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答弁本文情報

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平成十二年八月十五日受領
答弁第三号

  内閣衆質一四九第三号
  平成十二年八月十五日
内閣総理大臣 森   喜  朗

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員穀田恵二君提出国指定の文化財建造物(民家)等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員穀田恵二君提出国指定の文化財建造物(民家)等に関する質問に対する答弁書



一の(1)について

 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号。以下「法」という。)第二十七条第一項の規定に基づき重要文化財に指定されている建造物である民家(以下「重要文化財民家」という。)の修理は、法第三十四条の二の規定により、重要文化財民家の所有者又は法第三十二条の二第一項の規定に基づき指定された管理団体(以下「所有者等」という。)が行うこととされており、その経費については、法第三十五条第一項の規定により、当該修理につき多額の経費を要し、所有者等において負担に堪えない場合には、その経費の一部に充てさせるため、政府が所有者等に補助金を交付することができることとされている。
 政府としては、法第三十五条第一項の規定に基づき昭和五十四年五月に文化庁長官が定めた「重要文化財(建造物・美術工芸品)修理・防災事業国庫補助要項」により、所有者等が行う解体修理を始めとする大規模修理に対して補助事業を行っているところである。その補助事業の補助率については、同要項に基づき、補助の対象となる経費の五十パーセントを基本としながら、補助の対象とする事業の規模と補助事業者の財政規模等を勘案した上で、最大三十五パーセントまでを加算することができることとしている。現行の補助率は、所有者等が修理の経費の負担に堪えない場合、その経費の一部に充てさせるため所有者等に対し補助金を交付することができるとする法第三十五条第一項の規定の趣旨や、修理により利益を受ける所有者等に応分の負担を行わせるべきであることを考慮して、適切に定めたものであり、その引上げは考えていない。
 なお、重要文化財民家の大規模修理に対する補助事業のために必要な予算については、今後とも、その確保に努めてまいりたい。

一の(2)について

 政府としては、昭和五十四年五月に文化庁長官の定めた「指定文化財管理費国庫補助要項」に基づき、重要文化財民家の所有者等のふすまの張り替えや畳の表替え等の小修理等について、都道府県が所有者等にその経費の補助を行う事業に対し国庫補助を行っているところである。小修理等に対する補助事業についても、重要文化財民家の保存のためには、大規模修理に対するものと同様に重要であると考えており、当該補助事業を打ち切ることは、現在のところ考えていない。
 また、小修理等の補助単価については、小修理等に係る材料費、人件費等の上昇を受け平成元年に単価を見直し、その増額を図ったところである。御指摘の補助基準の見直し又は単価の改定については、小修理等の内容、実勢単価等を勘案しつつ、適切に対処してまいりたい。
 なお、重要文化財民家の小修理等に対する補助事業のために必要な予算については、今後とも、その確保に努めてまいりたい。

一の(3)について

 財産課税である相続税は、相続等により取得した財産の価値に応じて負担を求めるものであることから、相続財産は、原則として、当該相続財産を取得した時の時価により課税しているところである。御指摘の「所有者負担の実態」がいかなる内容のものを指すものか必ずしも明らかではないが、これが重要文化財民家に対する所有者の維持管理等のための費用の負担ということであれば、このような負担に対し相続税の課税上、軽減措置を講ずることは相続税になじまないものと考える。
 また、相続税の課税において、重要文化財民家のうち所有者の居住の用に供されているものの時価については、重要文化財民家の所有者が、法第三十一条第一項及び第三十四条の二の規定に基づき管理及び修理を行うとともに、現状変更等を行う場合には法第四十三条第一項の規定による文化庁長官の許可を受けなければならないこととされていることなどの法的制約を勘案して、これを重要文化財民家でないものとして評価した価額から、その価額に百分の六十の割合を乗じて計算した金額を控除する方法によって算定しているところである。この控除の割合は、重要文化財民家の所有に係る法的制約の状況を踏まえた適切なものと考えており、その拡大は考えていない。
 また、登録免許税は登記等により生ずる利益に着目して課税するものであり、重要文化財民家であるということに着目してその相続の登記に係る登録免許税の軽減措置を講ずることは、課税の公平上問題があるとともに、相続による不動産の取得は被相続人の死亡という偶発的な事由により生ずるものであり、その政策的効果が期待できないこと等から、適当でないと考えている。

二の(1)について

 平成十年四月から本年六月までの間に、林野庁に寄せられた国有林野内の檜皮の採取希望は、社団法人全国社寺等屋根工事技術保存会による檜皮の品質調査のための一件であった。この採取希望のあった件については、同保存会の希望を踏まえ、同保存会が広島県内の約九ヘクタールの国有林野からヒノキ四本分の檜皮を採取することを認めるとともに、その使用目的が売買等営利を目的とするものではなく、調査のためであったことから、物品の無償貸付及び譲与等に関する法律(昭和二十二年法律第二百二十九号)第三条第三号の物品に該当し、これを無償で譲渡したところである。
 また、国有林野のヒノキ人工林の面積は、平成十二年四月一日現在、約三十八万一千ヘクタールであり、そのうち檜皮を採取するのに適当であるといわれる樹齢八十年を超えるものの面積は、約一万七千ヘクタールである。
 さらに、今後の檜皮の供給計画及び目標については、現在、林野庁として定めていないが、本年七月に林野庁近畿中国森林管理局長の行政運営上の会合として発足した「世界文化遺産貢献の森林設定等に関する有識者懇談会」において、国有林野事業における檜皮の供給計画及び目標の在り方、檜皮を供給する国有林野の設定に関する考え方等について検討が進められているところである。

二の(2)について

 文化庁では、法第八十三条の七第二項の規定に基づき、社団法人全国社寺等屋根工事技術保存会を選定保存技術の保存団体として認定し、同保存会に対し、昭和四十九年度から社寺等の屋根葺き技術者の育成を目的として,檜皮葺き・こけら葺きの研修のための国庫補助を毎年行っているところであり、また、平成十一年度からは、さらに、檜皮を供給する原皮師の養成研修のための国庫補助を実施し、屋根葺き技術者等の後継者の確保に努めているところである。
 今後とも、同保存会が行う屋根葺き技術者等の後継者育成のための研修は重要であると考えており、研修スペースの確保や檜皮採取研修会場の確保に協力するなど、同保存会とも協議しながら研修の充実に努めてまいりたい。
 また、同保存会が行う研修のために必要な予算については、今後とも、その確保に努めてまいりたい。

二の(3)について

 御指摘の文化財を支える用具・原材料の確保に関する調査は、文化庁が無形文化財及び有形文化財の保存及び活用に欠くことのできない用具・原材料のうち特に確保の緊急性を要する手打ちのやすり、のみ等の加工用具、象牙、檜皮等の原材料について、その需給実態等を調査したものであり、平成九年度から平成十二年度にかけて、用具・原材料の供給業者、文化財の保存団体、地方公共団体等に対して、合わせて約八百件のアンケート及び聴き取り調査を行ったところである。
 同調査の結果については、平成十二年度末頃までに取りまとめ、報告書を作成する予定である。



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