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令和六年六月七日提出
質問第一二六号

離島の「住民生活に必要な航路」を確保するための「海の交通政策」の在り方に関する質問主意書

提出者  小川淳也




離島の「住民生活に必要な航路」を確保するための「海の交通政策」の在り方に関する質問主意書


 先に提出した離島の「住民生活に必要な航路」を確保するために「海の交通政策」の在り方に関する質問主意書に対する令和五年十二月一日付けの内閣答弁書(以下「答弁書」という)について、理解できない点があるので、改めて質問する。

一 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という)は、「競争政策の徹底」により、「一般消費者の利益を確保する」ことを目的とするものである。したがって、独占禁止法の解釈運用は、「一般消費者の利益を確保する」観点から行われるべきものと考える。独占禁止法第十条第一項が禁止する「企業結合」の解釈運用に当たっても、「一般消費者の利益を確保する」観点から行われるべきものと考える。
 先の質問主意書で指摘した事例について、答弁書は、「本件株式取得についての調査を行い、本件株式取得後における当該二社の市場シェア、順位等を加味して、市場における競争の状況を総合的に勘案した結果、本件株式取得により一定の取引分野における競争を実質的に制限するとは認められなかったことから、独占禁止法上の問題とすることは困難であると判断したものである」とする。
 しかしながら、当該「企業結合」は、後に述べる当事者の発言などからして、「草壁航路を運行する競争事業者を消滅させ、同航路を休止させるという競争事業者の排除による競争の解消を主たる目的として行われた」ものであることは明らかであり、現に当該「企業結合」の結果、草壁航路が休止され、「本航路を利用する住民、すなわち一般消費者の利益が損なわれた」ことは、地域住民(有権者)の過半数を超える住民の草壁航路再開を求める署名があったことからも明らかである。
 前記の当事者の発言の一例は、次のとおりである。
 「前社長が頼んできたときから、この二つの航路はいつか併合しないといけないという暗黙の前提がありました。島内人口が減少する中で、航路数も便数もほとんど変えずに運航してきました。これではいずれ共倒れになると分かっていた。長い目で見ると、航路を一本化して維持するほうがいい。そこで今回は、高松港までの距離が八キロメートル短い池田港を残すこととしました。運賃は同じなので、燃料費や人件費が少ない方が維持しやすいんです。それから、フェリー業界には、離島航路について国と地方公共団体が補助金を出す制度があります。ただし、基本的には複数航路がある島は対象外。つまり、人口減少社会においては、複数の業者が航路を持って競合している島は、かえって将来性が不安になる。だから、小豆島以外でも、再編集約の波が続いていくでしょう」(DIAMOND ONLINE「地域交通崩壊を両備グループCEOが激白」小嶋両備グループ代表兼CEOインタビュー)
 「日本で新たに航行ルートをつくるとなると、漁業者や既存事業者との調整がものすごく大変です。実際、私たちも他の事業者が弊社のルートに入ってこようとしたら、全力で止めますからね(笑い)。事業者競争がとても厳しいのです」(二〇二二年七月に行われた「瀬戸内デザイン会議」で、松田(株)両備ホールディング代表取締役社長は、草壁航路への事業者の進出を念頭に置いたと思われる発言をしている。出典「海の上は可能性の坩堝 瀬戸内デザイン会議2」(日経BP社))
 また、高松港の発着時間枠が確保できれば、草壁航路への進出を希望する事業者がいると承知するが、当該事業者が草壁航路を休止したままであることから、草壁航路への進出の障壁となっており、「当該企業結合が実質的に市場の競争を制限している」ことは明らかである。
 さらに、結果的に、買収事業者によって、高松港の運航枠が別の航路に流用され、就航可能な枠が一日三便しか空いていない状態が形成され、国土交通省の運用と相まって、他の事業者が参入できなくなっている。この状態は、買収事業者によって意図的に形成されている可能性もあるが、その点についてはどのように評価しているのか、政府の見解を問う。
 以上より、当該「企業結合」に関する公正取引委員会の判断は、独占禁止法の解釈運用を誤っていると考える。公正取引委員会は、当該「企業結合」の目的などの考え方について、調査をした上で、当該「企業結合」が、独占禁止法第十条第一項の禁止する「企業結合」に該当するかどうか、改めて判断すべきと考えるが、公正取引委員会の見解を問う。
 答弁書によれば、「企業結合」後の「企業結合」も、独占禁止法第十条第一項の適用対象となるとのことであるので、公正取引委員会において、改めて、必要な調査を行い、必要な措置をとることを求める。公正取引委員会の見解を問う。
二 答弁書により、内閣として、海上運送法に基づく航路については、独占禁止法第十条第一項の適用除外としない考えと理解するが、当該案件について、国土交通省として、どのような調査をし、どのような理由で、当該「企業結合」が独占禁止法上の問題がないと判断したのか明らかにされたい。
三 買収事業者は、草壁航路へ他の事業者が進出できないよう、当該「企業結合」を行うとともに、後で示すように、他の事業者に草壁港周辺の土地を貸すことを行わないよう、地元自治体に対し、文書で要請している。さらには、地元住民との交渉の場で、役員の一人が「高松港の発着枠をおさえているので、他の事業者は草壁航路に進出できない」趣旨の発言を行うなど、他の事業者の草壁航路進出を妨害するさまざま言動を行っている。
 前記の合併事業者の発言等は、次のとおりである。
 ・令和二年八月二十五日付けの文書で、小嶋両備グループ代表兼CEOは、小豆島町長松本篤に対し、次のことを要請している。
 「他社他航路からの再参入により、今回の経営合理化が白紙に戻らないようするため、休止予定の草壁港の車両待機・駐車スペースについて、他社他航路への今後の貸し出しは見合わせていただきたい」
 ・令和二年十一月十日、地元の草壁航路の再開を求める住民が、両備グループに対して、「両備グループによる草壁航路の再開ができないなら、他の事業者の誘致も考えざるを得ない」との趣旨の発言を行ったところ、国際両備フェリーの一人の取締役から「申請しているダイヤがあり、高松側の港が使えませんよ」との発言がなされている。この発言でも買収事業者の一連の行為に、他の事業者への草壁航路侵入を阻止する「競争制限の意思」があることは明らかである。
 これらの買収事業者の競争制限の行為は、独占禁止法上の問題があると考えるが、公正取引委員会及び国土交通省は、それぞれ、どのような根拠で、独占禁止法上の問題がないと判断したのか、具体的に明らかにされたい。
四 国土交通省が、「独占禁止法上の問題があるかないか」について公正取引委員会と協議をし、その意見を聴いておれば、国土交通省として、適切な判断ができたと考える。答弁書では、今後とも「交通政策」を実施するに当たって、公正取引委員会との協議を行うと答弁されている。
 本件の対応について、国土交通省として、改めて公正取引委員会と協議をし、前記の買収事業者の発言なども含めて、当該「企業結合」を含め、独占禁止法上の問題がないか、適切な判断を改めて行うべきであると考える。国土交通省の見解を問う。
五 小豆島の航路のうち「指定区間」であるもう一航路が、令和五年十二月一日から休止された。小豆島では、「指定区間」である二航路が休止状態にあり、再開の目途が立っていない。
 国土交通省として、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律に基づき、休止にある二航路を含め、「これからの小豆島の航路の在り方」について、「小豆島地域公共交通協議会」の場において、関係者で議論することにより、関係者のコンセンサスを得ることが重要と考える。このことについて、関係町、香川県などに助言する考えはないか。国土交通省の見解を問う。
六 「指定区間」制度は、答弁書にもあるように、「住民生活に必要な航路を守る」ための制度である。したがって、その解釈運用は、「住民生活に必要な航路を守る」観点から行われるべきものであることは言うまでもない。
 国土交通省は、「指定区間」である草壁航路については、「一日四便以上の往復の運航を確保する」ことを、海上運送法に基づく航路運航計画の認可の基準のひとつとし、四国運輸局長名で告示をしている。草壁航路について「一日四便以上必要としている根拠」を具体的に明らかにされたい。
 草壁航路について、「住民生活を守る」上で、「一日四便以上の運行の必要がある」と国土交通省として認識し、住民に示しておきながら、その航路が、二年間以上にわたり、休止していることについて、どのように国土交通省は認識しているのか、明らかにされたい。
 本件についての国土交通省の「指定区間」制度の解釈運用から、「一日四便以上の運行の必要がある」との基準は、「住民生活を守る」観点よりも、事実上、他の事業者の進出を阻害し、「事業者間の競争を制限する役割」も果たしているとの議論も成り立ち得ると考える。国土交通省の見解を問う。
七 答弁書は、「指定区間」制度創設の趣旨について、「規制緩和を行うことにより、事業者間の創意工夫を生かした多様なサービスの提供並びに事業の効率化及び活性化を図る」や「離島等の住民の地域生活に必要不可欠な航路における輸送サービスを引き続き確保していくことを目的」としている。
 この趣旨からして、買収事業者の行為は、その趣旨に応えていると、国土交通省は考えているのか。
 事実上、他の事業者の進出を阻止する事業者に対し、適切な指導をすることもなく、答弁書にあるように、買収事業者の判断をいたずらに待つのみで、当該事業者の再開の意思とそれに向けた準備や具体的な再開の可能性を確認・検証することもなく、また、「進出を希望する事業者がどのような条件が整えば進出が可能になるか」を検討することもない国土交通省の姿勢は、「指定区間」制度の「住民生活に必要な航路を守る」という本来の趣旨から大きく乖離するものであると考える。
 買収事業者の前記の言動などを、国土交通省は承知しているはずである。買収事業者の言動は、答弁書の「指定区間制度の目的」に著しく反すると考える。
 以上、本件に見る限り、国土交通省のこれまでの対応では、「指定区間」制度が形骸化するばかりである。国土交通省の見解を問う。
八 「指定区間」制度は、「事業者の利益を守る」のことではなく、「住民生活を守る」ためにある。この趣旨から、国土交通省は、「買収事業者に、必要な指導を行うべきである」と考える。買収事業者に対し、どのような指導を行うことが、「指定区間」制度が本来の役割を担うために必要だと考えているのか。国土交通省の見解を問う。
 買収事業者は、前記インタビューなどで、「草壁航路は、ビジネスとしての限界があり、再開が事実上困難」である旨を度々表明している。であるならば、「住民生活を守る」という「指定区間」制度の趣旨に鑑み、草壁航路に進出を考える事業者がいるのであれば、進出の可能性のある事業者による「指定区間」運航の可能性などについて、具体的に検討、検証することが、「住民生活の必要な航路を守る」という「指定区間制度の趣旨に沿う国土交通省に求められること」であると考える。国土交通省の見解を問う。
九 国土交通省は、旧運輸省における「交通政策」の限界を克服すべく「航路を含む社会資本の整合的な整備や総合的な交通政策を行うために設置」された省庁である。
 その期待に応えて、国土交通省は、交通政策基本法や地域公共交通の活性化及び再生に関する法律を国会に提出し、その制定をみた。その点を評価する。
 「海の交通政策」への、この「二法」のより積極的な活用が求められている。とりわけ交通政策基本法に基づき、国土交通省が中心になって、「関係者の連携と協働による協議の場」を設け、「どうしたら、小豆島のこれからの航路問題を、より良いかたちで確保していくことができるか、率直な意見交換が必要」である。その「意見交換」を通して、「厳しい環境下での航路の確保はどうあるべきか、地域住民の理解も得られることになる」はずである。
 あわせて、先に述べたように、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律に基づき小豆島の二町が設置する「小豆島地域公共交通協議会」の場において、「これからの小豆島での航路の在り方について、議論し、これからの方向性について、関係者のコンセンサスをつくる」ことを、小豆島の二町に、国土交通省として助言することも考えられる。
 また、「各離島一航路」に限っている現行の航路助成制度が、小豆島のように複数の航路のある島々にとって、今後大きな制約になることが、懸念される。その柔軟な運用、拡充についても、今後の課題として、検討することが必要である。
 以上の諸点について、国土交通省の見解を問う。
十 「海の交通政策」は、他の交通政策分野に比べ、対象者が、一部の離島住民に限られることから、他の分野の交通政策に比べ、政策的な課題とすべきとの声が大きくならない面があり、国民の関心を呼ぶことが少ないのかもしれないが、「海の交通政策」は、他の「交通政策」と同じように、いや、それ以上に困難で、複雑な問題を抱えている。
 「指定区間」制度は、これまで述べてきたように、その「目的と運用の実態が、大きく乖離している」と言わざるを得ない。その運用の実態は、これまで指摘したように、「既存事業者の利益を重視する」あまり、結果として、草壁航路では、「住民生活を守るために必要な航路が再開できない」まま、長期間にわたり、放置され、いまだ、その再開の目途も、国土交通省は示していない。
 「住民生活に必要な航路を確保する」観点から、「指定区間の航路を、住民生活に必要な社会資本として位置付け」、独占禁止法との関係の整理・調整はもとより、「公的助成の導入」などのより積極的な「公的関与」の在り方についても、検討すべきであると考えるが、国の見解を問う。
 国土交通省を中心に、国におかれては、「海の交通政策の関係法律のすべてを含めて、海の交通政策全般の在り方について、検証し、再検討し、再構築する」ことを、改めて求めるが、国の見解を問う。
十一 答弁書は、従前の需給調整規則は、「全供給輸送力が全輸送需要に対し著しく供給過剰にならないことを目的とした制度」であった一方、「指定区間」制度は、「離島等の地域住民の生活に必要不可欠な航路における輸送サービスを引き続き確保していることを目的としたもの」であるとする。
 しかしながら、「指定区間」である草壁航路の運用実態でわかるように、実際の運用は、需給調整規則時代の考え方が、今もなお、現場では、実際生きていることを懸念する。また、本件で見られるように、事業者の意識も旧来のままではないかと推察する。つまり、「指定区間」制度の解釈運用は、「住民生活を守ることよりも、現実的には、事業者の既得権益を守るものである」との意識で行われていると言わざるを得ない。
 「指定区間」制度の運用において、独占禁止法上の問題がないのかどうか。国土交通省は、公正取引委員会と改めて協議をし、その運用の実態を把握し、その上で、本来の運用が可能となるよう、必要な改善を図るべきと考える。国の見解を問う。
十二 「指定区間」である草壁航路の早期再開は、地域住民の声であり、また、関係法律からみても、その早期再開が必要である。そのためには、交通政策基本法等に基づき、「航路の確保」を任務とする国土交通省が、香川県、小豆島の二町、事業者、住民などに呼びかけて、「関係者の協議の場を設け、どうすれば草壁航路の早期再開が実現できるか。関係者の知恵と力を結集して取り組むことが必要」である。国土交通省の見解を問う。

 右質問する。

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