質問本文情報
令和七年三月七日提出質問第八六号
沖縄における米兵による事件事故等に関する質問主意書
提出者 屋良朝博
沖縄における米兵による事件事故等に関する質問主意書
米軍基地を抱える沖縄県は、我が国の防衛、安全保障の一翼を担うとされ、米軍基地の存在による住民生活への過重な負担を長年抱えていると考える。これら日米地位協定及び沖縄の基地負担に関し、以下の事項について質問する。
一 石破茂首相は、二〇二五年二月二十六日の衆議院予算委員会において、「米軍が駐留することによってこの犯罪が起こっているという因果関係を私は存じ上げません」(以下、「この発言」という。)と答弁した。
1 この発言に関して、因果関係がないとした具体的な根拠を示されたい。
2 米軍の駐留と犯罪が起こっている因果関係の有無について、政府の統一した見解を伺いたい。
二 戦後七十九年を経た今もなお、国土面積のわずか〇・六%に過ぎない沖縄県に、在日米軍専用施設の約七十%が過度に集中し、米軍による事件・事故が繰り返され、沖縄県民の生命、財産、安全が脅かされている。一九七二年に沖縄が日本復帰して以降、在沖米軍基地から派生する刑法犯摘発件数は累計で六千二百三十六件(そのうち殺人や強盗、強姦、放火など凶悪犯罪は五百九十二件。沖縄県警まとめ、二〇二四年十二月現在)となっている。報道によれば、二〇二四年の一年間の刑法犯摘発件数は七十三件で、過去二十年で最多であったことがわかったとしている。政府は、在沖米軍に対し、抗議を行うとともに、再発防止策の策定を申し入れるべきであると考える。政府は既に過去二十年で最多となったことを受けて申入れを行ったのであれば、誰に対して、いつ、どのような経路で申入れを行ったのか、それぞれ明らかにされたい。
三 このような状況において、二〇二三年十二月に、米空軍兵長が十六歳未満の少女を連れ去り、性的暴行を加えたとして、二〇二四年三月にわいせつ目的誘拐及び不同意性交等罪で起訴されていた。また、同年五月には、新たな米兵による女性暴行事件が発生しており、いずれの事件も同年六月に相次いで報道され、沖縄県議会及び各市町村議会において抗議決議を可決している。しかし、米兵による事件はこれにとどまらず、同年十一月に新たな性的暴行事件が発生した。当該事件について、二〇二五年一月二十三日の衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会において、宮路拓馬外務副大臣は、これまでに米側が発表した一連の再発防止策が実際に事件、事故の再発防止につながることだと考えている旨答弁を行い、米側の取組を評価した。
1 現に米兵による性的暴行事件の再発を止めることができていないが、米側が発表した一連の再発防止策は履行されているか、把握しているのであればそれぞれの履行状況を示されたい。
2 米側が発表した一連の再発防止策について、どのような効果が得られたか、政府の認識を具体的に示されたい。
四 相次ぐ米兵による少女・女性に対する暴行事件は、人権と尊厳を踏みにじるものであり断じて容認できるものではない。また、質問二で言及した二〇二三年十二月に発生した事件については、関係機関等への迅速な情報伝達や市民・県民への公表が遅れたことに対しても疑問を呈さざるを得ないと考える。二〇二四年七月三十日の衆議院安全保障委員会において、上川陽子外務大臣(当時)は、日本側関係機関内における情報共有について、外務省としても、当該事案は捜査当局から非公表の事案であるとして共有を受けたものであるため、外務省事務方にて対応をし、防衛省に対して情報を提供することはしなかった旨の答弁を行うとともに、外務省が防衛省に情報共有を行わなかった対応については、個別具体的な事案の内容に応じて適切に判断された対応であった旨の答弁を行った。
1 一九九七年に日米両政府が合意した在日米軍に係る事件・事故発生時における通報手続について、日米合意に従わない判断について、事務方が大臣を含む政務三役に相談なく行った理由及び経緯をそれぞれ伺いたい。
2 日本側が一方的に通報手続及び情報共有の仕組みの変更を行うことは認められているのか。
3 個人情報を伏せれば問題は起きないにもかかわらず、通報手続を使わないことを優先した理由について、詳細に示されたい。
4 米側に通報手続及び情報共有の仕組みについて、確認したのであれば、いつ、どこで、誰が、誰に対して変更を確認したのか、詳細を示されたい。
五 二〇二三年十一月二十九日に、米軍の岩国基地(山口県)から嘉手納基地(沖縄県)へ飛行中のオスプレイ一機が屋久島沖合に墜落し、乗組員八名全員が犠牲となった。この墜落事故は、一歩間違えれば住民を巻き込む大惨事となる可能性もあり、沖縄県議会及び各市町村議会において飛行停止を求める意見書及び抗議決議を可決している。二〇二四年十二月十七日の参議院外交防衛委員会において、防衛省の政府参考人は、米軍作成の事故報告書を引用し、プロップローター・ギアボックス内のハイスピード・ピニオンギアの一つにひびが入ったことについて、二次的な損傷により初期破損の痕跡が不明瞭になったことから、正確な根本原因を特定することはできなかったとしながら、一連の事故の状況や原因については同報告書の中で明らかになっている、また、米側からは機体の構造上の問題ではないとの説明を受けている旨の答弁を行った。
1 根本原因が特定できていないにもかかわらず、オスプレイが安全に運用できるとする根拠を示されたい。
2 事故原因の究明に取り組むことで、今後も安全性を確保する考えはないか、政府の見解を示されたい。
六 環境や人体に影響を及ぼす可能性が指摘されている高濃度の有機フッ素化合物(PFAS)が米軍基地周辺の井戸や地下水から検出されているものの、米軍の同意を得られない場合には、基地内の立入調査ができず原因が特定できないため、根本的な解決に至っていない。基地周辺においてPFASが検出されたとき、汚染源の特定や除染対策等に関する責任を負う府省庁はどこになるか、府省庁及び課の名称を示されたい。
七 日米地位協定は一九六〇年の締結以降一度も改定されていない。課題山積の現状を考慮すると、政府がこれまでに行ってきた運用改善ではなく、より進んだ別の対応が必要とされていると考える。沖縄県作成の調査資料によれば、外国軍の対米国地位協定では補足協定等の改定に成功した国も少なくない。それらの改定の成功事例について、我が国も調査研究を行い、知見を積み重ね、将来的な日米地位協定の改定対象となる論点を整理する必要はないか、政府の見解を示されたい。
八 政府においては、沖縄県民の生命・財産及び人権を守る立場から「日米地位協定の抜本的な改定」を、そして、同県民の切実な要望に応えるため「沖縄の基地負担軽減」を米側に粘り強く提案していくべきと考えるが、政府の考えを示されたい。
右質問する。