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平成十五年一月二十八日受領
答弁第四八号

  内閣衆質一五五第四八号
  平成十五年一月二十八日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員植田至紀君提出取調べの可視性確保、密室性排除のための「録音・録画」の導入に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員植田至紀君提出取調べの可視性確保、密室性排除のための「録音・録画」の導入に関する質問に対する答弁書



 1及び4について
 捜査機関は、刑事事件の真相解明を十全ならしめるため、被疑者との信頼関係を築いた上、極めて詳細な取調べを行っている実情にあり、このような実情の下で取調状況の録音・録画を義務付けた場合、取調状況のすべてが記録されることから被疑者との信頼関係を築くことが困難になるとともに、被疑者に供述をためらわせる要因となり、その結果、真相を十分解明し得なくなるおそれがあるほか、その再生、反訳等に膨大な時間と労力・費用を要する等の問題がある。その一方、供述調書は、その内容を供述者に対して読み聞かせ又は閲読させ、補充訂正の申立てがあればそれを加筆し、内容が間違いないことを確認した上で供述者が署名押印するという手続によって作成されるものである上、公判廷においてその供述の任意性・信用性が争われれば、検察官においてその存在を立証する責任を負い、その存否の判断は裁判所にゆだねられているのであるから、供述の任意性及び信用性の担保措置は十分に講ぜられているものと考えている。平成十三年六月十二日に内閣に述べられた司法制度改革審議会の意見においても、取調状況の録音・録画については、「刑事手続全体における被疑者の取調べの機能、役割との関係で慎重な配慮が必要であること等の理由から、現段階でそのような方策の導入の是非について結論を得るのは困難であり、将来的な検討課題ととらえるべきである。」とされているところであり、政府としては、現時点で取調状況の録音・録画を義務付ける制度を導入することは考えていない。
 もっとも、同意見において、「被疑者・被告人の身柄拘束に関連する問題」として、「我が国の刑事司法が適正手続の保障の下での事案の真相解明を使命とする以上、被疑者の取調べが適正を欠くことがあってはならず、それを防止するための方策は当然必要となる。」とした上で、「被疑者の取調べ過程・状況について、取調べの都度、書面による記録を義務付ける制度を導入すべきである。」と提言されたことから、政府としては、被疑者の取調べの適正をより一層確保するため、平成十四年三月十九日、司法制度改革推進計画を閣議決定し、被疑者の取調べの過程・状況につき、取調べの都度、書面による記録を義務付ける制度を導入することとし、平成十五年半ばころまでに、所要の措置を講ずることとしている。
 2について
 諸外国において取調状況の録音・録画により取調べに支障を来している事例があるか否かについては、承知していない。
 なお、取調状況の録音・録画等被疑者の取調べの在り方については、広く我が国の刑事訴訟制度全体の枠組みの中で慎重に検討すべき事柄であり、刑事訴訟制度が異なる我が国と諸外国とを単純に比較することは適当でないと考えている。
 3について
 個別の具体的事件における警察官又は検察官の取調状況の録音・録画の有無、その目的及びそれによる弊害の有無については、具体的事件の証拠関係にかかわる事柄であるので、お答えを差し控えたい。
 なお、一般論として申し上げれば、警察官及び検察官は、被疑者の取調べに当たり、事案の性質及び証拠関係等の個別的事情に照らし立証上特に必要であって取調状況の録音・録画による弊害が少ないと認めるときは、これを行うことがあり得ると承知しているが、それとは異なり、取調状況の録音・録画を必ず行うこととする制度を設けた場合には、1及び4についてで述べたとおり、刑事事件の真相を十分解明し得なくなるおそれ等の問題が生ずると考えている。


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