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令和七年六月四日提出
質問第二一九号

日本の漫画家・アニメーターによる原画や資料等の中間生成物等の海外流出と文化的資産の保全に関する質問主意書

提出者  杉村慎治




日本の漫画家・アニメーターによる原画や資料等の中間生成物等の海外流出と文化的資産の保全に関する質問主意書


 日本の漫画家やアニメーターによる原画、セル画、スケッチ、設定資料等(以下、「中間生成物等」という。)が、海外のオークションサイトや現地業者を通じて継続的に流通している。こうした資料は、創作過程を示す一次資料であり、我が国の文化力・表現技術の記録として、単なる私的財産にとどまらない文化的・経済的意義を持つものと考える。
 かつて、我が国において浮世絵や版本などの貴重な文化資料が正当な価値評価を受けず、海外に流出し、結果として日本文化の象徴が他国の博物館や美術館で保存されるという事態が生じたことは、歴史的な教訓である。現代においても、漫画やアニメといった我が国を代表する創作分野における文化資産が、制度的裏付けのないまま海外へ流出することは、文化的損失であると同時に、将来の外交資源・教育資源・経済資源としての活用機会を失うという国益の逸失にもつながると考える。
 しかし、現在の制度においては、当該資料の大半が文化財としての指定を受けておらず、また寄贈先や保存機関も限られており、結果として海外へ流出せざるを得ない事例が続出していると承知している。さらに、海賊版との混同や生成AI等を用いた偽造画像の氾濫によって真正性の判別が困難となり、文化的混乱や誤認被害の温床ともなり得る現状は、外交戦略・文化政策・知財政策の観点からも軽視し得ないと考える。
 よって以下の事項について政府に質問する。

一 日本の漫画家やアニメーターによる中間生成物等のうち、過去十年間で海外へ流出したと政府が把握している事例数及びそれに関連する市場規模・国・取引媒体の統計が存在するか否かを明らかにされたい。存在する場合は可能な限りその数値を、存在しない場合は把握が不可能な理由を具体的に説明されたい。
二 これらの中間生成物等について、政府として「創作過程の記録であり文化資産である」という認識を有しているか。有しているのであれば、文化庁が文化財保護法の対象外とする現行の判断基準との整合性も含めて、政府の認識とその理由を示されたい。
三 文化庁等が所管する文化財保護制度や美術館・博物館ネットワークにおいて、中間生成物等を収集・保存・展示する取組はどの程度行われているか、過去十年間における収蔵件数、予算規模、公開状況及び資料の選定基準を含めて、政府の把握する事実を可能な限り示されたい。
四 中間生成物等について、一定額以上の取引や海外持ち出しの際には文化庁への届出や事前審査を必要とする制度を新設することについて、政府としての検討状況と、文化財保護法や関税法、外国為替及び外国貿易法との整合性を含めた見解をそれぞれ示されたい。
五 メディア芸術ナショナルセンター(仮称)の整備等をはじめとする、漫画やアニメに関する中間生成物等の文化資産を、分野横断的かつ体系的に国が主導して収集・保全することに係る政府としての取組状況を示されたい。
六 中間生成物等のデジタルアーカイブ化について、著作権処理、プライバシー、データ保管等の観点から課題があるとすれば、その主な論点と、政府が現時点で行っている対応策・支援制度の有無をそれぞれ明確にされたい。
七 生成AI等を用いて中間生成物等を模倣・偽造した画像が、真正な資料と混同される形で市場流通する事例が確認されているが、政府はこれを知的財産の毀損又は文化的混乱とみなすか否か。また、生成物の偽造防止、真正性担保、流通管理等に関して政府が把握している現状と、今後の対策の方向性をそれぞれ示されたい。
八 漫画家やアニメーター又はその遺族等が、中間生成物等を公共機関に寄贈したいと希望した場合の受入れ体制(国・自治体・博物館等)の整備状況及び寄贈に対する税制優遇措置・補助制度の有無をそれぞれ説明されたい。
九 クリエイター本人やその関係者が、中間生成物等を意図せずに第三者に処分され、海外に流出することを防ぐため、契約・法的リテラシー支援、業界ガイドライン策定、相談窓口等の支援体制を整備する考えがあるか、政府の方針を示されたい。
 
 右質問する。

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