答弁本文情報
平成十六年三月十九日受領答弁第三一号
内閣衆質一五九第三一号
平成十六年三月十九日
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員照屋寛徳君提出航空自衛隊恩納分屯基地に保管されているPCB汚泥の処理に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員照屋寛徳君提出航空自衛隊恩納分屯基地に保管されているPCB汚泥の処理に関する質問に対する答弁書
一及び二について
現在、航空自衛隊恩納分屯基地(以下「恩納分屯基地」という。)内で保管しているポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という。)等を含む汚泥(以下「本件汚泥」という。)の発見場所、重量等は、別表一のとおりである。
本件汚泥については、その性状にかんがみ、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和四十六年厚生省令第三十五号)に定める特別管理産業廃棄物保管基準に準じ、保管の場所から本件汚泥が飛散し、流出し、及び地下に浸透すること等のないよう、二重のビニール袋に密封し、更にこれをドラム缶に密封した上で、別図一及び別図二のとおり恩納分屯基地内に設置した一時保管施設の屋内において、適切に保管している。
那覇防衛施設局長が平成十五年十一月二十日付けの文書により恩納村長に示した恩納分屯基地内に設置する予定の本件汚泥の処理施設(以下「本件処理施設」という。)の位置は、別図一のとおりである。
本件処理施設については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。以下「廃掃法」という。)その他関係法令の規定に基づき、生活環境影響調査を行い、その結果を踏まえ、実施設計を行った上、沖縄県知事から産業廃棄物処理施設の設置許可を受けて設置工事を実施し、その後、本件処理施設を稼働させて本件汚泥の処理を行う予定である。
本件処理施設に係る建物の規模及び構造については、建築面積約三百平方メートル、高さ約八・五メートルの鉄骨造二階建ての建物一棟であり、当該建物内に処理プラントを設置する計画である。
当該処理プラントについては、特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物の処分又は再生の方法として環境大臣が定める方法(平成四年厚生省告示第百九十四号。以下「告示」という。)に示した水熱酸化分解方式の反応設備を用いて水熱酸化反応によりPCBを分解する方法の一つである超臨界水酸化分解法を採用することとしている。
当該処理プラントの具体的な構造、機能、処理能力等については、今後行う生活環境影響調査の結果を踏まえ決定することとしており、また、その製造メーカーについても今後決定することとしているが、超臨界水酸化分解法により本件汚泥を処理した場合に発生する水(以下「処理水」という。)、ガス(以下「処理ガス」という。)及び灰(以下「処理灰」という。)の量について試算したところを申し上げると、この方法による処理プラントを二十四時間稼働させて一日当たり最大約三・五トンの本件汚泥を処理した場合、その際発生する処理水は最大約三・四トン、処理灰は最大約〇・一トン、処理ガスは最大約二千百立方メートルであり、また、本件汚泥のすべての処理が完了するまでに発生する処理水及び設備の冷却、清掃等に使用される水は約五百トンになるものと見込んでいる。
発生する処理灰や処理ガスについては、人の健康の保護及び生活環境の保全上支障がないことを確認し、更に万全を期するため、処理灰にあってはキレート樹脂による固定処理を行った上で処分することとし、処理ガスにあっては活性炭による有害物質の吸着装置を備えた排出設備から排出することとしている。
本年四月一日から施行される廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成十六年政令第五号。以下「改正政令」という。)においては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和四十六年政令第三百号)第二条の四第五号ロに規定する「ポリ塩化ビフェニル汚染物」に、汚泥のうちPCBが染み込んだもの(以下「PCB汚泥」という。)を新たに追加することとしている。これは、PCB汚泥について、廃掃法その他関係法令の規定に基づき、学識者による評価を踏まえて確立されている処分の方法により適切な処理を行うため、法令上の整備を行ったものである。
PCB汚泥の処分の方法としては、告示において示している高温及び高圧の状態で酸化反応により分解を行う水熱酸化分解方式、外気と遮断された高温の状態で還元反応により分解を行う還元熱化学分解方式等を適用することを予定しているところである。
那覇防衛施設局においては、平成十四年度に、本件汚泥を安全かつ確実に処理する方法として超臨界水酸化分解法が適しているかどうかの確証を得るための実証試験を行い、その結果、この方法により本件汚泥を処理した場合、別表二及び別表三のとおり、処理ガス及び処理灰中の各種物質並びに処理水中のPCB及びダイオキシン類については、いずれも基準値を下回り、人の健康の保護及び生活環境の保全上支障がない旨の評価が得られたが、処理水中の水銀、亜鉛、カドミウム、クロム及び六価クロム(以下「重金属類」という。)については、排水基準を定める省令(昭和四十六年総理府令第三十五号)に定める許容限度を超える濃度で検出されたことが判明したところである。しかしながら、これら重金属類については、処理水に鉄粉を混ぜて撹拌し、鉄粉に吸着させて沈殿させる方法により当該許容限度内の濃度にまで処理することが可能であることが確認されており、さらに、残存する重金属類をキレート樹脂に吸着させる方法を採れば、より万全な処理が図られるとの知見を得ている。
これらのことから、本件処理施設に右に述べた方法を採用することにより、本件汚泥及び処理水を安全かつ確実に処理することは可能であると考えている。
前記実証試験は、オルガノ株式会社が、平成十四年八月から平成十五年三月までの間、同社の研究所において行ったものであり、防衛施設庁の職員は立ち会っていない。また、「試験に使用した試料、試験方法、試験で得たデータや資料内容等」の概要については、別表二及び別表三のとおりである。
超臨界水酸化分解法とは、液体と気体の特徴を併せ持つ超臨界水と空気のみを利用して、PCB等の有機物を容易に分解し、処理水、処理ガス及び処理灰にする方法であると承知している。
この方法については、六及び九についてで述べた実証試験の結果、処理水につき他の方法を併用することによって本件汚泥を安全かつ確実に処理することが可能であるとの知見を得ており、本件汚泥の処理方法として適していると考える。
恩納分屯基地においては、その所在する地方公共団体が下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)に定める公共下水道等を整備していないことから、浄化槽法(昭和五十八年法律第四十三号)第二条第一号に規定する浄化槽を用いて汚水を処理しているところである。
本件処理施設から発生する処理水及び設備の冷却、清掃等に使用された水の排出方法については、今後行う生活環境影響調査の結果を踏まえ決定することとしているが、現時点では、恩納分屯基地外を流れる河川に排出する考えである。これらについては、人の健康の保護及び生活環境の保全上支障がないことを確認した上で排出することとしている。
御指摘の「北海道室蘭市在の株式会社日本製鋼所の処理施設」においてはPCB汚泥の処理は行われていないが、当該施設は我が国で唯一、超臨界水酸化分解法によりPCBを処理している施設であるとされていたことから、見学先として選定したものである。
お尋ねの見学に係る同行者の人数等は別表四のとおりであり、また、同表に掲げる同行者以外の者が同行した事実はない。
お尋ねの見学については、那覇防衛施設局が、恩納村からの要望を踏まえ、本件汚泥の早期処理を図る観点から、本件処理施設の設置に対する同村や地域住民の理解を深めていただくために必要であるとの考えの下に実施したものであり、その参加者については同村において取りまとめ、決定されたものである。
また、那覇防衛施設局においては、これらの参加者につき、旅費として約百七十一万円を旅行代理店に支払ったほか、見学に当たっての打合せ費用として約十四万円を飲食店に支払った。
恩納村や個人が負担した費用、支払先等については承知していない。