質問本文情報
令和七年六月二日提出質問第二一二号
大学受験と入学金に関する質問主意書
提出者 井坂信彦
大学受験と入学金に関する質問主意書
二〇一六年度の大学入試から、私立大学の入学定員管理が厳格化された。入学者数が超過した場合は国からの補助金がカットされるため、各私立大学は、以前のように辞退者が出ることを前提として定員を超えた合格者を出すことを控えるようになった。確かに、定員をはるかに超える合格者を出し、辞退者が少なければ定員を超えて入学させるという運営に対しては、「学生に対して提供する教育の質と、徴収する学費と見合っているのか」という批判もあったと承知している。その代わりに、私立大学は補欠などの発表をせず、辞退者が出るたびに少しずつ追加の繰上げ合格を発表するなどし、年度末までに入学者数を調整するようになった。
第一希望の合格が第一次合格発表で叶わなかった受験生の側からすると、この大学の選考方法に対応するパターンは二つある。一つは、第二次合格、第三次合格と追加の繰上げ合格の発表が終わるまで待ち続けることである。合否が確定するまで状況によっては三月下旬まで待たなければならない。その間に、第二希望、第三希望などで合格が出た場合は、合格した学校の入学手続をしておきながら第一希望の結果を待つことになる。もし希望上位校の合格が出ると、先に入学手続をした学校の入学権利を辞退し、既に支払った入学金は返ってこない。最高裁の判例でも、入学金は返還する必要がないとされている。大学側が、繰上げ合格を少しずつ何回も発表することで、受験生側は二校、三校と入学金を放棄することもあり得る。有志の若者団体である入学金調査プロジェクトが調査の結果を本年一月二十二日に発表したものによると、調査に回答した大学生のうち二十七%が入学金の二重払いを経験したと回答した。
もう一つのパターンは、第二期試験、第三期試験と日程が合う学校学部を追加受験することである。第一希望の結果を待つ間に、同校や他の学校の第二期試験、第三期試験を受けるわけだが、当然追加の受験費用が発生する。せっかく追加受験をしたのに、第一希望が後から繰上げ合格となれば、この受験費用は全くの無駄となる。同プロジェクトの調査によると、受験にかかる費用を考慮した結果、本当は出願したかったものの出願を諦めたと回答した割合は、私立大学の一般入試で二十五・六%に上ったという。
このように、政府によって私立大学の定数管理厳格化が進んだことで、受験生や保護者の費用負担が増加しているおそれがある。このやり方が続けば、親の経済格差によって行きたい大学に行けない、試験を受けられないということが起こる可能性があることから、政府に質問する。
一 私立大学の合格を辞退した際の、返還されない入学金について、年間で何人の受験生がいくら負担しているのか、どの大学が入学しない受験生からいくら入学金収入を得ているのか、政府はそれぞれの実態を把握しているか伺う。
二 入学を辞退した場合、先払いした学費は全額返還されるが、入学金については返還しない大学が多いと承知している。例えば、入学金についても半分は返金したり、返還されない入学金の額に上限を設けるなど、規制をすることは考えられないか、政府の見解を伺う。
三 文部科学省の調査によると、入学金は私立大学で平均約二十四万円と言われている。辞退する学校が一校とは限らず、二校、三校という場合もあり、数十万円を浪費することになってしまうと考える。辞退することで返金されない入学金について、奨学金の対象とする、もしくは無金利で貸し付けるなどの支援をすることはできないか、政府の見解を伺う。
四 私立大学の受験料は、三万円から四万円が一般的となっている。某予備校の調査では、私立大学を一般選考で受験する場合、一人当たり平均で四校程度受験しており、受験生は十万円から二十万円程度の受験料を払っていると承知している。更に第二期、第三期と試験回数を増やすと、受験費用がかさんでしまう。受験費用について、奨学金の対象とする、もしくは無金利で貸し付けるなどの支援をすることはできないか、政府の見解を伺う。
五 私立大学の医学部は一般的に受験料が六万円程度、入学金は百万円から二百万円となっており、入学辞退をした時の費用負担が大きい。家庭に数百万円の蓄えがないと受験すらできないというのが実情であると考える。
1 医学部の受験料や返還されない入学金について、奨学金の対象とする、もしくは無金利で貸し付けるなどの支援をすることはできないか、政府の見解を伺う。
2 医学部の入学金については特に金額が大きいので、返金規定を設けることや、返金されない入学金に上限を設ける必要があると考えるが、政府の見解を伺う。
六 第四次合格発表が三月二十九日など、年度末ぎりぎりに設定されている学校もある。四月一日の入学に対して準備期間があまりにも短い。地方の学生などは、転居が間に合わず、希望の学校の繰上げ合格を待つことができずに断念することが発生していると承知している。合格発表の最終期限、入学までの期間の確保など、大学に対して指導する必要があるのではないかと考えるが、政府の見解を伺う。
七 私立中学、私立高校の受験においても同様に返還されない入学金の問題がある。大学受験と同様に問題として認識し対応を検討すべきと考えるが、政府の見解を伺う。
右質問する。