衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
令和三年六月十一日提出
質問第二〇六号

精神科医による患者に対する不適切行為に関する質問主意書

提出者  松原 仁




精神科医による患者に対する不適切行為に関する質問主意書


 精神科医と患者の間には地位・関係性に圧倒的な力の差があり、主治医の言いなりにならないと治療してもらえない、見捨てられたくないという不安や恐怖の心理が患者側に働く。入院中の患者は、退院の制限、隔離・拘束等の行動制限、強制投薬、懲罰的治療への恐怖から主治医の機嫌を損ねないよう従順にならざるを得ない状況がある。治療の特性上、患者が抑圧してきた秘密や悩みを打ち明けることで、相手に恋愛感情のようなものを抱いてしまう「陽性転移」が患者側に起こりやすい。治療はしばしば密室で行われるため、抵抗し難く、被害の立証も困難である。また、治療に使われる向精神薬を意図的に悪用することで、患者の判断能力を奪ったり、依存させたりすることが可能である。医師側が患者の心理や障害特性に乗じることで、正常な判断ができない相手に形式上の合意をとることは容易である。被害を訴える相手に「精神科患者の妄想」等とレッテルを貼ることで、その証言の信憑性を貶めることが可能である。こうした中で行われる性暴力の特徴は、必ずしも「暴行・脅迫」を伴うわけではないため、現行法では取り締まることが困難である。暴行・脅迫要件が撤廃されたとしても、形式上の同意があるために、不同意が要件である限り取り締まることは難しい。
 また、診療中の女性患者にわいせつ行為をし、強制わいせつの罪に問われた精神科医が本年二月に有罪判決を受けた事例や、診察を装って女子中学生の患者にわいせつ行為をし、児童福祉法違反の罪に問われた児童精神科医が昨年十二月に起訴され、現在公判前整理手続中である事例など、刑事裁判に発展するわいせつ事例も目立つようになっている。一方で、そもそも精神的悩みを抱えて治療に訪れた患者にとっては、事件が公となることで病状の悪化が引き起こされる可能性があり、被害届の取り下げや示談に応じるのは自然なことである。そのため、逮捕されて加害の事実を認めていた精神科医が不起訴となった実例もある。このような場合、加害の事実があったとしても、刑事裁判に至らないことから、「罰金以上の刑に処せられた者」を対象とした医師法による行政処分にかからず、医業を問題なく継続できることになり、被害が繰り返されるおそれがある。
 医師法第七条においては、「罰金以上の刑に処せられた者」以外にも「医師としての品位を損するような行為のあったとき」も行政処分の対象となることが明示されているが、それを適切に適用することで、患者に危害を与えるわいせつ医師を排除し、患者を守ることが可能ではないかと考えられる。
 政府においても、「性犯罪に関する刑事法検討会」を設置して、このような問題に対して、しかるべき対応を行うべく議論を深めていると承知している。
 そこで、次のとおり質問する。

一 精神科医が患者に対してわいせつな行為をした場合、同意があっても処罰の対象となり得るような規制を政府主導で進めるべきと考えるが、政府の見解は如何。
二 医師法第七条が示す「医師としての品位を損するような行為」とは具体的に何か。その中に地位・関係性を利用して患者にわいせつ行為を働くことは含まれるのか。政府の見解を問う。
三 児童の虐待を防止するために設けている「児童相談所」のような制度や、性的虐待を受けている患者が「精神科患者」あるいは「障がい者」であることを理由に門前払いされることのない相談支援システムを設けるべきと考えるが、政府として如何。

 右質問する。

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.