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答弁本文情報

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平成二十年四月二十五日受領
答弁第三〇〇号

  内閣衆質一六九第三〇〇号
  平成二十年四月二十五日
内閣総理大臣 福田康夫

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員阿部知子君提出中国遺棄化学兵器処理事業に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員阿部知子君提出中国遺棄化学兵器処理事業に関する再質問に対する答弁書



一の(一)及び(二)について

 中国吉林省ハルバ嶺において遺棄化学兵器を処理するため、発掘回収施設及び実処理施設(以下「処理施設」と総称する。)を建設することとしており、そのためには、処理施設に係る安全事前評価報告書、環境影響評価報告書、職業病危害事前評価報告書等の報告書を日中間で作成した上で、その事業承認を中国政府から取得する必要があるが、発掘回収施設については、現在、環境影響評価報告書の内容の最終的な調整を日中間で行っているところであり、また、実処理施設については、現在、安全事前評価報告書、環境影響評価報告書及び職業病危害事前評価報告書に必要なデータを収集するための調査等の作業を日中間で行っているところである。このため、処理施設の建設に必要な事業承認が中国政府から得られていない状況にある。

一の(三)について

 一の(一)及び(二)についてで述べたとおり、実処理施設を建設するためには、各種報告書を日中間で作成した上で、その事業承認を中国政府から取得することが必要である。また、昨年四月の日中首脳会談において表明した移動式処理設備の導入等、合理的かつ迅速に処理を実施するとの観点から、中国において遺棄化学兵器を処理する事業(以下「処理事業」という。)全体の在り方について検討を行っているところである。したがって、現時点において、お尋ねについて明確にすることは困難である。

二の(一)について

 移動式処理設備については、主としてハルバ嶺以外の中国各地で発掘回収された遺棄化学兵器を処理するために導入する予定であるが、その運用の在り方については、今後、中国政府と協議することとしている。

二の(二)について

 中国における遺棄化学兵器については、半世紀以上前の古い化学砲弾等が長期間土中等に埋設されていたもので、変形、腐食及び化学剤の一部漏洩等がみられる等、不安定な状態にあり、また、処理施設の建設を予定しているハルバ嶺に埋設されているもののほかに、同地域から遠く離れた中国各地においても発見され、これまで約四万四千発を発掘回収している。これらの中国各地において発掘回収した化学砲弾等については、その輸送に化学剤の漏洩や爆発等のリスクを伴い、輸送の安全を確保することが困難な場合があることから、中国政府の考えも聴取しつつ検討を重ねた結果、ハルバ嶺まで輸送して処理するよりも、移動式処理設備を使い化学砲弾等の保管場所近辺において処理する方が合理的であると判断したところである。

二の(三)について

 移動式処理設備の処理能力については、今後入札により採用する処理技術及び処理対象物等によって異なるため、現時点でお答えすることは困難である。
 また、お尋ねの具体的な計画については、移動式処理設備を運用する場所について、日中間で協議し、最初の運用場所を南京とすることで一致しているが、その後については日中間で協議しているところである。

二の(四)について

 政府としては、防衛省に保管されている戦史資料等についての累次にわたる調査のほか、旧日本軍関係者等からの聴取等を通じて、中国における遺棄化学兵器の所在に関する情報の収集に努力してきているが、現時点ですべての埋設地等を特定できる十分な資料は得られておらず、引き続き関係府省間で協力しつつ必要な調査を行っていく考えである。

二の(五)について

 移動式処理設備については、現時点で一基導入する予定であるが、当該設備の導入及び運転については、平成二十年度から平成二十三年度までの四か年度の事業として、国庫債務負担行為で約百九億円を計上している。このうち、平成二十年度予算においては、約五億円を計上しているところである。

二の(六)について

 移動式処理設備は、ルイサイトや「あか」剤等の化学剤を含む砲弾等を処理した際に残る有機砒素をほとんど無機化することができると考えられており、このため、移動式処理設備による処理後の廃棄物は、ハルバ嶺の実処理施設において、最終的な無害化処理等を行う予定である。
 また、処理後の環境汚染調査等の環境保全対策については、中国側と協議の上適切な措置を実施することとしているが、現時点でどのような措置を実施するかについては、お答えできる段階にはない。

二の(七)について

 お尋ねの「処理作業」の意味が明らかではないが、処理事業においては、化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約(平成九年条約第三号。以下「化学兵器禁止条約」という。)に従い遺棄化学兵器を廃棄するため、それを発掘回収するとともに、発掘回収した遺棄化学兵器を廃棄するための準備を進めている。なお、化学兵器禁止条約の実施及び検証に関する附属書第四部(A)十二においては、「化学兵器の廃棄」とは、化学物質を実質的に不可逆的に化学兵器の生産に適しないものに転換する過程並びに弾薬類及び他の装置を不可逆的に使用することができないようにする過程をいうと規定している。

三の(一)について

 内閣府は、株式会社遺棄化学兵器処理機構(以下「機構」という。)に対し、お尋ねの業務委託契約において、発掘回収施設等の建設や各種装置の製造に係る基本設計及び設計管理の技術コンサルティング業務、ハルバ嶺における発掘回収・実処理事業、ハルバ嶺以外の中国各地において発見された遺棄化学兵器等の発掘回収事業の事業実施計画の立案並びに建設会社・運営会社の選定等を総合的に処理する遺棄化学兵器処理事業総合管理業務を委託した。

三の(二)について

 処理事業については、中国において長期間埋設された大量の遺棄化学兵器を処理するものであり、知見及び技術を新たに蓄積しながら進めていくという特殊性を有すること、また、ハルバ嶺における事業が本格化するに当たり、行政組織の運営の効率化の観点等の理由により、内閣府が発掘回収施設等を調達、維持・管理することは困難であったことから、コンサルティング業務及び調達業務を一体的に処理する管理会社が必要であると判断し、機構と契約したところである。しかしながら、既に機構が設立されてから四年が経過し、内閣府においては、処理事業の実施に必要な知見等が蓄積されてきたことから、平成二十年度は機構と契約を行っていない。

三の(三)について

 機構においては、内閣府と業務委託契約を締結していた平成十六年度から平成十九年度までの間も、プロジェクト・マネージメント・コンサルタント(以下「PMC」という。)がそれまでに蓄積した技術的な知見等を活用することが適当であると考えたことから、機構のコンサルティング業務の一部をPMCに再委託していたものである。

三の(四)について

 内閣府が随意契約によりPMCに支出した金額は、平成十二年度が約〇・五億円、平成十三年度が約十・四億円、平成十四年度が約十六・〇億円、平成十五年度が約三十八・三億円である。
 また、機構が再委託で随意契約によりPMCに支出した金額は、平成十六年度が約三十四・一億円、平成十七年度が約二十三・七億円、平成十八年度が約二十・七億円である。

三の(五)について

 内閣府においては、機構の役員等に対して事実関係の聴取を行ったほか、機構及びPMCから提出された四半期ごとに作成される業務月報等の支出状況報告書、機構等からの委託承認願等に基づき、契約や執行に不適切な点がないか再確認を行ってきたところであるが、現在のところ、御指摘のような不正事実の有無について確認されていない。

三の(六)について

 三の(五)についてで述べたとおり、不正事実の有無については確認されていないが、内閣府としては、従来、随意契約により民間企業に処理事業についての業務を委託してきたところ、必要な知見が蓄積され、新たな処理事業の実施体制をとることが可能かつ適切と判断したことから、平成二十年度から処理事業に関する各種の調達を行うに当たっては、一般競争入札により業者を選定し、直接的に事業実施の全般にわたる適正な執行を監督する体制を強化し、さらに、事業全般に関し有識者から幅広く意見と助言を求めることとしている。

四の(一)について

 先の大戦に係る日中間の請求権の問題は、昭和四十七年の日中共同声明発出後、存在しておらず、政府として御指摘の「救済措置」を行うことは考えていない。

四の(二)について

 お尋ねの「医療体制」とは、処理事業において万一事故が発生した場合に対応するための医療体制を指しており、その確立のために、日中間で調査及び協議を行ってきているところである。

五について

 中国における遺棄化学兵器については、ハルバ嶺に埋設されていると推定される約三十万から四十万発のほか、ハルバ嶺以外の中国各地において、これまで約四万四千発を発掘回収した。他方、日中双方に遺棄化学兵器の所在に関する資料は十分なものがなく、すべての埋設地等を特定することは困難であり、今後も新たに発見される可能性も否定できない。また、昨年四月の日中首脳会談において表明した移動式処理設備の導入等、合理的かつ迅速に処理を実施するとの観点から処理事業全体の在り方について検討を行っているほか、近年も中国各地で遺棄化学兵器が発見されているところである。したがって、現時点において、お尋ねについてお答えすることは困難であるが、いずれにしても、政府としては、化学兵器禁止条約の廃棄期限を念頭に置き、これらの遺棄化学兵器の廃棄を一日も早く完了すべく最大限の努力を行っているところである。



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