答弁本文情報
平成十五年四月十五日受領答弁第三八号
内閣衆質一五六第三八号
平成十五年四月十五日
衆議院議長 綿貫民輔 殿
衆議院議員長妻昭君提出国内テロ対応に関する指示命令系統等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員長妻昭君提出国内テロ対応に関する指示命令系統等に関する質問に対する答弁書
一について
今般のイラクに対する武力行使を受けて、本年三月二十日にイラク問題に関する対処方針が閣議決定され、国内における警戒態勢の強化・徹底を図ることとされたところであり、これを踏まえ、出入国管理、通関検査、テロ関連情報の収集分析、ハイジャック等の防止策、核物質、生物剤若しくは化学剤又はこれらを用いた大量破壊兵器を使用したテロ(以下「NBCテロ」という。)等への対処、国内重要施設、在日米軍施設、各国公館等の警戒警備などにつき、必要な施設、場所等において国内警戒態勢の強化・徹底を行っているところである。特に、NBCテロについては、これに使用されるおそれのある物質の管理強化に加えて、核物質を使用したテロに関しては原子力関連施設の警戒警備の強化などにより、また、生物剤又は化学剤を使用したテロに関しては発生の早期把握体制の確立や医療体制の整備を図るなどにより、NBCテロの未然防止と、万一発生した場合の被害者の救助及び被害の拡大防止に全力を挙げることとしている。
御指摘の天然痘テロ等のNBCテロについては、いずれの事態であっても、内閣の総合調整等の下、関係省庁の所掌事務に応じて当該省庁の大臣等が相互に連携・協力して対応することとしている。
被害情報を含むテロ情報については、常時、内閣情報官の下に情報を迅速に集約し、関係省庁間で共有する態勢が整えられているところである。万一、政府全体として取り組む必要のある国内テロが発生したときは、重大テロ事件等発生時の政府の初動措置について(平成十年四月十日閣議決定)に基づき、内閣総理大臣の判断により、内閣に、内閣総理大臣又は内閣官房長官を本部長とする対策本部が速やかに設置され、関係機関の具体的な対応措置が円滑かつ効果的なものとなるよう基本的対処方針その他の対処に係る重要事項について協議決定がなされるなどして、内閣の総合調整等の下、関係省庁が相互に連携・協力して対応することとなる。
今般のイラクに対する武力行使を受けて、国土交通省から地下鉄事業者に対して、駅構内、車両基地等の自主警備の強化等について一層の徹底を要請するとともに、警察庁においても関係都道府県警察に対して、駅構内等の警戒を強化するよう指示している。
地下鉄において重大テロが発生した場合についても、内閣の総合調整等の下、関係省庁の所掌事務に応じて当該省庁の大臣等が相互に連携・協力して対応することとしている。
御指摘の天然痘テロへの対応については、厚生労働省において、ワクチンの備蓄や医療関係者等に対する天然痘の診断・治療情報の周知を行うとともに、都道府県等におけるワクチン接種体制の整備を進め、万一、天然痘テロが発生した場合には、必要な者に対して速やかにワクチン接種を行い、天然痘のまん延防止を図ることとしている。また、都道府県等ごとにワクチンを接種することとなる初動対処要員の人数について調査し、当該都道府県等にワクチンを提供できる体制の整備を進めているところである。
サリンを使用したテロへの対応については、平成七年に発生した地下鉄サリン事件やサリン等による人身被害の防止に関する法律(平成七年法律第七十八号)の制定を踏まえ、警察、消防等において体制の整備を行うとともに、防護服、検知器等の必要な装備資機材の整備、各種化学剤の分析に関する研究等を進めてきたところであり、万一、サリンを使用したテロが発生した場合には、これらの関係機関が連携・協力して原因物質の特定と被害者の迅速な救助及び被害の拡大防止を図ることとしている。
イラクが過去実際に御指摘の生物化学兵器を保有し、化学兵器を使用した事実や、国際連合の査察団の指摘している数々の未解決の疑惑等にかんがみれば、イラクに生物化学兵器が存在しないとは想定し難いと考える。また、北朝鮮については、生物化学兵器を保有しているとの情報はあるが、その詳細については必ずしも具体的に明らかになっていないと承知している。いずれにしても、この種の事案の重要性にかんがみ、今後とも緊密な国際協調の下で情報収集に遺漏なきを期してまいりたい。