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令和七年六月十三日提出質問第二八六号
霊感商法と放送のあり方に関する質問主意書
提出者 中司 宏
霊感商法と放送のあり方に関する質問主意書
二〇〇〇年代以降、いわゆる霊的能力を持つと称する人物が、断定的な表現を含め視聴者の不安をあおり、迷信への依存を抱かせるような発言をするテレビ番組等が数多く見受けられる。このようなコンテンツは放送倫理上の問題をはらんでいるとされ、日本民間放送連盟の放送基準八章「表現上の配慮」では「占い、運勢判断およびこれに類するものは、断定したり、無理に信じさせたりするような取り扱いはしない」と明記されているのみならず、同基準の解説では「現代人の良識から見て非科学的な迷信や、これに類する(中略)霊感、霊能等を取り上げる場合は、これを断定的に取り扱わない」と記載されている。
過去には全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が主体となり、テレビ番組が霊界や先祖の因縁の存在を安易に断定することで特定の宗教団体(いわゆる旧統一教会)の勧誘に利用されているとして放送業界に改善を求めた例もある。しかし、その後も占いや霊能力を扱う番組は高い視聴率を背景に後を絶たず、放送モラルやメディアの社会的責任の観点からの批判や懸念の声が根強く存在していると承知している。
顕著な事例として、二〇〇〇年代初頭に「視聴率の女王」とも称された占い師が複数のテレビ番組に出演し高視聴率を博す一方、先祖供養や墓石購入の必要性を説き、高額な墓石や仏壇等を販売するいわゆる霊感商法(消費者契約法第四条第三項第八号に規定する契約。以下同じ。)的な商法を行っていたとの指摘がある。これはテレビ局が高い視聴率を優先するあまり、公共の電波を用いて視聴者に不適切な情報を与え、結果的に霊感商法を助長した可能性を示唆しており、放送メディアには社会に与える影響の大きさゆえの高い倫理性と社会的責任が求められると考える。
このようなケースにおいて放送局側のモラルを問わなければならないのは、霊感商法は単なる個別の消費者トラブルに留まるものではなく、メディアによる影響と相まって社会的弱者が陥りやすい心理的な隙につけ込む構造的な課題でもあるからである。例えば家族が重い病気に罹患していたり、自身が深刻な悩みや不安を抱えていたりする人々は、精神的に追い詰められ社会的にも孤立しがちである。このように弱い立場に置かれた人々が「先祖のたたりを鎮めれば病が治る」などと言われ、藁にもすがる思いで高額な壺や墓石を購入してしまうケースが後を絶たない。先に挙げた占い師に関しても、家族の病気平癒を願う相談者の心理につけ込み、墓を建て替えさせたとの声もある。このように精神的・社会的に弱い立場にある人々に対して、本来であれば行政が手厚く支援し、また再発防止策を講じるべきであるが、現状では充分な対応がなされているとは言い難いと考える。
以上を踏まえ、次の事項について質問する。
一 テレビ番組等において霊能力や占いにより視聴者の不安をあおるような内容が放送されている現状について、政府は放送倫理上の問題点をどのように認識しているか。また、これらの番組が霊感商法的な勧誘に利用され社会問題化した事例を踏まえ、放送倫理に関して、政府はこれまでにどのような対策を取り、今後どのような対応を講じる考えか、それぞれ具体的に示されたい。
二 霊感商法による消費者被害の実態について、政府はどの程度把握をしているか。特に放送番組を起点としたものがどの程度あるか、過去の相談件数や被害額等、政府が把握しているものをそれぞれ可能な限り示されたい。
三 霊感商法の被害者には、難病の家族を抱える者や高齢者、地域で孤立している人など、精神的・社会的に弱い立場に置かれた人々が多数含まれると考えられるが、政府は霊感商法の被害者の属性や背景についてどのように分析・認識しているか。また、特にこれらの人々が霊感商法の標的とされるのを防ぐため、政府はどのような対策を講じているか、それぞれ具体的に示されたい。
四 このように精神的・社会的に弱い立場にある人々に対して、本来であれば行政が手厚く支援し、また再発防止策を講じるべきであると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
右質問する。