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令和七年二月十八日提出質問第五八号
交通事故被害者の救済体制強化に向けた財源確保に関する質問主意書
提出者 水沼秀幸
交通事故被害者の救済体制強化に向けた財源確保に関する質問主意書
我が国では、自動車の保有者に自動車損害賠償責任保険(責任共済)への加入を義務付け、当該責任保険等に基づく保険金の支払により交通事故の被害者の救済を図る仕組み(自動車損害賠償保障制度)が構築されている。
一方で、自動車損害賠償保障制度のみでは、重度後遺障がい者の救済が十分でないなどの課題があるため、政府は、自動車安全特別会計の自動車事故対策勘定において、重度後遺障がい者への救済事業等を実施している。この自動車事故対策勘定は、平成十三年度まで実施されてきた政府再保険制度で自動車の保有者が負担した自動車損害賠償責任保険の再保険料等が財源とされているところである。
かかる状況下、自動車安全特別会計の自動車事故対策勘定から、平成六年度に八千百億円、平成七年度に三千百億円、合わせて一兆千二百億円が一般会計へ繰り入れられた。このうち、平成八年度に千五百四十四億円、平成九年度に八百八億円、平成十二年度に二千億円、平成十三年度に二千億円、平成十五年度に五百六十九億円の合計六千九百二十一億円が当時は繰り戻されているものの、令和六年度末においても、元本分で四千八百億円超、利子相当分で九百億円超が繰り戻されていない。
これまで、平成六年、平成十一年、平成十五年、平成二十二年、平成二十九年と当時の大蔵大臣ないしは財務大臣と、運輸大臣ないしは国土交通大臣との間で交わされた繰戻しについての合意は、いずれも履行されずに、現在は、令和五年に財務大臣と国土交通大臣間での、令和九年度までに繰り戻すとの合意の期間中である。五千七百億円以上もの巨額が未返還であることは自動車安全特別会計の本来業務に支障をきたすことになるため、早期かつ計画的に返還されるべきであると考える。
しかし、これまでの各委員会における委員の質問に対し、国務大臣および政府参考人による答弁からは、具体的な返還計画が全く示されていない状況が続いている。早期の繰戻しを行わない理由を各国務大臣や政府参考人は「財務事情は大変厳しい状況」のためとしている。
そこで、以下質問をする。
一 「財務事情は大変厳しい状況」との説明は、返還しない理由として極めて曖昧であると考える。また「現に保有する積立金等によって、必要な被害者救済事業等が行われている」「財源の逼迫度は相対的に一般予算の方が深刻であるため、早期に返還しなくともよい」という趣旨の説明は、積立金が年々取り崩されている状況を鑑みれば持続可能とは到底言えず、理由にならないことは明白であると考えるが、このような説明を行う合理的かつ詳細な理由を示されたい。
二 自動車安全特別会計の自動車事故対策勘定に設けられた積立金の運用益は、被害者保護増進事業等の財源に充てられているが、運用益では財源が足りず、積立金を毎年七十億円以上取り崩してその財源に充てている。結果、事故被害者の救済にまわる積立金は発足当初の約九千億円から足元では千五百億円を割り込む事態に直面している。この状況が続くと積立金はあと二十年程度で底をつく計算だが、財務省はそれまでに繰入金を全額繰り戻すと国民に約束するべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
三 二十年という期限が難しいとしても、繰り戻す必要のある五千七百億円超の残高について、確実に繰戻しが行われるように、具体的な返還計画が作成されるべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
四 令和七年度一般会計は前年度を八・八兆円上回る歳入額となっている。他方、令和七年度の繰戻予算額は前年度同額の六十五億円となっている。巨額の繰入残高が存在する状況で、歳入が大きく増えたのであれば、繰戻額も増やすべきではないかと考えるが、政府の見解を示されたい。
右質問する。