答弁本文情報
平成二十年十一月二十一日受領答弁第二四一号
内閣衆質一七〇第二四一号
平成二十年十一月二十一日
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員前原誠司君提出医薬品のインターネット販売に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員前原誠司君提出医薬品のインターネット販売に関する質問に対する答弁書
一について
厚生労働省は、御指摘の公開討論において、インターネットによる医薬品の通信販売に係る副作用被害報告について把握していない旨説明したところであるが、その後、インターネットにより一般用医薬品を購入したとの記載がある事例において入院を要する被害が生じた旨の副作用被害報告があることが確認された。
現行の薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)において、インターネットによる医薬品の通信販売を禁止する規定はない。
厚生労働省としては、医薬品の販売に当たっては、消費者に対して、医薬品に関する情報が十分に伝達されなければならないこと等から、薬剤師等が、消費者に対して、直接、効能効果、副作用、使用取扱い上の注意事項を告げて販売すること(以下「対面販売」という。)について、薬局開設者等に対する指導を行ってきたところであるが、特に、インターネットによる医薬品の通信販売については、こうした対面販売の趣旨が確保されないおそれがあるため、最小限遵守しなければならない事項を示して、指導を行ってきたところである。しかしながら、当該遵守事項を逸脱した事例が見受けられたことから、再度、その周知徹底を図るため、御指摘の通知を発出したものである。当該通知は、行政指導としての性格を有するものであり、薬事法上の個別規定を根拠とするものではなく、同通知に違反することのみをもって、同法に違反するものではない。
御指摘の薬事法施行規則改正案においては、第一類医薬品(薬事法の一部を改正する法律(平成十八年法律第六十九号。以下「改正法」という。)による改正後の薬事法(以下「新法」という。)第三十六条の三第一項第一号に規定する第一類医薬品をいう。)及び第二類医薬品(同項第二号に規定する第二類医薬品をいう。)については、その副作用等により入院を必要とするような健康被害を生じるおそれがあることから、これらについての情報提供は、対面販売の際に薬剤師等が行うこととし、適切な情報提供が行われることを確保することとしているものである。
また、御指摘の「郵便その他の方法」は、薬局又は店舗以外の場所に居る者に対して、薬局開設者等が販売又は授与を行う場合のすべての方法を指すものである。
お尋ねの「購入者側の状態」とは、購入者等の身体の状態等を指すものであり、購入者等が医薬品を使用することの適否について判断できるよう、薬剤師等は購入者等の身体の状態等を把握した上でその医薬品の使用方法等について情報提供を行うものである。
お尋ねの「円滑な意思疎通」とは、薬剤師等が情報提供を行うとともに、購入者等がその内容を理解しているかどうか確認し、又はその理解のために助言すること及び購入者等が薬剤師等の助言等に対して質問を行うこと等を指すものである。
薬剤師等が適切な情報提供を行うためには、医薬品の購入者等の状態を的確に把握する必要があり、そのためには、対面販売により円滑な意思疎通を図る必要があると考えている。
妊娠検査薬については、検査の時期やその時の状態等によって正しい結果が得られない場合があること等から、誤った使用方法等により日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがあるものとして第二類医薬品に指定されているところであり、薬剤師等による対面での情報提供が必要と考える。
お尋ねの科学的証拠の意味するところが必ずしも明らかでないが、薬剤師等が対面販売により情報提供を行う場合に比べて、郵便その他の方法による販売(以下「郵便等販売」という。)により情報提供を行う場合には、購入に当たって医薬品を示しながら説明等を行うことができないこと、購入者側が情報提供を求めた場合の対応に時間を要すること、購入者側のその時の状態を把握することが困難であること等の理由により、医薬品についての情報提供が十分に行えないと考える。
郵便等販売の場合には、御指摘のようなメール、電話等を活用する方法や、必要な情報を入力させるなどの方法をとった場合でも、購入者側が情報提供を求めた場合の対応に時間を要する場合や情報提供が十分に行えない場合があり、対面販売の場合に比べて、医薬品が不適切に使用される危険性が大きいものと考える。
また、御指摘のウェブ上で専門家の資格に関する情報を提供する方法は、実際に薬剤師等が情報提供を行っているかどうかを購入者等が確認することは困難であると考える。なお、薬局又は店舗では、薬剤師等であることを掲示し、及び着衣又は名札により判別させることで、情報提供が薬剤師等によって行われていることを容易に確認できるものと考える。
薬局又は店舗以外で医薬品を購入したいという御指摘のような方の要望があることは承知しているが、これらの方についても、一般用医薬品による副作用を防ぐため、その適切な選択及び購入並びに適正な使用を担保することが重要であり、特に、高齢者、障害者、妊婦、育児中の方については誤った医薬品の使用により重大な副作用被害の発生につながるおそれがあることから、より一層適切に情報提供を行うことが必要であると考える。
新法第三十六条の五の規定は、薬局開設者等が行う一般用医薬品の販売方法について定めるものであり、また、新法第三十六条の六の規定は、薬局開設者等が行う一般用医薬品の情報提供の方法について定めるものである。具体的な販売方法や情報提供の方法については、これらの規定に基づく厚生労働省令において定めることとされており、その具体的内容として、御指摘の薬事法施行規則改正案において、対面販売やその際の情報提供の方法等について定めることとしているものである。
改正法の基本的な考え方は、インターネットによる通信販売であるか否かにかかわらず、一般用医薬品の販売に当たっては、薬剤師等が購入者に対して対面により適切な情報提供を行うことを担保するというものであるが、これは、「IT時代にふさわしい新たなルール」を検討していくことの必要性そのものを否定するものではない。一方、改正法は、改正法附則第一条本文において、その公布の日(平成十八年六月十四日)から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされており、その円滑な施行に向けて、地方公共団体等による十分な準備期間を確保できるよう、関連政省令等を速やかに制定する必要があると考えている。