質問本文情報
令和七年五月二十二日提出質問第一九九号
動物実験制度の透明性と国際的整合性に関する質問主意書
提出者 杉村慎治
動物実験制度の透明性と国際的整合性に関する質問主意書
近年、欧州連合(EU)や経済協力開発機構(OECD)加盟国をはじめとする諸外国では、動物実験に関する制度整備と倫理的再設計が進んでいる。これには、代替技術の導入促進、苦痛度分類に基づく報告制度、第三者による倫理審査、研究者・技術者への倫理教育の義務化、並びに制度全体の透明化が含まれており、動物福祉の向上と科学的信頼性の両立を目指す取組が制度レベルでなされていると考える。
一方、我が国では、動物実験の実施基準や倫理審査の体制が各研究機関の自主運用に委ねられているため、制度の実効性、国際的整合性、説明責任の確保等において課題があるとの指摘が相次いでいると承知している。また、実験動物の苦痛軽減や代替技術の導入に対する法的義務が存在せず、外部からの検証可能性や国民参加の仕組みも限定的であると考える。
さらに、動物実験の科学的再現性に対する懸念や、研究成果の国際標準化の遅れ、災害時の実験動物への対応の欠如といった実務上のギャップも浮き彫りとなっていると考える。制度的・倫理的・技術的な側面からの包括的な再検討が求められると同時に、動物実験の在り方そのものに対する国民の認識や価値観の変化も加味した制度設計が求められると考える。
これらを踏まえ、以下の事項について質問する。
一 動物実験情報の公開と実験評価制度の整備について
1 動物実験の実施件数、使用動物種、苦痛度分類、代替措置の有無などについて、国内で統一された登録・報告・公開制度を整備する方針を示した上で、公開された動物実験の計画に対する外部からの評価制度(第三者による事後レビュー等)を義務付ける考えがあるか。
2 実験計画の事前登録制度および研究成果との連動による動物実験の追跡可能性の確保について、我が国における導入の可否と課題を政府としてそれぞれどのように認識しているか。
二 倫理審査制度の透明性の確保と外部検証体制の導入について
1 動物実験に関する倫理委員会の開催記録、審査基準、審査結果の要旨等について、原則公開とする制度設計を検討しているか。
2 現行の機関ごとの倫理審査に加え、外部有識者や国民代表を含む独立した第三者審査機関を制度化する考えがあるか。
三 代替技術導入義務と実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(平成十八年環境省告示第八十八号(平成二十五年最終改正))における実験動物の定義の見直しについて
1 EUやOECDで導入されているように、代替技術が存在する場合の動物使用を原則禁止とする制度を検討しているか。
2 同基準における実験動物について、国際的整合性を図る観点から定義の明確化と魚類・無脊椎動物等への保護対象の拡大を検討しているか。
四 動物実験の代替技術に対する政府支援の強化について
1 代替技術に対する開発支援基金、臓器チップやシミュレーション技術等の標準化・実装センターおよび民間企業・大学・行政の共同研究拠点について、支援制度を整備する考えがあるか。
2 中小企業や化粧品・化学産業における代替技術導入の初期コストに対する補助制度を検討しているか。
五 研究者・技術者に対する教育訓練制度の義務化について
1 動物実験に従事する研究者・技術者・学生に対し、倫理・技術・動物福祉に関する教育訓練制度を義務付ける考えがあるか。
2 資格制度や更新時の教育の導入によって、動物実験の質の均質化と制度的信頼性を高める方針があるか。
六 国民参加と制度的ガバナンスの強化について
意見公募、監視委員会の設置、国民代表(動物愛護団体、生命倫理研究者、産業界等を含む多様な関係者)の参画などを通じて、国民の倫理的懸念を制度的に反映させる、対話型政策形成を推進するための仕組みを整備する考えがあるか。
七 災害時の実験動物の取扱いについて
実験施設における災害時の動物避難や管理体制について、法的・制度的な整備を行う考えがあるか。
八 動物に対する国民意識の変化と教育政策との整合性について
1 家庭動物(ペット)を「家族の一員」とし、動物の感情や苦痛への理解が進展している国民意識の広がりを踏まえ、実験動物との制度的ギャップについて国民的対話の場を設ける考えがあるか。
2 小中学校や高校において命の尊重を教える教育が推進されている一方で、教育機関における動物実験の実施との整合性をどのように捉えているか。
九 動物実験に関する制度全体の方向性と政府の基本認識について
1 科学的信頼性・倫理的正当性・社会的説明責任を原則とする制度設計を中長期的に構築するための具体的なロードマップを策定する考えがあるか。
2 関係府省庁が連携し、統一的な施策として動物実験制度の再構築に取り組む方針があるか。
右質問する。