質問本文情報
令和六年十二月十七日提出質問第一〇四号
世代を超えた格差の固定化に関する質問主意書
提出者 松原 仁
世代を超えた格差の固定化に関する質問主意書
日本における経済的格差の拡大は、近年大きな社会問題となっている。その中でも「世代を超えた格差の固定化」は、国民の公平感を損ない、社会を不安定化させ、社会の持続的発展可能性を揺るがしかねない深刻な問題である。
我が国においても、「努力したものが報われるべきである」という考えは、多くの人が持っているはずであるから、本来、個々人の努力の成果が公平に評価され、「世代を超えた格差の固定化」しない仕組みが担保されていればと考えるが、そのような評価制度の構築は、現実には困難というほかない。
政府は二〇二五年度の税制改正において、親や祖父母が結婚・子育て資金を子や孫に一括で贈与する際、一千万円までを非課税とする特例の延長を検討していると報じられている。しかし、政府の税制調査会は二〇二三年六月の中期答申において、この制度が「世代を超えた格差の固定化」につながる可能性を懸念し、制度の適用実態を踏まえた再検討を求めている。
もっとも、世代間で金融資産の蓄積に差が存在することは否定することができず、税制上の優遇を設けて、金融資産を有している親や祖父母が結婚・子育て資金を子や孫に一括で贈与し移転する仕組みは、少子化傾向に変わりがない現状からはやむを得ない面もある。
資本主義経済圏にある我が国において格差が発生することは避けられない。問題は、「世代を超えた格差の固定化」と特定の職業分野における構造的な低賃金であると考える。
そこで、次のとおり質問する。
一 政府として、日本社会における経済格差について、また、世代を超えた格差の固定化について、どのような現状認識を有しているか明らかにされたい。また、経済格差や世代を超えた格差の固定化に関する現状における課題に対して、政府として具体的に実施している政策があれば明らかにされたい。そのような施策がなければ、今後、そのような施策の検討を行うか政府として明らかにされたい。
二 世代を超えた格差の固定化の一例として、親の資金力次第で学習塾への通塾など教育の機会に不均衡が生じている現状は、相対的に高収入を得られる可能性が高い雇用や職業にアクセスする機会の平等が不当に阻害されている。そのため、満足な収入を得られない若者について、一般論として個人の自己責任を強調する土台は失われており、構造的格差の実態を踏まえた是正策が必要と考えるが、政府の見解如何。
三 新型コロナウイルス感染症流行の最中、エッセンシャルワーカーの労働力確保が社会問題とされた。その際、福祉従事者のように特定業種の所得の低さが問題とされた。現在も、介護士や保育士、コメディカルと呼ばれる医療関係者の低賃金が大きな問題となっている。このような雇用分野における構造的低賃金問題について、政府として、何か具体的な解消策を実施しているか。
右質問する。