質問本文情報
令和八年六月十一日提出質問第一八号
電気事業法改正案の融資制度に関する質問主意書
提出者 田嶋 要
電気事業法改正案の融資制度に関する質問主意書
現在、国会に上程されている電気事業法改正案においては、事業者が送電網および大型電源に投資する際に電力広域的運営推進機関(OCCTO)が融資を可能とすること、その資金の一部として国がOCCTOに対し補助を行うことが記載されている。本制度の内容を確認すべく、以下質問する。
一 改正案第二十八条の五十六の二は政府は、予算の範囲内において、推進機関に対し、広域系統整備交付金交付等業務並びに第二十八条の四十第一項第九号及び第十号に掲げる業務の財源に充てるために必要な金額の全部または一部を補助することができるものとするとある。また、第二十八条の四十第一項第九号は、基幹送変電設備整備等計画に基づく基幹送変電設備の整備・更新、第十号は、認定発電等用電気工作物整備等計画に基づく発電等用電気工作物の整備又は更新とある。この「補助」の財源について、第九号および第十号、それぞれについて説明されたい。
二 改正案第九十九条の八において、短期卸電力取引所は域間売買取引の決済に係る収入からその決済に要する費用を控除した金額、すなわち値差収益を、エネルギー対策特別会計の電源開発促進勘定に納付する、とある。
1 短期卸電力取引所において発生する値差収益の負担は電気料金に転嫁され、電力消費者が負担していると理解してよいか。
2 過去発生した値差収益はいくらだったか。年度別に示されたい。
3 従来、この値差収益は広域系統およびそれに付随する地域内連系の整備に用いられていたという理解に相違ないか。
4 本改正後、値差収益は電源開発促進勘定に納付されたうえで、原則、広域系統およびそれに付随する地域内連系の整備のみに使われるという理解に相違ないか。
5 値差収益は、法律上は電源整備にも充てられることとなっているが、それは当面は行わないということか。電源整備にも充てられることがあるとすれば、どのような場合か。
6 値差収益は地域間送電線における電力取引から生じるものであり、その性質上、広域系統整備の財源として用いることが本来の趣旨と考えられる。電源整備への転用を認めることについて、どのような政策的根拠があるか。また、電源整備への充当額に上限は設けるのか。
7 今回、値差収益を国庫納付することとした理由はなにか。
三 「法律案概要」資料で、OCCTOの行う大規模電源への貸付の原資として「財政投融資等」とある。一般に財政投融資は国からの貸付であって、貸付をうけた財投機関が一定の利率を上乗せしたうえで事業者に貸し付けを行う。また、電気事業法改正案を取りまとめた審議会の議論では、従来、金融機関では融資が困難であった回収期間十年以上の案件に対して融資を行うとしている。
1 今回の改正案における大規模電源への貸付スキームを説明されたい。
2 改正案第二十八条の五十の二および四において、経済産業大臣は貸付けの内容を決定するに当たってOCCTOが従うべき基準を策定するとある。経済産業省は融資案件の審査基準をどのように策定するのか。
3 従来、融資対象は総括原価方式により回収が確実であった連系線事業のみであったOCCTOに、金融機関が融資できない高リスク案件の審査能力はあるのか。
4 財投機関である国際協力銀行や日本貿易保険、国際協力機構等は環境社会配慮ガイドラインを制定し、環境・社会面に配慮した案件の実施に取り組んでいる。同様に環境に大きな影響を与えうる大規模電源などに融資を行うことになるOCCTOにも制定させるべきではないか。
5 財投機関となったOCCTOには、融資案件についての情報公開および国民への説明をこれまで以上に徹底するべきではないか。
四 電力自由化によって、発電事業者は競争環境に置かれている。今回の法改正では、値差収益、または財政投融資によって、一部の大規模投資を行うことができる大規模事業者、主に旧一般電気事業者を支援することになる。
1 大規模電源への公的融資制度の創設にあたり、大規模電源が小規模・分散型電源と比較してコスト面・需給安定面で優位であることを示す政府の分析・試算はあるか。ない場合、コスト優位性の実証なしになぜ大規模電源を支援対象として選定したのか、その根拠を示されたい。
*国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が、再エネ+蓄電システムのコスト優位性を示す報告を二〇二六年五月に出している。
2 コスト優位性の実証がない場合、安定供給上の必要性を根拠とするのであれば、同等の安定供給貢献が可能な小規模・分散型電源との比較評価を行ったか。その評価結果を示されたい。
3 融資対象を一定規模以上の電源に限定することの根拠は何か。資金調達困難という課題は規模にかかわらず存在しうる。出力規模による区切りは、実質的に大規模電源に投資可能な旧一般電気事業者等を優遇する結果となるが、これは電力自由化の趣旨である内外無差別・競争中立の原則と整合するか。
五 電気事業法改正案を取りまとめた審議会の議論では、融資案件が破綻した場合のラストリゾートとして、送配電事業者に拠出金を求めることとされている。
1 託送料金に当該拠出金を上乗せすることを想定しているのか。
2 償還確実性が担保されているなら民間融資が可能なはずであり、そもそも公的融資が不要となる。逆に、ラストリゾートが必要なほどリスクが高いなら、なぜ公的資金を投入するのか。
3 電力自由化においては、託送事業は公益性の観点から地域独占を継続させることとした一方、発電事業は競争環境とした。ラストリゾートとして送配電事業者の拠出金負担を想定するということは、発電事業が破綻した場合のリスクを電力消費者に負担を負わせることになる。すなわち、当該発電事業者の事業リスクを国民が肩代わりすることにほかならない。自由化された電力市場において、事業リスクを国民転嫁できる事業者とできない事業者が存在することになる。一方事業者を不当に優遇する措置となるのではないか。
右質問する。

