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令和三年四月十九日提出
質問第一〇四号

公益通報制度の課題に関する質問主意書

提出者  丸山穂高




公益通報制度の課題に関する質問主意書


 令和二年に改正された公益通報者保護法(以下、「改正法」という。)は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。主な改正内容は、事業者に対する内部通報に対応するために必要な体制の整備義務、整備義務違反に対する行政措置及び内部調査等に従事する者に対する守秘義務の導入に加え、権限を有する行政機関への通報及び報道機関等への通報に関する要件の緩和、通報者及び通報の対象となる範囲の追加である。近年も事業者の不祥事による社会問題が後を絶たないことから、消費者庁は早期是正により被害の防止を図るとしていたが、有識者からは改正法が施行されたとしても、残された課題があるとの指摘がなされている。
 右を踏まえ、次の事項について質問する。

一 事業者による、公益通報者に対する公益通報を理由とした不利益な取扱い(以下、「不利益な取扱い」という。)について
 1 下請事業者、取引先事業者及び退職から一年を過ぎて通報した者等(以下、「部外者」という。)が不祥事を知った場合は、公益通報の対象者となっておらず、通報しても保護されない。部外者は法令等の違反を知り得た場合、どのように通報を行えばよいのか。また、いかにして通報した部外者の情報が事業者へ漏れることなく不正を是正できるのか、その方法を具体的に伺いたい。
 2 内部通報の体制整備は、常時使用する労働者の数が三百一人以上の事業者に義務付けられている。しかし、大半の事業者が中小企業基本法に定める三百人以下の中小事業者であり、当該中小事業者における内部通報体制の整備について、一律に義務を課すと過大な負担となるという理由で努力義務にとどまることを踏まえれば、体制整備は限定的となりかねない。その場合、体制整備義務が課されていない事業者に対する公益通報では、不利益な取扱いがなされる懸念がある。そこで、公益通報制度を実効性のあるものとするため、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律における時間外労働の上限規制に基づく、三六協定の経過措置について大企業と中小事業者で期間をずらしたのと同様、体制整備を義務化する対象を段階的に広げることで対策が進むと考えるが、政府の見解を問う。
  また、報道機関等への公益通報を認める一部の要件は、改正法により生命・身体に対する危害が発生した場合等だけでなく、財産に対する損害が発生した場合及び公益通報者について知り得た事項を、当該公益通報者を特定させるものであることを知りながら、正当な理由がなくて漏らすと信ずるに足りる相当の理由がある場合等が追加され、要件が緩和された。この通報者を特定させる情報を漏らすと信ずるに足りる相当の理由がある場合には、内部通報の体制整備がない中小事業者に通報する場合が含まれるのか、政府の見解を問う。
 3 平成三十年十二月の公益通報者保護制度に係る消費者委員会の答申(以下、「答申」という。)では、「事業者が内部通報体制の整備義務を履行していない場合につき、客観的・外形的に判断することが可能な要件について、法制的・法技術的な観点から整理を行い、当該要件を特定事由に追加する」ことが求められていた。しかし、改正法第三条第三号においては、「正当な理由がなくて漏らすと信ずるに足りる相当の理由がある場合」とのみ規定されており、客観的・外形的に判断することは難しいと考えるが、政府の見解を問う。また、政府はどのように事業者が内部通報体制の整備義務を正しく履行していることを確認するのか、詳細を伺いたい。
 4 答申では、行政機関について、民間事業者に率先垂範する観点から、規模にかかわらず、内部通報体制の整備を義務付けるべきとされた。しかし、改正法第十一条第三項では、国及び地方公共団体と民間事業者を区別することなく、常時使用する労働者の数が三百人以下の事業者について、内部通報体制の整備は努力義務とされた。答申において、行政機関は規模にかかわらず内部通報体制の整備を義務付けるべきとされたにもかかわらず、労働者数三百人以下の行政機関が努力義務であることを理由として整備に遅滞を生じれば、中小事業者による努力義務の履行にも影響を与えると考える。労働者数三百人以下の行政機関においても、速やかに内部通報体制が整備されるよう、各地の行政機関に通知を行うという認識でよいか、政府の見解を問う。
二 改正法において、退職者が公益通報を行う場合に保護される範囲は、退職後一年以内とされた。これにより、公益が損なわれる事態に気付いたときが退職後一年間を超えていた場合、公益通報を行うことができなくなる。政府は、退職後の通報を理由として不利益な取扱いを受けた事例のほとんどが退職後一年以内に通報されているとしているが、その根拠を取りまとめているのであれば、退職者が行った通報について、調査を行った人数、そのうち不利益な取扱いを受けたと回答した人数、さらに、そのうち退職後一年以内に通報したと回答した人数を具体的に示されたい。一方で、民法では、「権利を行使することができることを知った時から五年間」という主観的起算点による時効が存在する。仮に、退職後の通報を理由として不利益な取扱いを受けた事例のほとんどが退職後一年以内に通報されているとしても、一年以上の事例も存在することを踏まえ、退職者が公益通報を行う場合に保護される範囲を、退職後一年以内とせず、主観的起算点による期間にする必要はないか、政府の見解を問う。

 右質問する。

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