質問本文情報
令和七年五月九日提出質問第一七九号
日台民間漁業取決め及び日中漁業協定の見直し等に関する質問主意書
提出者 屋良朝博
日台民間漁業取決め及び日中漁業協定の見直し等に関する質問主意書
二〇一三年に署名され発効した、いわゆる日台民間漁業取決めは、沖縄県漁業者の頭越しに締結されたものであり、沖縄県の漁業者は、台湾漁船とのトラブルに不安を抱えながら操業している状況が続いている。特に八重山北方三角水域においては、現在に至るまで台湾漁船の漁具流出や台湾側のルール違反が確認されており、漁業者が不本意に操業を自粛せざるを得ない事態も生じていると承知している。
このような中、日台民間漁業取決め適用水域(以下「適用水域」という。)において日本の漁場を維持確保することは、国益を守る観点からも非常に重要である。また、政府は、適用水域等において外国漁船により影響を受けている沖縄県の漁業者の経営安定・被害救済のための対策を基金(以下「沖縄漁業基金」という。)により支援しているが、沖縄漁業基金によって外国漁船の監視等を維持・強化する必要があると考える。
また、一九九七年に署名され、二〇〇〇年に発効したいわゆる日中漁業協定は、北緯二十七度以南を協定の適用除外水域とするとともに、当時の書簡により、中国漁船による違法操業等が行われた場合であっても取締りができない内容となっている。
沖縄県の漁業者は、頻繁に起きている中国海警局の船舶による日本の接続水域・領海内の航行、沖縄県周辺水域でいわゆる虎網を操業する中国漁船の進出や中国サンゴ網漁業の再発に対して強い危機感を抱いていると承知している。特に二〇二〇年五月以降、尖閣諸島周辺水域で中国海警局の船舶が沖縄県漁船を追尾する事案が頻繁に起こっている。さらに、二〇二一年には中国において「海警法」が成立し、同年施行され、その結果中国海警局の武器使用が認められたことは、地域の漁業者に大きな脅威を与えていると考える。
頻発する中国海警局の船舶による沖縄県漁船に対する威嚇行為等は、不測の事態を招くおそれをはらんでおり、このような状況を早急に改善する必要があると考える。
これらを踏まえ、沖縄県漁業者の権益を確保するとともに、沖縄周辺水域の水産資源を適切に管理する必要から、以下質問する。
一 日台民間漁業取決め関係
適用水域はマグロ等の好漁場であり、日台双方の漁船が操業しているが、一部の漁場において我が国漁船の円滑な操業に支障が生じており、その解消等のため、同取決めに基づき設置された日台漁業委員会において、日台双方の漁船が漁場を公平に利用するため、操業ルールの改善等に向けた協議が続けられている。二〇二五年一月に開催された同委員会第十一回会合では、適用水域で日台双方の漁業者が遵守すべき操業ルールを見直すことで一致したとされている。
1 日台民間漁業取決めの締結以降の実情を踏まえて、東シナ海における平和及び安定を維持し、友好及び互恵協力を推進し、排他的経済水域の海洋生物資源の保存及び合理的な利用並びに操業秩序の維持を図るために、適用水域から@東経百二十五度三十分より東側の水域及びA台湾が主張する暫定執法線より南側の水域を撤廃する必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。なお、両水域の撤廃が困難であると政府が考える場合はその理由についても示されたい。
2 適用水域以外で、地理的中間線から東側の水域においては、台湾漁船の操業を一切認めないこととする必要があり、違反操業を行う台湾漁船に対しては、拿捕を含む厳格な取締りを徹底する必要があると考える。これらの必要性についての政府の認識とともに、具体的な対応策について示されたい。
3 先島諸島の南側及び沖ノ鳥島周辺水域等について、今後一切操業ルールの見直しに向けた協議の対象とすべきでないと考えるが、政府の見解を示されたい。
4 適用水域内において沖縄県漁船が安心して操業できるよう、操業ルールの更なる改善とともに、安全対策の強化を図る必要があると考える。政府による現行の安全対策の内容とともに、今後の対策強化の方向性について示されたい。
5 1から4に係る日台漁業委員会におけるこれまでの議論の内容について、政府の把握するところを可能な限り示されたい。なお、二〇二五年一月に合意された操業ルールの見直しの具体的な内容についても示されたい。
6 沖縄漁業基金による事業は、その柱である外国漁船操業等・調査監視事業の実施を通じて、沖縄県周辺の広大な水域の権益確保に大きく貢献しているほか、操業安全対策事業を始めとする各種助成事業の実施により、漁業者の安全操業や経営安定に大きな役割を果たしている。しかしながら、沖縄漁業基金に係る予算措置は、二〇二四年度においても補正予算として措置されるにとどまっている。今後も長期化が予想される日台民間漁業取決めに係る協議や適用水域・周辺水域における影響を踏まえれば、予算規模を拡充するとともに、安定的かつ継続的な予算措置が必要であると考える。二〇二五年度以降の沖縄漁業基金に係る予算規模及び予算措置の在り方について、政府の見解をそれぞれ示されたい。
7 いわゆるスマート漁業の進展など、近年の漁業を取り巻く情勢・需要を踏まえて、これらに柔軟に対応して事業を実施できるよう、沖縄漁業基金について運用改善を図る必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。
二 日中漁業協定関係
我が国と中国との間では、日中漁業協定に基づき、相互入漁の条件や東シナ海の一部に設定された暫定措置水域等における資源管理等について継続的な協議が行われていると承知している。
1 北緯二十七度以南の水域において中国漁船の操業を規制できるようにするためには、一九九七年当時の書簡を破棄するとともに、日中漁業協定第六条を見直す必要があると考えるが、政府の見解を示されたい。なお、書簡の破棄及び同協定第六条の見直しが困難であると政府が考える場合はその理由についても示されたい。
2 中国国内法においても禁止されているサンゴ網漁業については、日中漁業協定の見直しまでの間、実質的な取締りが可能となる体制を構築する必要があると考える。当該サンゴ網漁業に対する日本政府による現行の対応とともに、同協定見直しまでの実質的な取締りに向けた政府の対応について示したうえで、中国政府の対応について、政府が把握するところを示されたい。
3 中国サンゴ網漁船を始め違法操業を行う外国漁船に対する取締りを徹底するとともに、中国海警局の船舶による威圧行為等を排除し、我が国漁船の安全操業の確保に向けた体制の強化を図る必要があると考える。これらに係る現行の対策・体制の評価とともに、今後の対策・体制強化の方向性についてそれぞれ示されたい。
4 1から3に係る我が国と中国との間での協議におけるこれまでの議論の内容について可能な限り示されたい。
右質問する。