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令和七年六月十二日提出質問第二六二号
国際連合憲章における敵国条項の撤廃に関する質問主意書
提出者 松原 仁
国際連合憲章における敵国条項の撤廃に関する質問主意書
国際連合(国連)憲章第五十三条、第七十七条及び第百七条には、いわゆる「敵国条項」と称される規定が存在している。これらの条項は、第二次世界大戦において連合国と敵対した国、すなわち「旧枢軸国」に該当する日本、ドイツ、イタリアなどを対象とし、安全保障理事会の制裁決議を要することなく、旧連合国による強制措置の容認を示唆する内容を含んでいる。
戦後八十年を迎え、国際社会の中で平和国家としての歩みを着実に進めてきた日本が、依然として「敵国」の地位に置かれている状況は、日本国民の誇りを傷つけ、法的にも政治的にも極めて異常である。これこそ、国際社会において、与えられた使命を果たし得ていない国連改革の象徴的課題といえる。
また、同様に敵国条項の対象とされてきたドイツにおいても、条項の撤廃に対する関心と努力が継続されており、欧州連合の諸国とも連携しながら国連憲章改正の必要性を国際社会に訴えている。
二〇〇五年には日本、ドイツ、イタリアを含むG4諸国が常任理事国入りと併せて敵国条項の撤廃を含む憲章改正案を国連に提出しており、当該課題が長年未解決のまま放置されていることは、国連の正当性にも影響を与えていると考える。
そこで、次のとおり質問する。
一 国際連合憲章第五十三条、第七十七条及び第百七条に規定される、いわゆる敵国条項について、政府として現在どのような認識を有しているか明らかにされたい。特に、日本を「敵国」と規定することの法的・国際的整合性について、政府の公式見解を示されたい。
二 日本政府は、戦後八十年を迎えたなかで、敵国条項の撤廃に向けて国際社会において主導的な役割を果たすべきと考えるが、これについていかなる外交方針を有しているか。
三 前問に関連し、過去に日本政府が敵国条項の撤廃に向けて国連に対し具体的に行った提案や、他国との連携による動きがあれば、その内容と経過をそれぞれ明らかにされたい。
四 敵国条項の撤廃には国際連合憲章の改正が必要となるところ、現行の国際連合憲章において、憲章改正には安保理常任理事国五か国を含む加盟国三分の二の批准が必要である。政府は各常任理事国に対し本件についての説明や折衝を行ってきた経緯はあるか。ある場合、各国の考え方について政府の承知するところをそれぞれ明らかにされたい。
五 ドイツをはじめとする他の敵国条項の対象国が、当該条項の撤廃に向けてどのような外交的努力を行っているか、政府として把握している情報があれば明らかにされた上で、それらの国々との連携の可能性について、政府の見解如何。
六 国際社会において、いまだ敵国条項が形式的であるとしても存置されていることが、日本の常任理事国入りを含む国際的地位向上の妨げとなるとの意見もあるが、政府の見解如何。
右質問する。