質問本文情報
令和七年二月二十八日提出質問第七五号
集団的自衛権の憲法解釈変更に関する質問主意書
提出者 島田洋一
集団的自衛権の憲法解釈変更に関する質問主意書
一九五一年九月八日に署名され、一九五二年四月二十八日に発効した日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(以下、旧安保条約という)は前文で「平和条約は、日本国が主権国として集団的安全保障取極を締結する権利を有することを承認し、さらに、国際連合憲章は、すべての国が個別的及び集団的自衛の固有の権利を有することを承認している。これらの権利の行使として、日本国は、その防衛のための暫定措置として、日本国に対する武力攻撃を阻止するため日本国内及びその附近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する」と明記している。
すなわち旧安保条約の締結、発効時においては、日本政府は、個別的自衛権に加え、集団的自衛権も「行使」できるとの憲法解釈を採っていた。
ところがその後、日本政府は憲法解釈を変更し、一九七二年十月十四日の内閣法制局より参議院決算委員会に提出された資料で「わが国は国際法上いわゆる集団的自衛権を有しているとしても、国権の発動としてこれを行使することは、憲法の容認する自衛の措置の限界をこえるものであつて許されないとの立場」に移行した。
この政府見解の変更は、さらに一九八一年五月二十九日の答弁書(内閣衆質九四第三二号)で「国際法上、国家は、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもつて阻止する権利を有しているものとされている。我が国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然であるが、憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであつて、憲法上許されないと考えている」というように定式化されて、今日に至っている。
そこで政府に対し質問する。
一 旧安保条約は憲法違反の条約であったのか。
二 旧安保条約が合憲であったとすれば、集団的自衛権の「行使」に関する憲法解釈を、その後、日本政府が変えたことになると考えるが、解釈変更がなされたことを認めるか。
三 旧安保条約時代における「集団的自衛権の行使は合憲」という憲法解釈も成り立つとすれば、再びその解釈に戻すのに憲法改正は必要なく、政府見解の変更によって為しうると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
右質問する。