答弁本文情報
平成十六年十二月三日受領答弁第五〇号
内閣衆質一六一第五〇号
平成十六年十二月三日
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員松崎哲久君提出シベリア抑留日本人死没者の慰霊碑建立に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員松崎哲久君提出シベリア抑留日本人死没者の慰霊碑建立に関する質問に対する答弁書
一について
政府においては、旧ソヴィエト社会主義共和国連邦(以下「旧ソ連邦」という。)政府等から提出された資料を基に、平成三年度以降、旧ソ連邦の地域において抑留中に死亡した日本人(以下「抑留中死亡者」という。)の遺骨収集を行うとともに、埋葬地調査を実施してきており、これまでに五百八十八か所の調査を終えたところである。このうち、遺骨収集が可能な埋葬地は百九十か所、遺骨収集が不可能と判断している埋葬地は三百九十八か所である。
遺骨収集が不可能と判断している埋葬地の内訳としては、資料が不備である又は当時を知る者がいない等の理由により所在そのものが特定できない場所が百二十六か所、埋葬地と思われる地点が推定できたが当該地点が広大過ぎる等のため試掘した結果日本人の遺骨が確認できない場所が七十七か所、埋葬地と思われる地点が推定できたが、当該地点がロシア人墓地となっている、建物が建っている、又は風水害によって埋葬地が消滅している等のため試掘及び収集を行うことができない場所が百七十二か所、死亡者名簿等の資料の中に日本人以外の者が埋葬されていると記載されている場所が十か所並びに宗教上の理由により遺骨収集の許可が得られない場所が十三か所である。
なお、旧ソ連邦政府等から提出された埋葬地に関する資料以外にも、日本人の帰還者等から提供された六十九か所の埋葬地に関する情報があり、これに基づく埋葬地調査を引き続き実施している。
抑留中死亡者の遺骨収集については、平成十三年度及び平成十四年度に遺骨収集が可能な埋葬地について集中的に取り組んできたところであり、平成十四年度までに一万四千八百四十六柱を収集し、本邦に送還したところであるが、平成十五年度以降も遺骨収集を継続しており、平成十五年度においては六百八十五柱、平成十六年度においてはこれまでに五百九十五柱を収集し、本邦に送還したところである。
しかしながら、日本政府が推計する抑留中死亡者数が約五万三千人であるのに対して、旧ソ連邦政府等からこれまでに提出されている抑留中死亡者についての資料は約四万人についてのものであり、また、これまでの埋葬地調査の結果、遺骨収集が可能な埋葬地は全埋葬地の約三割にとどまっている。今後とも、ロシア連邦政府等に更なる資料を要求しつつ、新たな資料等が提出された場合には、埋葬地調査を行い、その結果遺骨収集が可能と判断した埋葬地については、速やかに遺骨収集を実施してまいりたい。
平成十二年度以降、旧ソ連邦において遺骨収集が事実上実施できない地域や遺骨収集がおおむね終了した地域について、無償による用地の提供及び将来も無償で慰霊碑の維持管理を担うことを当該地域を管轄するロシア連邦の市役所等が約束した場合には、当該市役所等と厚生労働省との間で作成した慰霊碑の建設に関する「合意書」を締結し、順次計画的に小規模な慰霊碑を建立することとしており、これまで、旧ソ連邦の五地域にこうした慰霊碑を建立したところである。
しかしながら、ロシア連邦における小規模慰霊碑の建立については、平成十四年度に、ロシア連邦政府が小規模慰霊碑の建立についての交渉は今後市役所等ではなく、ロシア連邦政府の委託を受けた国際軍事慰霊協会「軍事メモリアル」と行うべきであると主張するに至ったことから、市役所等との交渉が中断していたが、現在、ロシア連邦内の交渉主体をどこにするかという点も含めて、ロシア連邦政府との間で小規模慰霊碑の建立に関する協議を進めている。
現在、ロシア連邦のアルタイ地方、オレンブルグ州、ケメロボ州及びノボシビルスク州の四地域並びにウクライナに、小規模慰霊碑を建立するための準備作業を進めてきており、できるだけ速やかに建立できるよう努めるとともに、その他の地域についても小規模慰霊碑を建立するための協議を進めてまいりたい。
ロシア連邦イルクーツク市のマラトボ墓地については、平成十五年七月から九月までの間に遺骨を収集して本邦に送還したため、墓地を管理するイルクーツク市との話合いに基づき更地にしたところであり、今後、特段の処置は予定していない。