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平成十六年八月五日受領
答弁第一五号

  内閣衆質一六〇第一五号
  平成十六年八月五日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員古川元久君提出公的年金制度等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員古川元久君提出公的年金制度等に関する質問に対する答弁書



一及び二について

 公的年金制度は、国民全体が連帯し、世代間で支え合うことによって、高齢期等における稼得能力の喪失又は減退を補てんすることを目的として、経済社会の変動に十分に対応するよう社会政策的観点から国等が運営するものであり、国民の高齢期等における生活の安定に貢献することを通じて、社会の安定に寄与するものである。
 一方、私的年金は、個人が高齢期等に備えて自助努力により所得の充実を図るものであって、民間企業等により運営されるものであり、任意の私的契約において定められた保険料の拠出の範囲内で給付を受けることにより、個々人の高齢期等の生活の充実を図るものである。

三について

 公的年金制度は一及び二についてで述べたように、国民全体が連帯し、世代間で支え合うことによって、高齢期等における稼得能力の喪失又は減退を補てんすることを目的としている。現役時代における保険料の納付実績に応じた年金額を、原則として、個人の所得や資産の状況にかかわらず高齢期等に給付する社会保険方式を採用しており、高齢期等における貧困を予防する機能を有している。
 一方、生活保護制度は、生活に困窮する者の最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的としている。年金等の他の社会保障制度による所得を含め利用し得る所得、資産等を活用してもなお最低限度の生活を維持することができないときに、不足分に限って保護を行う制度であり、個々の状況に応じた最低限度の生活全般を保障する機能を有している。
 こうしたことから、公的年金制度と異なり、生活保護制度においては、受給者からの負担を要件とせずに給付が行われるものであり、両制度は、制度の趣旨や内容が異なるものであることから、公的年金制度の年金額と生活保護制度の最低生活費を単純に比較することは適当ではない。

四について

 国民年金制度は、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯によって防止することを目的とする制度であり、厚生年金保険制度は、被用者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、被用者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする制度である。
 他方、国家公務員共済年金制度及び地方公務員共済年金制度は、それぞれ公務員等及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するとともに、公務員等の職務の能率的運営に資することを目的とするものであり、職員が相当年限忠実に勤務して退職した場合等における年金に関する制度である。また、私立学校教職員共済年金制度は、私立学校教職員の福利厚生を図り、もって私立学校教育の振興に資することを目的とするものであり、国公立学校教職員に係る共済制度と均衡のとれた共済制度を私立学校教職員にも適用しようとしたものである。
 各共済年金制度においても、御指摘の厚生年金保険制度における六十歳台前半の在職老齢年金制度と同様の制度として、組合員や加入者である間の退職共済年金等の支給停止の制度が設けられており、厚生年金保険制度と同様に一律二割の支給停止の措置を平成十七年四月に廃止することとしている。
 厚生年金保険制度等と共済年金制度を一元化することについては、各制度の年金財政の将来見通し等検証すべき課題もあるが、「公的年金制度の一元化の推進について」(平成十三年三月十六日閣議決定)において、「被用者年金制度の統一的な枠組みの形成を図るために、厚生年金保険等との財政単位の一元化も含め、更なる財政単位の拡大と費用負担の平準化を図るための方策について、被用者年金制度が成熟化していく二十一世紀初頭の間に結論が得られるよう検討を急ぐ。」こととされており、また、国民年金法等の一部を改正する法律(平成十六年法律第百四号。以下「平成十六年改正法」という。)附則第三条第二項において、「公的年金制度についての見直しを行うに当たっては、公的年金制度の一元化を展望し、体系の在り方について検討を行うものとする。」と規定されているところである。もとより、どのような形で公的年金制度の一元化を図っていくかについても様々な意見があるところであるが、政府としても今後の社会保障制度全般についての一体的見直しに併せた公的年金制度体系の在り方についての議論も踏まえつつ、鋭意検討を進めてまいりたいと考えている。

五について

 平成十六年改正法により、厚生年金保険及び国民年金については、将来の保険料水準を固定する一方、おおむね百年間の収支を均衡させる期間の終了時において給付の支給に支障が生じないようにするために必要な積立金を保有しつつ、当該期間にわたって財政の均衡を保つよう給付の調整を行う仕組みが導入されたが、公的年金制度は、引き続き、その時代の高齢世代をその時代の現役世代が社会的に扶養するとの考え方に立っており、その財政方式は賦課方式(毎年度の年金給付等に要する費用をその年度の保険料収入等で賄う財政方式をいう。)を基本とした方式であると考えている。
 「修正積立方式」については、明確な定義はないが、積立方式(将来の年金給付等に必要となる原資をあらかじめ保険料で積み立てる財政方式をいう。)の考え方を念頭に置き、保険料率を当初低く設定しその後段階的に引き上げて、平準保険料率(所定の給付に要する費用を賄うために必要な保険料率であって、将来にわたって一定となるように算出した保険料率をいう。)に近づけていく財政方式を指しているものと考えており、かつては、公的年金制度について政府としてそのような説明をしてきたことはあるが、「積立方式」を基本とした方式であるとの誤解を与えかねないため、現在ではそのような説明は行っていない。

六について

 「社会保険方式」とは、国が社会政策的な観点から被保険者とする対象を定め、不測の事態や生活状態の変化等に備え、保険料の強制徴収を前提に、国等が給付を行うことを基本とする仕組みを指すものと考えている。
 各社会保険制度に係る国庫負担等の水準はそれぞれ異なっているが、各制度の目的、機能等に応じて定められるべきものと考えている。

七について

 厚生年金保険に被用者が加入することにより、被用者は老齢、障害等の不安を解消し、安心して働くことが可能となり、その効果は円滑な事業活動に寄与する面を有することから、事業主も被用者とともに、基礎年金拠出金部分も含め保険料を共同して負担することとされ、その負担割合については、それぞれ二分の一ずつとされたものである。
 一方、国民年金の第一号被保険者については、被保険者のみが保険料を負担することとなるが、これは第一号被保険者は自営業者等であり、雇主との使用関係と無関係に加入しているためである。

八について

 厚生年金保険の被保険者が受ける報酬の支給形態やその額及び被保険者の家族構成を始めとする生活実態は様々であり、これをそのまま保険料の徴収に反映させることとした場合、保険料算出の事務や給付管理が極めて複雑になるとともに、生活実態に応じて保険料を減額した場合は将来の給付に反映させることが原則となるため、報酬を基礎とする標準報酬制を採用したものである。
 なお、厚生年金保険の被扶養配偶者については、自分自身の所得がないことを考慮して、保険料を徴収せず、被用者年金制度全体で基礎年金の給付に要する費用を負担することとしている。また、所得が少なくなる育児休業期間中の厚生年金保険の被保険者については、保険料免除措置を講じている。

九について

 基礎年金の額は、高齢者世帯の消費支出のうち衣食住などの基礎的な部分におおむね対応するものとして設定しているものであり、これまで財政再計算時に、消費水準、物価の伸びなどを総合的に勘案して改定を行ってきたところである。
 なお、物価スライド制は、毎年の物価の上昇又は下落に応じ年金の実質価値を維持するためのものであり、物価の下落に応じて年金額の改定を行っても、年金受給者の購買力は維持されると考えている。



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