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令和六年十二月十六日提出質問第六八号
洋上風力発電に係る環境アセスメント制度改善等に関する質問主意書
提出者 緑川貴士
洋上風力発電に係る環境アセスメント制度改善等に関する質問主意書
政府は、国連気候変動枠組条約第二十一回締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定を踏まえ、令和三年に閣議決定した地球温暖化対策計画において「二〇五〇年カーボンニュートラル」の実現と、令和十二年度に温室効果ガスを平成二十五年度比で四十六%の削減等を目指し、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の最大限の導入を進めることとしている。再エネの導入は自然環境と共生するものであることが大前提であり、自然環境の保全に支障をきたす形での再エネ導入を防ぎながら、気候変動対策を進めていく必要があるので、以下質問する。
一 再エネの中でも、風力発電は太陽光発電とともに主力を担っている。陸上風力発電の開発可能な適地が減少する中、海に囲まれた日本において洋上風力発電の大規模導入への期待は大きい一方、同発電事業の実施に当たっては、いわゆる再エネ海域利用法に基づき選定を受けた事業者が環境影響評価法及び電気事業法(以下、アセス法等)に基づき環境への影響について包括的に環境アセスメントを行うこととしているが、同発電の環境アセスメントについては、必要な基礎的な環境に関する情報が十分整備されているとはいえない。海域の現地調査は天候の影響の受けやすさや、風車へのアクセスが船舶等に限定されること等、陸域の調査に比べて制約があることに加え、同発電の導入事例や環境アセスメントについての先行事例・研究も少ない。例えば、渡り鳥の飛行ルートに風車が設置された場合に渡り鳥に及ぼす影響や、風車の設置時の杭打ち音による海生生物への影響等、同発電による環境影響に関する科学的知見や予測手法の知見は必ずしも十分ではない。環境影響の予測・評価の不確実性の低減をはかるために、海外研究等を含めた各国の取組や科学的知見を幅広く収集した上で、事業者の事業実施・継続に係る予見可能性を高める必要があると考える。政府見解を伺う。
二 同発電事業の安定的、効率的な実施のためにも環境配慮の仕組みの整理が必要であると考える。再エネ海域利用法は、国が同発電が実施可能な促進区域を指定し、公募によって事業者を選定し、当該事業者に水域を長期占用させることを可能とする仕組みである。他方、当該事業の実施に当たっては、環境への影響の回避又は低減のため、当該事業者がアセス法等に基づき環境への影響について包括的に環境アセスメントを行うこととしているが、例えば、海洋環境保全の配慮・検討等は再エネ海域利用法に基づく区域指定プロセスにおいても行われており、アセス法等における検討・手続内容に重複が生じている。そこで、事業者を選定する以前の早期の段階から国の責任において、関係機関・地域等から幅広い情報や知見を収集し、環境アセスメント等の方法を確定した上で現地調査等を実施し、同調査結果を再エネ海域利用法に基づく区域選定等の検討や選定事業者が立案する事業計画に適切に反映させることによって、環境配慮を確保する仕組みとする必要があるのではないか。政府見解を伺う。
三 一に述べたように、環境影響の予測・評価の不確実性が懸念されるところ、自然の機能を活用した環境影響の緩和・適応策を最大限導入する必要があると考える。海域環境の改善や温室効果ガスの吸収源対策として、現存するブルーカーボン生態系を保全することに加え、令和四年度から開始された「命を育むみなとのブルーインフラ拡大プロジェクト」の取組事例もあるが、まだまだ少ない。課題をどのように整理し、今後の取組を広げていくのか。政府見解を伺う。
右質問する。