質問本文情報
令和七年六月十二日提出質問第二六六号
外国人による不動産所有と民法上の相互主義に関する質問主意書
提出者 松原 仁
外国人による不動産所有と民法上の相互主義に関する質問主意書
日本国内、特に東京都内における住宅価格の高騰は深刻な社会問題となっている。令和五年の統計の中には、東京二十三区内における新築マンションの平均価格が一億円を超えたというものもあり、多くの一般国民が住宅を購入できない状況にある。加えて、投資目的による不動産取得が加速しており、居住実態のない空室物件の存在が、都市部の住宅供給の逼迫と住宅価格の上昇に拍車をかけている。直近の報道では、マンションやアパートの所有者が外国人に代わり、不動産賃貸契約の更新時に家賃を極めて高額に引き上げられたため、住民が退去を余儀なくされた事例が大きな話題を呼んだと承知している。
このような背景において、民法第三条第二項において「外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する」とされるが、同条の趣旨には、相互主義の原則が含まれているとする有力学説も存在する。すなわち、日本人がその国において不動産所有を許されていない場合には、当該国の国民にも日本国内での不動産所有を認めるべきではないという考え方である。
ところが、政府からは令和五年六月三十日の答弁書(内閣衆質二一一第一四六号)において「「日本の民法における不動産所有の原則である相互主義」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である」と答弁がなされている。この点に関して、かつて我妻教授が述べたように、外国人の私法上の権利能力に関する国際私法の基礎には、各国の法制度との間の公平な取扱い、すなわち相互主義が存在しているべきであるとの法理が存在していると考える。
実際、欧州諸国を含む複数の国では、外国人の不動産取得に対し自国民と異なる制限を設けている。例えば、中国本土では、土地の私有が認められておらず、フィリピンにおいても、外国人による土地所有は禁止されている。これに対して、日本はほとんど無制限に外国人に不動産所有を認めており、その結果として都市部の不動産市場が投機的資本により歪められているとの指摘があると承知している。
こうした状況を鑑みるに、今後、住宅政策の公正性および国益を確保する観点から、外国人の不動産所有に対して相互主義の適用を厳格に再検討する必要があると考える。
そこで、次のとおり質問する。
一 日本の民法における相互主義について、具体的にどのような法理に基づく原則であるか。政府の認識如何。
二 外国人による日本国内での不動産所有について、現在、あらゆる国の国民に一律に認められているのか示された上で、国籍を条件に何らかの制限を課している国がある場合には、その対象国と内容をそれぞれ示されたい。
三 前問において、日本人が不動産を所有できない国の国民に対しても、日本国内での不動産所有を無制限に認めることは、制度的な不公平を生じさせるのではないかと考えるが、政府の見解如何。
四 欧州諸国やアジア諸国における外国人の不動産所有に対する制限の事例を、政府としてどのように認識しているか。相互主義の観点も踏まえ明らかにされたい。
五 相互主義を徹底するために、日本人が当該国で不動産を所有できない国の国民には、日本国内での不動産所有を制限するための外国人土地法の改正を検討するべきと考えるが、政府の認識如何。
六 マンション等の不動産の価格高騰の一因が、外国人による投資目的での所有にあるとの認識を政府として有しているか。有していない場合は、今後そのような問題意識を踏まえた調査・分析を実施する意思があるか。
七 東京二十三区の住宅市場において、居住目的ではなく投資目的で取得された不動産が占める割合について政府として把握しているか。把握しているのであれば、その状況を明らかにされたい。
右質問する。