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令和八年十月七日提出
質問第九号

ギャンブルの日常化の防止等に関する質問主意書

提出者  西村智奈美




ギャンブルの日常化の防止等に関する質問主意書


 「ギャンブルの日常化の防止等に関する質問に対する答弁書」(令和八年七月三十一日付内閣衆質二二一第三八号答弁書。以下「答弁書」という。)に不明確又は不十分な点があるため、以下質問する。

一 答弁書では、日本中央競馬会による子ども向け施策等の家族連れをターゲットにした販売促進活動について、令和四年の衆参の農林水産委員会における附帯決議に沿ったものであることを理由に「問題ないと考えている」としているが、近年の深刻化が著しいギャンブル依存症の実情に鑑みれば、今なお同附帯決議を持ち出してこのような公営競技施行者の行為を正当化し続けることは、合理性を欠くと言わざるを得ない。この点に関し、以下の質問に対する回答を求める。
 (一) 家族連れをターゲットにした販売促進活動や日常生活に入り込むギャンブル広告などによる「ギャンブルの日常化」が市民、特に子どもにもたらす効果を明らかにするため、速やかに調査を行い、その結果に基づき必要な対策を講ずるべきではないか。
 (二) その際に、既に公表されているWHO等の公衆衛生に関する国際機関による提言や諸外国の先行研究も十分に踏まえる必要があるのではないか。答弁書に頻出する「ご指摘の「WHO等の提言その他のギャンブルの日常化を防止すべきとする国際的な潮流」の意味するところが必ずしも明らかではないが」との記載は、かかる国際的な動向を把握し、参考にしようとする姿勢の欠如を示すものにほかならない。政府として、WHO等の国際的な場においても、「我が国としては、ギャンブルの日常化の問題があるという認識は持っていない」というスタンスをとるつもりなのか。
 (三) 厚生労働省の公式ウェブサイトには、「我が国はWHO加盟国として、WHO総会や我が国が所属するWHO西太平洋地域の各種会合に積極的に参加し、我が国の保健医療分野の対策に資するべく国際的な情報を入手すると共に、世界の保健課題への貢献も行っています。」とある。WHOは二〇二四年十二月二日付で「GAMBLING」というファクトシートを公表していると承知しているが、このファクトシートは我が国が入手した「国際的な情報」の中に、含まれているのか。含まれている場合はこのファクトシートをどのように評価しているか明らかにされたい。
二 答弁書では、競輪場や競艇場における子ども向けの遊具や遊び場等の施設について、「地域の交流の場として設けられている」ことを理由に、「問題であるとは考えていない」としているが、これは極めて表面的かつ粗雑な説明である。この点に関し、以下の質問に対する回答を求める。
 (一) このような施設を整備したとしても公営競技の賭博としての性格は変わるものではなく、かつ、「地域の交流」とは言っても純粋に公益的な観点から行うものではなく入場促進、販売促進の目的も兼ねて行うものである以上、そこに子どもを呼び込むことが許される理由にはならないのではないか。
 (二) 更に、子どもを公営競技に親しませようとする公営競技施行者の企画は、このような施設の整備にとどまらず、近時エスカレートしている。
  具体例として、福岡県の小倉競輪場では、今年八月に実施した「小倉けいりん夏祭り」において、来場した子どもたちに、実際のレースについて一着当てのクイズに参加させ、レースを見ながら自分の選んだ番号の選手の応援をさせて、当たった子どもにおもちゃ等の景品を進呈するという企画が実施された。
  これは、本来二十歳までは禁じられている投票券の購入を模した行為を子どもに経験させ、賭博行為やその興奮に早くから曝露させることにより、ギャンブル依存症者予備軍を生み出しかねない著しく不適切な行為であり、「地域の交流」といった美名の下で許されることがあってはならないのではないか。経済産業省は、このような施行者の企画について、把握しているか、また、問題ないと考えるのか。
  これに類する企画は、他の公営競技施行者においても行われているおそれが高いため、ギャンブル依存症問題を統括する内閣官房は、所管省庁に実態調査を求めるべきではないか。
 (三) 教育委員会が堂々と子どもを公営競技施行場に呼び込む企画に関わっている実態があることも大きな問題である。
  具体例として、今年の八月にボートレース尼崎の会場で「納涼夏祭り&尼崎ボートフェスティバル」と称した企画において盆踊り、縁日、キャラクターショー等が開催され、近隣住民に広く参加を呼び掛ける宣伝が行われたが、この企画は、尼崎市公営競艇施行者協議会と尼崎教育委員会とが後援するものであった。地区の婦人連絡協議会が主催し、子ども会連絡協議会も共催する企画に、競艇の施設を使用し、レース用のボートを模したボートに子どもを試乗させる等の企画まで行っているが、教育委員会がこのような企画を後援することは、地域の青少年教育に関する事務を担う行政組織として、あってはならないことなのではないか。文部科学省として、このような教育委員会の行為は問題ないと考えるのか。
 (四) 政府は、公営競技において二十歳未満の者による投票券の購入等を禁じている理由について、「社会的に未成熟な者の射幸心あるいは遊び癖を醸成あるいは助長することの弊害を考慮して、青少年保護の観点から定められたもの」との説明をしてきている。(一)から(三)までに述べたような方法で、競技場に子どもを呼び込み、競技に親しませ、賭け事の魅力をアピールすることは、子どもの賭博に対する自然な警戒感や抵抗感を失わせ、「射幸心や遊び癖を醸成あるいは助長する」ことに繋がる危険な行為である。政府として、これらの問題を直視し、公営競技場へのファミリー層の呼び込みを推奨、黙認する姿勢を改め、青少年保護の観点から早急に対処すべきではないか。
三 答弁書においては、公営競技の広告・宣伝について、全国公営競技施行者連絡協議会による自主ルールである「公営競技広告・宣伝指針」(以下「協議会指針」という。)を踏まえて公営競技の主催者等が策定した広告・宣伝指針の適切な運用を促すことで足りるとしているが、現行の協議会指針の内容は極めて不十分である。この点に関し、以下の質問に対する回答を求める。
 (一) 協議会指針で定める「児童向けのテレビ番組・ラジオ番組・雑誌等における広告・宣伝を行わない」だけではなく、児童が触れることが想定される時間帯におけるテレビ番組・ラジオ番組については、全面的に広告・宣伝を行わないこととすべきであり、また、屋外広告や交通広告についても、協議会指針に定める「空間を過度に占拠しない」という制限のみならず、動画広告の表示の頻度や時間帯についても制限を行うべきである。したがって、政府としては、答弁書にあるような「同指針を適切に運用することを当該主催者等に促」すことでは不十分であり、協議会指針の改定を促す必要があるのではないか。
 (二) 答弁書は、ギャンブル等依存症対策基本法第十五条において「関係事業者の自主的な取組を尊重しつつ」とあることを何度も引用して、事業者に対しより踏み込んだ要請をしないことを正当化しているが、同条においては「ギャンブル等依存症の予防等が図られるものとなるようにするために必要な施策を講ずる」ことが求められているのであり、関係事業者の「取組」がむしろギャンブル等依存症の予防等の弊害となっているような場合にこれを放置することは許されないのではないか。
  例えば、全国公営競技施行者連絡協議会が作成・提供している「ギャンブル依存症セルフチェック」は、明らかに依存症の段階にあることを示す回答をした利用者に対し、「時にはギャンブルをする目的を変えてみましょう。気分転換、ちょっとした運試しなど、もう少し軽い気持ちでギャンブルをできたらいいですね。」といった有害無益なアドバイスをする内容となっている。
  また、全国モーターボート競走施行者協議会及び各施行者は、そのウェブサイトで「ボートレースは自分の考えで楽しめる健全な知的ゲームです。」として、勝敗が偶然の事情により決定される賭博であることを覆い隠す謳い文句を掲げている。
  所管省庁は、こういった実態を把握しているのか。把握した上でなお、「自主的な取組を尊重」して放置するのか。
 (三) そもそも、公営競技に関する行政庁の所管は、競馬は農林水産省、競輪・オートレースは経済産業省、競艇は国土交通省と、それぞれ振興を担う省庁がギャンブル等依存症対策の観点からの監督も行う、いわばアクセルとブレーキを同時に踏む不合理な仕組みとなっており、十分なギャンブル等依存症対策が講じられない根本的な要因となっている。
  形の上では、ギャンブル等依存症対策基本法に基づき、内閣官房がギャンブル等依存症対策を統括することになってはいるが、基本計画は所管省庁の現状認識及び方針の寄せ集めに過ぎず、具体的な監督の在り方は所管省庁に委ねられているのが実情である。ギャンブル等依存症及びこれに起因する問題が拡大・深刻化の一途を辿っている現状に鑑みれば、ギャンブル等依存症対策に関する監督権限をより適切に行使するのに適した行政の在り方を検討する必要があるのではないか。
  例えば、ギャンブル等のウェブサイトを閲覧した者に対する執拗なターゲティング広告や利用者の心理を利用した「あと○分でボーナス終了」のような緊急性の演出等のダークパターン広告などについては、消費者の脆弱性の観点から消費者保護の一環として対策を講ずる必要もあるのではないか。
四 答弁書によれば、令和八年度に、厚生労働省の補助事業として、独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターにより、ギャンブルに関する広告に曝露された量とギャンブルに関する行動との関連に関する調査を実施するとのことである。この点に関し、以下の質問に対する回答を求める。
 (一) ギャンブルの日常化の典型的な手段であるギャンブル広告について、このような調査が行われることは歓迎するものであるが、調査結果については、単に普及啓発や予防教育に用いるだけではなく、一から三までに述べてきたような事業者の家族連れや子どもをターゲットにした販売促進活動や広告・宣伝に対する行政監督にも生かすことは当然求められるのではないか。
 (二) また、ギャンブル等依存症対策基本法第二十三条の規定に基づく三年ごとの実態調査も令和八年度に実施されることとなっているが、当該調査についても、従来の調査方法をそのまま踏襲するのではなく、ギャンブル等依存症の実情をより適切に把握する上で有用な調査項目や分析方法の導入に努めるとともに、その調査結果を前述の調査と同様に事業者に対する行政監督に生かすべきではないか。
 (三) これらの調査は、いずれも独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターが担うことが想定されるが、同センターの体制には限界があるため、他の専門的知見を有する研究機関等の協力も得て、より充実した調査を実施する体制を確保すべきではないか。

 右質問する。

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