衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
令和七年六月十二日提出
質問第二六四号

戦没者遺族への援護に関する質問主意書

提出者  松原 仁




戦没者遺族への援護に関する質問主意書


 本職は令和三年十二月十六日、「戦没者等の遺族に対する特別弔慰金に関する質問主意書」(第二百七回国会質問第三四号。以下「前回主意書」という。)を提出し、異常ともいえる事務処理の遅れを改善するよう求めたところ、「今後とも特別弔慰金の請求手続に関する事務処理の迅速化を図ってまいりたい。」とする答弁書(内閣衆質二〇七第三四号)を受領した。ところが、令和七年四月一日を基準日とする第十二回特別弔慰金に係る事務処理がほとんど改善されていなかったと当事者の方々から報告を受け、誠に遺憾である。
 前回主意書で言及した北海道札幌市在住の戦没者遺児の男性が、本年四月に第十二回特別弔慰金を請求したところ、前回の審査で受給資格が明らかであるにもかかわらず、「書類受付から、国債の受け取りまで、十ケ月〜十二ケ月ほどお時間がかかります。」「特別弔慰金は、一年目に請求が集中し、審査に非常に時間がかかるため、国債交付までお時間をいただいております。(前回の特別弔慰金では、国債のお渡しまで最大で一年三ケ月ほどお時間をいただきました。)」と記した案内を渡されたという。男性の、前回の記録を照合すれば審査は速やかに終わるのではないか、との感想は極めて道理にかなうと考える。多くの戦没者遺族も、同じように感じているであろう。「今日の日本の平和と繁栄の礎となった戦没者等の尊い犠牲に思いをいたし、国として改めて弔慰の意を表す」という特別弔慰金の趣旨が事務的な処理の遅鈍により遺族に伝わっていないと考える。
 このような遅延は、戦後日本でたいへんな苦労をされてきた戦没者遺児に対して礼を欠いている。多くの遺児は、経済的に窮した母子家庭で育った。進学を諦めざるを得なかった遺児も少なくない。さらに就職や結婚において、不当な差別のため多くの困難にも直面している。戦没者遺族を代表する一般社団法人日本遺族会の水落会長は、新潟日報のインタビューで、「母は朝四時から田畑を耕し、日中は土木作業に行って、私を育ててくれた。貧しくて学校の集金の支払いもままならない。コメは換金してしまうので一週間に一回しか食べられなかった。」「母を助けようと中卒で就職しようとしたが全て落ち、当時の担任に「お前は片親だから」と言われた。父は国の命令で戦地に行き命を落としたのに、戦後は「戦争に加担した犯罪者」と差別された。」と述べている。また、同会長は産経新聞のインタビュー記事で、「昭和三十八年に日本遺族会に奉職し、九段会館に配属されました。当時、戦没者の遺児は「片親」ってことで企業に就職できなかった。窮状をわかっているから、遺族会が遺児を集団就職させたんです。」「私は十八年生まれで、戦争のことは知りません。ただ、戦後の苦しかったことは知っています。食べる物も着る物もなく、戦争がなければ、父親さえ生きていたら、と思いました。それはしっかり語り継いでいかないと駄目だと思っています。」と述懐している。
 さらに、戦没者の遺骨収集についても長い間不十分であった。前述の札幌市の男性は、亡父も、また同じく戦死した叔父の遺骨も戻ってきていないという。厚生労働省社会・援護局によれば、令和五年度末時点で、海外戦没者概数約二百四十万柱のうち約百十二万柱の遺骨が未収容である。
 諸外国において、戦没者遺児は、国家のために一命を捧げた英雄の遺児として扱われ、奨学金等の制度が用意されている。例えば、英国では、戦没者遺児が大学に進学する場合、年間最高で一万四千二百英ポンド(約二百七十万円)の給付型奨学金を受給できる。我が国とは大きく事情が異なっていると考える。
 そこでお尋ねする。

一 第十二回特別弔慰金の受給手続について
 1 前回受給者について、請求から裁定までの期間を短縮する措置を講じているか。
 2 1の措置は時間的、金銭的コストの低減を図れると考えるが、政府の認識如何。
 3 請求一般について、裁定、受給までの期間を短縮してほしいという当事者の方々の声を認識しているか。
 4 民間企業のシステムやノウハウを参考にするなど、事務処理の迅速化を図るべきと考えるが、政府の見解如何。
二 戦没者の遺骨収集の推進に関する法律第三条第二項に規定する戦没者の遺骨収集の推進に関する施策を集中的に実施する期間は、令和十一年度までとなっている。令和五年七月二十八日に閣議決定された戦没者の遺骨収集の推進に関する基本的な計画に定めるとおり、戦後八十年を迎えるに当たり、戦没者の遺族が高齢化している現実を重く受け止め、一日も早く、一柱でも多くの戦没者の遺骨を収容及び本邦に送還し、戦没者の遺族に引き渡すことは、国の重要な責務であると考える。政府は実施している具体的な施策を明らかにされたい。

 右質問する。

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.