質問本文情報
令和六年六月十八日提出質問第一八三号
公立図書館の振興に関する質問主意書
提出者 早稲田ゆき
公立図書館の振興に関する質問主意書
図書館法は、その第一条で「図書館の設置及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もつて国民の教育と文化の発展に寄与することを目的とする。」とされている。図書館の三要素は「人」「資料」「施設」とされるが、その最も重要な要は、選書やレファレンス(読書相談)にあたる「人」であると考えるが、近年、地方財政の状況悪化により、公立図書館の正規職員比率が低くなり、非正規雇用、指定管理者制度による委託化が進んできているので、地方自治の原則を踏まえつつも、国民の教育と文化の発展のためにナショナルミニマムを国が定めるべき観点から、以下質問する。
一 図書館法第十三条第二項において「館長は、館務を掌理し、所属職員を監督して、図書館奉仕の機能の達成に努めなければならない。」とされているところ、館長に司書資格は不可欠なのではないか。館長の司書資格を必須とするよう図書館法の改正が強く望まれるところ、その方向性のもとで、まずは図書館の設置及び運営上の望ましい基準(以下、「望ましい基準」という。)の「第二 公立図書館」の「一 市町村立図書館」の「4 職員」の「(一)職員の配置等」の1を「市町村教育委員会は、市町村立図書館の館長として、その職責にかんがみ、図書館サービスその他の図書館の運営及び行政に必要な知識・経験とともに、司書となる資格を有する者を任命するよう努めなければならない。」と改定すべきであり、そのために公開の有識者会議を立ち上げるべきではないか。
二 現行の「望ましい基準」に基づいて、全国の自治体及び教育委員会に対し、公立図書館において専門的なサービスを実施するために必要な数の、司書資格を有する司書及び司書捕を確保するための積極的な採用及び処遇改善に努めなければならないことを、改めて周知徹底すべきではないか。また問一で述べた公開の有識者会議の立ち上げ自体が、その周知になると考えるが、いかがか。また館長職、司書職ほか図書館に従事する職員の、司書資格を有する割合の現状についてどのように考えるか。政府としての見解をあきらかにされたい。
三 現行の「望ましい基準」では、「第二 公立図書館」の「一 市町村立図書館」の「2 図書館資料」の(一)2において、「・・・また、郷土資料及び地方行政資料の電子化に努めるものとする」となっているが、平成二十四年に比べて世の中のICT化が格段に進んでいるにもかかわらず、予算規模の少ない自治体設置図書館ではなかなか地域資料や歴史文化資料のデジタル化とその提供が進んでいないのが実情である。
公立図書館が所蔵する貴重な地域資料や歴史文化財資料等が劣化したり紛失したりすることのないように、国立国会図書館による公立図書館への制度面及び技術面での支援がこれまで以上に手厚く実施されるよう、公立図書館にある地域資料や歴史文化資料のデジタル化とその公開について、国立国会図書館と連携しながら促進されるべきことを「望ましい基準」に明確に書き込む改定を行うべきではないか。
四 「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)の施行を踏まえた「望ましい基準」の改定にあたっては、障害者サービスも実際にそのサービスを行うのは現場の「人」であり、資料を整えるのも「人」であり、また、貴重な郷土資料や地域資料のデジタル化についても、読書バリアフリー法に対応したサービスが求められることになること、さらに図書館は、リーダーである館長のもと、専門職である司書職員がチームになって運営されるとき、最も効率的・効果的な成果をあげられることから、すでに問一及び問三で述べた内容の改定を含めるべきと考えるがいかがか。
また、改定とともに、「望ましい基準」における「障害者に対するサービス」について、国から十分な財政措置を行うべきではないか。
五 地方公務員の会計年度任用職員等の臨時・非常勤職員に関する調査結果(総務省)における令和二年四月一日現在の会計年度任用職員の職種別一覧表によると、会計年度任用職員全職種に占める人数割合では、保育所保育士が九・三%、図書館職員は二・九%であった。しかし、田中洋子編著の「エッセンシャルワーカー」(旬報社)によれば、令和二年に行った社会福祉施設等調査で、公営(公立)保育所における非常勤保育士は三万七千二百三十四人、二十八・四%であり、日本図書館協会の「日本の図書館 統計と名簿 二〇二三」によれば、図書館の職員の七十八%は非正規職員である。また、図書館友の会全国連絡会が実施した調査結果によると、調査した自治体の非正規率は平均三十二%であるが、それが図書館になると平均六十七%にまで上がることがわかっており、その多くが女性である。
統計や調査年度も異なるので、単純比較はできないものの、公立図書館の非正規職員の割合は、雇用者全体(三十六・九%)、あるいは自治体職員(三十・三%)の中でも際立って多く、会計年度任用職員の比率は約四十%と推定され、いわゆる資格職の保育士と比べても、図書館職員の非正規率は異常に高いといえる。
このように、直営の公立図書館の職員の多くが、非正規雇用の会計年度任用職員である実態が適切であるかどうかについて、政府の見解をあきらかにされたい。
六 社会教育施設のうち、コンサートホールやスポーツ施設、美術館など、集客が期待でき、指定管理者が収受した施設の利用料金を指定管理者自身の収入とし、受託者の自主的な経営努力を促すことができる施設と異なり、図書館法に基づく図書館の運営には、無償原則が適用されることから、利潤追求を基本とする民間のノウハウが発揮しにくい特質を持っている。実際に令和三年度社会教育統計によると、公立図書館における指定管理者制度導入の割合は二割程度と、社会教育施設のうち公民館に次いで相対的に低い。また公立図書館への指定管理者制度の導入にあたっては住民による反対の声が上がるなど、社会教育施設の中でも指定管理者制度の導入がなじまないと評価できるのではないか。このことについて分析し、結果を周知するべきではないか。政府としての見解をあきらかにされたい。
右質問する。