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令和七年六月三日提出質問第二一六号
再審請求審における審理決定が適正・公正かつ迅速に行われるための制度改正・方策としての裁判員制度導入に関する質問主意書
提出者 河村たかし
再審請求審における審理決定が適正・公正かつ迅速に行われるための制度改正・方策としての裁判員制度導入に関する質問主意書
昨年九月、いわゆる袴田事件とよばれる一家四人の強盗殺人事件で、静岡地方裁判所は、「五点の犯行着衣」等、三つの証拠について「捜査機関による証拠捏造」を認定した上で、死刑が確定していた袴田巌さん(八十八歳)に再審無罪判決を下した。死刑確定から実に四十四年、逮捕から実に五十八年の年月を経た後の冤罪確定である。
報道などによると、現在、政府では再審制度の見直しが検討されている。
しかしその議論を見ると、いわゆる開かずの扉とされている「再審開始決定を阻む、高くて厚い「壁」を生み出した根本原因は何か」(例えば、再審事件を扱う裁判官・検察官に、過去の司法の過ちを認めたくない、といった同業者意識・組織防衛の意識はないか。)という問題認識・問題意識が不十分であるように思われる。
再審手続も刑事手続である以上、国民の司法参加により市民が持つ日常感覚や常識といったものを裁判に反映するとともに、司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上を図ることを目的とする裁判員制度を再審手続にも導入することが検討されてしかるべきではないかと考える。
一 現行の刑事訴訟法では、再審制度は、再審請求審(第四百三十九条第一項)と、いわゆる再審審(同第四百五十一条第一項)との二重構造になっている。また、再審請求審は原判決を下した裁判所が管轄・審理する(同第四百三十八条)。この点、現行制度では、特に第一審判決が確定している重大事件の場合、地方裁判所所属で、経験が浅い左陪席裁判官が、他の事件(合議事件)を手掛けながら、短期間で、再審請求審の審理も担当することになり、それが再審の遅延の一因であると考える。そこで、再審開始をするか否か、再審請求審の判断を経験豊富な元高裁部総括判事、司法研修所での刑事裁判教官や刑事弁護教官の経験があるなど、法曹資格者で構成された合議体を専属管轄として、その審理を当該合議体に委ねるという制度設計はできないものか、政府の見解を問う。
二 現行の再審制度での二重構造を前提とした場合、再審審の手続については、裁判員制度を導入することが適切であると考えている。過去に再審が認められているのは、証拠隠しなどの不当捜査や、社会常識から外れた刑事裁判官による誤判による冤罪事件であると認識している。その再審理に当たる担当裁判官は、自身の所属する裁判所が一度下した判断について審理することになるが、その判断を否定、批判する側面があり、心理的な負担が過重にかかることは容易に想像できる。したがって、再審制度においてこそ、国民の日常感覚や常識を反映させるべきではないかと考える。そうすることで、裁判の公正を担保するといったメリットも期待できる。再審審(あるいは、再審請求審)における裁判員制度の導入といった制度設計の可能性及びその条件について、それぞれ政府の見解を問う。
右質問する。