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令和七年四月二十三日提出
質問第一六四号

日本の成人向け映像コンテンツによる外貨獲得の機会損失と海賊版対策に関する質問主意書

提出者  八幡 愛




日本の成人向け映像コンテンツによる外貨獲得の機会損失と海賊版対策に関する質問主意書


 日本の成人向け映像コンテンツ(以下「AVコンテンツ」という)は、国際的に高い需要を有し、映像・メディア産業の一分野として確固たる市場を形成していると考える。
 AVコンテンツの制作に当たっては、出演者の意思および人格的尊厳が最大限に尊重されることが当然の前提であり、これを欠くことは決して許されるものではないと考える。その一方で、日本と諸外国との文化交流の架け橋として国際的な知名度を獲得し、いわゆる「民間外交」に寄与したと評価される事例も見受けられる。
 さらに、中国発の世界的ベストセラー小説「三体」において、重要なモチーフのひとつのモデルが日本のAVコンテンツに出演する女優であるとされる事実は、AVコンテンツが単なる性的消費物にとどまらず、国境や文化圏を超えたポップカルチャーの構成要素として認知されていることを象徴的に示していると考える。
 また、AVコンテンツへの出演を自己決定の一形態として受け止め、自らの性を積極的に表現する女優たちも一定数存在することは看過すべきではなく、彼女たちの主体性や多様な価値観に対して偏見をもって接することなく、慎重な配慮が求められると考える。
 しかしながら、制度的・社会的制約のもと、AVコンテンツは他の映像作品に比して、正規の輸出支援や公的支援の対象として十分に扱われてこなかった現実があると考える。
 その結果、海外においては、日本のAVコンテンツが海賊版サイト、いわゆるP2Pネットワーク、動画共有プラットフォーム等を通じて大量に違法流通しており、民間調査によれば二〇一〇年以降において数十億回以上の無許可視聴が発生したとの推計もある。これらがすべて正規のダウンロード販売に転化されていた場合には、数兆円規模の外貨収入が我が国にもたらされた可能性があると考える。
 さらに、二〇二二年に施行されたいわゆるAV新法により、制作プロセスの制約や契約解除制度の導入が制作現場に影響を与え、国内での制作本数や海外流通の停滞を招いたとの指摘もある。こうした状況がAVコンテンツのいわゆる地下経済化の拡大を引き起こすとともに、外貨獲得機会の喪失につながっていると考える。
 加えて、政府の進めるコンテンツ海外展開促進・基盤強化事業費補助金(J−LOD)や株式会社海外需要開拓支援機構を通じた支援策等においても、AVコンテンツはその対象から除外されており、知的財産戦略および通商政策の枠組みにおいても、実効性ある保護や支援の体制が未だ整備されていないのが現状であると考える。
 このような制度的空白の放置は、我が国の正規産業として存在する当該分野に対する国際的違法流通の拡大を許容するばかりか、著作権侵害の蔓延や出演者の人格的権利の侵害を黙認することにもつながりかねないと考える。
 これらの問題意識に鑑み、以下の事項について政府に質問する。

一 国際市場における海賊版視聴と経済的影響の定量評価
 1 政府は、日本のAVコンテンツが海外で違法配信・視聴されている件数および被害額を独自に調査・推計しているか。行っている場合は年度別の件数・被害額についてそれぞれ可能な限り明示されたい。
 2 政府は、仮にAVコンテンツの違法視聴分が海外において正規販売で流通していれば、日本にどれだけの外貨収入がもたらされたかを試算しているか。していない場合、将来的な外貨収入の試算を行う考えがあるか。
 3 一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構などが行う試算にAVコンテンツが含まれているか。含まれていない場合、その理由および今後の取扱方針について、政府の把握するところを示されたい。
 4 AV新法施行以降、AVコンテンツの国内制作数および海外配信数が減少しているとの報告があるが、政府は市場の変化をどのように把握しているか。
二 国際的な著作権侵害対策および外交的対応
 1 政府は、中国、韓国、米国、EU、ASEAN諸国などにおけるAVコンテンツの違法視聴件数および流通経路(Torrent、SNS、ストリーミングサイトなど)を国別にどの程度把握しているか、それぞれ可能な限り示されたい。
 2 海外Webサービスを提供する企業であるFC2やJAVLIBRARYなど、著作権者の許諾を得ずに日本のAVコンテンツを継続的に配信している、いわゆる無許諾配信サイトに対し、政府としてこれまでに、外交ルートによる照会・抗議、運営主体国へのサイトの削除・閉鎖要請、警察・関係機関による捜査支援や情報提供、著作権者による通報活動に対する支援(翻訳・法的アドバイス・連携窓口の設置など)を行った実績があるかを示した上で、当該サイトの多くが海外サーバを利用し、実態が不明確である現状を踏まえ、今後、知的財産戦略本部・文化庁・外務省・警察庁・総務省等が連携して、海外の無許諾配信サイトの排除に向けた包括的戦略(サイトブロッキング、国際協力、いわゆるテイクダウン手続支援、制裁的措置など)を策定・実施する方針があるか示されたい。
 3 海外に拠点を置くユーザー投稿型のポルノプラットフォーム(PornhubやXVideos等)において、日本のAVコンテンツが無許諾でアップロードされる事例が後を絶たない。こうしたプラットフォーム事業者と、知的財産保護を目的とする包括的な協力枠組み(Trusted Notifier制度の構築等)を整備・支援する方針があるか。方針がある場合、今後の検討状況を示されたい。
 4 WTO、WIPO、TPP、EPA等の国際枠組みにおいて、AVコンテンツを知的財産保護の対象とし得るか。対象とし得る場合、交渉方針と可能性をそれぞれ明らかにされたい。
三 出演者による削除請求の支援体制の構築
 1 AV新法により出演契約が解除されたAVコンテンツが海外で違法流通している場合、出演者が人格権を根拠として当該AVコンテンツの削除請求を行う法的手段と、実効性の確保についての政府の考えと、出演者が海外の動画共有サイトにAVコンテンツの削除要請を行う際、政府として翻訳支援、法的支援、削除代理制度などを用意するなどの今後の整備方針をそれぞれ示されたい。
 2 削除要請に係るAVコンテンツの追跡・監視・自動検出のため、政府はコンテンツIDシステムなどの識別技術の活用を支援する意思はあるか。意思がある場合は、今後、民間プラットフォームとの協定を締結する考えはあるか。
四 海賊版対策の制度的整備および正規制作事業者への政策支援
 1 国際市場におけるAVコンテンツの海賊版視聴の影響について、政府はAVコンテンツの事業者、出演者、制作スタッフへのヒアリングや調査を行っているか。行っているならば、どの程度の規模で実施されたかを明示されたい。
 2 正規のAVコンテンツ制作・配信事業者に対する海外展開支援を実施する考えはあるか。
 3 匿名投稿・個人制作等の非正規流通が拡大する中、正規流通を制度的に支えるための認定制度・いわゆるホワイトリスト制度などを導入する考えはあるか。
 4 翻訳、字幕、多国籍法令遵守等を含む国際流通支援において、官民連携による持続可能な支援スキームを構築する意思があるか。
五 産業政策における位置づけ
 1 AVコンテンツが産業政策の枠外とされたままの現状が、地下経済化や違法流通の温床となっているとの批判に対し、政府の認識と対策をそれぞれ示された上で、AVコンテンツを映像・メディア産業の一部として正式に産業政策の枠内に位置づける方針があるか、政府の見解を示されたい。
 2 宗教的・倫理的制約のある国においても合法的にアクセス可能な技術的仕組み(いわゆるVPN配信、地域別アクセス制御、認証販売など)の導入支援について、政府の考えを示されたい。
 3 AVコンテンツをJ−LODや海外需要開拓支援機構を通じた支援の対象とする可能性と、その是非について、それぞれ政府の見解を示されたい。
六 横断的・包括的な政策統合に関する方針
 1 政府として、AVコンテンツに関わる著作権保護、外交政策、産業振興、労働政策を統合した横断的政策パッケージの策定および正規のAVコンテンツ保護と出演者救済の両立を図る海賊版対策のガイドラインの策定をそれぞれ行う意思があるか。
 2 産業政策の枠外に置かれてきたAVコンテンツ産業を、表現の自由と人権、経済合理性のバランスの中で持続可能な国際流通モデルとして再構築する意思があるか。
 
 右質問する。

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