覆うことなく食用作物の試験栽培を行うことの決定プロセスなどについて、二〇二〇年八月十九日にヒアリングを行った。
 その後、文書による確認質問を行い、文書回答も受け取った。その結果、「飯舘村における除去土壌再生利用実証事業においては、除去土壌から大きな異物(枝や木、石など)を除去するために、振動スクリーン(七十ミリメートル)のふるいにかけています」として、それを再生資材と呼び、その放射能濃度の測定と管理は環境省が実施していることは分かった。
 しかし、その他については、数多くの不明点があるため、汚染された除去土壌を七センチメートルのふるいにかけただけの再生資材を以後、「除去土壌」と称して、以下、質問する。

一 環境省は、二〇二〇年一月十五日に、非公開で「除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略の具体化に係る調査業務」なる打合せを主催した。これは研究者による開示請求でわかったことであり、この打合せの位置づけを尋ねたところ、「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会及びその下に設置するワーキンググループの委員に対し、科学的な知見からの助言を求めたもの」であるとの回答があった。
 この打合せ会議に参加したのは、「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会及びその下に設置するワーキンググループの委員」であるとのことだが、開示された記録によれば、検討会やワーキンググループ全員ではなく、一部の委員のみである。
 1 この非公開の打合せについては、検討会とワーキンググループ委員全員に案内を行ったのか。または最初から一部の委員にのみ声をかけたのか。明らかにされたい。
 2 環境省に対して、この非公開の打合せの全資料と議事録をウェブサイトに掲載するよう求めたが、二〇二〇年一月十五日の打合せは、「検討の過程であることから、公開することは想定しておりません」との回答だった。検討会やワーキンググループが存在するにもかかわらず、開示請求をしない限りはその存在すら明らかではない打合せを、一部の委員とだけ行ったのは何のためか。
二 環境省は、二〇二〇年二月十日に第十一回「除去土壌等の再生利用に係る放射線影響に関する安全性評価検討ワーキンググループ」(以後、WG)を開催した。WGは、二〇一六年一月十二日開催の第一回会合から二〇一九年十一月十五日まで、全ての議事録と資料が環境省のウェブサイトに掲載されている。
 ところが、七か月前に開催された第十一回会合については未掲載であるため、掲載を求めたが、「追って回答いたします」とのことである。開示請求に応じて開示した記録についてのウェブサイトへの掲載を控えている理由およびどのようなタイミングで掲載を行うのかを明らかにされたい。
三 二〇一九年十一月二十一日に飯舘村、環境省、原子力安全研究協会が事務局を務める「飯舘村長泥地区環境再生事業運営協議会(第六回)」が開催され、その議事要旨がウェブサイトに掲載されている。この運営協議会で、質疑応答により確認された点として、次の三点が提示されていた。
 ・定点線量や写真などによる長泥地区の様子を記録すること。(要望)
 ・モニタリングポストを仮の集会所の近くに設置すること。(要望)
 ・帰還困難区域における食物栽培についてはルール上問題ないため、来年度の実施を検討すること。
 これらの要望が誰からのものかを確認するために、要旨のもととなった議事録を求めたが、「追って回答いたします」との回答だった。
 1 「帰還困難区域における食物栽培についてはルール上問題ない」の「ルール」とは何を指しているのかを尋ねたが、「帰還困難区域における試験栽培に関する制限」を指すとの回答である。「帰還困難区域における試験栽培に関する制限」とは、法令で定められた制限か、任意に定めている制限か。
 2 運営協議会の約二カ月後の二〇二〇年一月十五日「除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略の具体化に係る調査業務」議事録によれば、環境省は冒頭で、「地元ではいろいろな食用作物の要望があるので、手引きとは異なる覆土のないパターンも実施し、覆土が無くても問題ないことを証明しておきたい」と述べている。証明しておきたいと考えたのは、環境省であることが分かった。なぜ、どのような理由で、環境省は、覆土がなくても問題ないと証明したかったのか。
四 実証事業の目的を改めて尋ねたところ、「二〇一六年六月に環境省が示した『再生資源化した除去土壌の安全な利用に係る基本的考え方について』においては、管理の妥当性を検証すること等を目的として実証事業を実施することとされており、飯舘村長泥地区における実証事業では、飯舘村特定復興再生拠点区域復興再生計画において、『農の再生にあたっては、実証事業により安全性を確認』することとされております」との回答であった。
 1 覆土なしで試験栽培をすることと、管理の妥当性はどのような関係があるのか。
 2 「農の再生」とは何か。地元住民が農業を再開することを指すのか。地元住民以外の作業員が雇用されて農作業を行う場合も、「農の再生」と呼ぶつもりか。
 3 飯舘村の実証事業で覆土なしでの試験栽培の結果、問題ないとされれば、日本全国の農場に除去土壌を覆土なしで食物栽培を行うようにするのか。その場合、消費者向けに除去土壌で栽培したことを表示する必要性については、消費者庁が判断するのか。
五 二〇二〇年一月十五日「除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略の具体化に係る調査業務」打合せでは、参加した農研機構からの委員から、「作物別に一度試験を行っただけで安全性を謳うのは危険性が高い」、「一つの試験をして実施することでそれで安全とは言えない。これでさらに次のステップに進めるというのは難しい。手引きの目的は、再生土を扱うためのものであり、帰還農家の営農意欲は別の話、仕切ったほうが良い」などの指摘を受けていた。この指摘はその後どのように反映されているかを環境省に尋ねたところ、「営農再開に向けた栽培試験のあり方については、今後、専門家、関係機関とも相談の上、対応を検討します」との回答であった。
 福島の除去土壌を全国で再利用するのであれば、一部の専門家に非公開会議で尋ねるだけでは不十分で、公開の場で共有、議論されるべき問題ではないか。
六 「覆土なし」の場合と「あり」の場合で作業員の被ばく線量の試算は行ったかを尋ねたところ、行っていないが、「より大規模な盛土施工時における作業員の被ばく線量の評価や、農作業従事者の個人線量計による被ばく線量の管理を実施しております」との回答である。
 農作業従事者の被ばく線量管理を個人線量計で行う根拠は何か。
七 覆土なし食用作物栽培試験のための、植え付けは八月、収穫は十月頃であるとのことだが、この結果はいつどのように公開されるのか。
八 八月十九日のヒアリングで、環境省は「長泥住民が当初から覆土上ではなく、再生資材土壌を混ぜた土壌での栽培をしたいという意向があった」と発言している。いつ、どの場でこのような発言があったのかについては、「追って回答いたします」との回答があった。
 土壌を混ぜることは規制すべきではないのかをさらに尋ねたところ、「実証事業の成果を踏まえて、有識者の御意見もうかがいながら、制度化についての検討を進めてまいります」との回答を得た。制度化とは何を意味しているのか。
九 飯舘村長泥地区における「除去土壌再生利用実証事業」は二〇一七年に関係者で合意し、始まったが、当初は、バイオマス原料となるジャイアントミスカンサスなどの資源作物の試験栽培を行っていた。そこで、飯舘村はバイオマスエネルギー生産を実証事業後に予定しているのかを確認したが、環境省は、「将来の営農計画については、飯舘村によりますと、現在、関係者で検討中であり、具体的な品目は未定と聞いております」との回答である。
 合意からの三年間で、実証事業の対象が、資源作物から食用作物栽培に変化し、今や目的の不明な覆土なしの食用作物栽培にまで拡大している。一方で、営農計画も品目も未定である。
 この一連の試験栽培の迷走ぶりを見ると、究極的な目的は、地元住民のための農の再生ではなく、「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略」が示すように、除去土壌の県外最終処分にあるのだと考えざるを得ないが、政府の見解を明らかにされたい。
十 「再生資材は有価物か、無価物か」、「再生『資材』という限りは有価物として扱うべきではないか」と確認したところ、「御指摘のような「有価物」や「無価物」等との考え方はとっておらず、土壌等の除染等の措置に伴い生じた福島県内の除去土壌については、いわゆる放射性物質汚染対処特措法に基づき、管理することとされております」との回答である。「再生資材」と呼びながらも、「有価物」や「無価物」等との考え方はとっていないということは、経済価値のない土壌を再利用と称して土に戻すことは、最終処分すること(=捨てること)を実質、意味する。
 放射性物質汚染対処特措法において、除去土壌が管理されない状態で出回ることをどのように防ぐのか。
十一 「事業後の農業での天地返し、耕うん、作業小屋建設等による土壌攪乱の規制はあるのか。その場合の法的根拠は何になるのか」と尋ねたところ、「再生利用に係る規制については、放射性物質汚染対処特措法を法的根拠としており、これは環境省が所管しているものです。再生資材の管理は環境省が実施し、再生利用実施場所の管理は関係者による協定を締結することを想定しており、協定の具体的な内容については、今後検討していくこととしています」との回答である。
 1 協定にはどのように法的拘束力を持たせるのか。
 2 WGの資料「除去土壌等の再生利用に係る放射線影響に関する安全性評価検討」(二〇一六年六月)によれば、仮に五千ベクレル/キログラム(以後、Bq/kg)の除去土壌が今から使用された場合、管理が不要となるクリアランスレベル相当の百Bq/kgで減衰するには百六十年以上を必要とするが、その間、農地と営農と耕作者は、放射性物質汚染対処特措法の管理下におくのか。
十二 実証事業での再生資材化に関し、「ふくしま環境再生Vol.九」(環境福島地方環境事務所二〇二〇年十一月)によれば、「ストックヤード」で「仮置き場から搬入された除去土壌の放射能濃度を測定し、五千Bq/kg以下の除去土壌を選別して再生資材化施設に運搬します」とある。それでは、再生資材化施設に持ち込むための「五千Bq/kg以下」の選別が行われるストックヤードでは、五千Bq/kg超の土壌も持ち込まれているはずである。
 再生資材化施設に持ち込むための「五千Bq/kg以下」の選別を行う「ストックヤード」へは、最大何Bq/kgの除去土壌が持ち込まれるのか。
十三 問六で「農作業従事者の被ばく線量管理を個人線量計で行う根拠は何か」を尋ねたが、放射線を取り扱う教育や訓練を受けた職業人以外の被ばく線量を個人線量計で行う考え方に関しては、これまでに放射線審議会が公表した二〇一九年一月の「東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた緊急時被ばく状況及び現存被ばく状況における放射線障害防止に係る技術的基準の策定の考え方について」(以後、考え方)がある。これは、帰還住民の被ばく線量管理を個人線量計でよしとする根拠となっている。
 これは、もともとは、放射線審議会の事務局である原子力規制庁が、二〇一八年九月二十八日の放射線審議会に考え方案を提出したのちに、成案を得たものだ。二〇一八年九月二十八日の考え方案には、「2.空間線量率と実効線量の関係の整理」として二つの行政資料と二つの学術論文が掲載され、計四つの資料を根拠に、帰還住民の被ばく線量管理を個人線量計でよしとする結論が導かれていた。
 しかし、二〇一九年一月二十五日の放射線審議会で提出された案からは、四つの資料の一つ「個人線量と航空サーベイによる空間線量モニタリング結果の比較(宮崎、早野)」(以後、宮崎早野論文)は、「学術論文として信頼性が確認された場合においては、再度掲載する」との説明があり削除されていた。
 その後、二〇二〇年になり、宮崎早野論文は、掲載されていた学術誌から撤回されたため、結果として、考え方に掲載されたのは三資料だけである。
 1 日本においては、放射線を取り扱う教育や訓練を受けた職業人以外は、被ばく線量管理を個人線量計で行っている事例や必要性は原発事故前にはなかった、という理解で間違いはないか。
 2 放射線を取り扱う教育や訓練を受けた職業人以外の被ばく線量を個人線量計で行って良い根拠は、考え方においては、二つの行政資料を除けば、たった一つの学術論文「福島第一原子力発電所事故後の飯舘村における復興期間中の個人外部被ばく線量の測定及び評価」のみである。この理解で間違いはないか。

 右質問する。

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