答弁本文情報
平成二十八年一月十二日受領答弁第六号
内閣衆質一九〇第六号
平成二十八年一月十二日
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員長妻昭君提出厚生年金違法未加入の調査結果に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員長妻昭君提出厚生年金違法未加入の調査結果に関する質問に対する答弁書
一から四までについて
平成二十六年国民年金被保険者実態調査(以下「本調査」という。)は、平成二十六年三月末時点の国民年金第一号被保険者について、被保険者の国民年金に対する意識、保険料未納の理由等、今後の国民年金事業運営に必要な資料を得ることを目的として実施したものである。
御指摘の厚生年金保険の適用の可能性があるにもかかわらず、国民年金第一号被保険者となっている者の数約二百万人程度という推計値は、平成二十六年三月末時点における国民年金第一号被保険者(任意加入被保険者を含む。)約千八百五万人のうち、任意加入被保険者、外国人、法定免除者、転出による住所不明者、二十五歳以上の学生納付特例者及び東日本大震災を踏まえた、調査開始時点における福島県の避難指示区域に住所を有する者を除いた国民年金第一号被保険者(以下「調査対象である第一号被保険者」という。)約千五百八十三万人について、本調査における就業状況を基に、厚生年金保険の適用の可能性があるにもかかわらず、国民年金第一号被保険者となっている者の数として機械的に推計したものである。
推計方法としては、「法人の事業所」又は「農林水産業、飲食店・宿泊業等の場合を除く従業員が常時五人以上いる個人経営の事業所」に勤めており、就業形態が「常用雇用」又は「パート・アルバイト(週の労働時間が三十時間以上)」であると回答した者の都市規模別、保険料納付状況別、年齢階級別及び都道府県別の区分ごとの数に、区分ごとに設定されている集計乗率(乗率設定用の母集団数を本調査の有効回答数で除した率)を乗じたものを、全ての区分について合計することで推計している。ここでいう、乗率設定用の母集団数とは、有効回答数が零である区分の母集団数を同じ都市規模別、保険料納付状況別、年齢階級別の区分における有効回答数が零でない都道府県の当該区分の母集団数で比例あん分し、それらの都道府県の当該区分の母集団数に加えた数である。
約二百万人程度という推計値は、平成二十六年三月末時点における国民年金第一号被保険者(任意加入被保険者を含む。)約千八百五万人の約十一・二パーセント、調査対象である第一号被保険者約千五百八十三万人の約十二・八パーセントに当たる。
約二百万人程度という推計値の年齢階級別推計値及び当該年齢階級別推計値の各年齢階級における調査対象である第一号被保険者数に対する割合は、二十歳から二十四歳までが約三十九万人(約十一・二パーセント)、二十五歳から二十九歳までが約三十二万人(約二十・五パーセント)、三十歳から三十四歳までが約二十七万人(約十七・五パーセント)、三十五歳から三十九歳までが約二十五万人(約十四・六パーセント)、四十歳から四十四歳までが約二十四万人(約十二・七パーセント)、四十五歳から四十九歳までが約二十万人(約十一・八パーセント)、五十歳から五十四歳までが約十六万人(約九・五パーセント)、五十五歳から五十九歳までが約十九万人(約八・五パーセント)となっている。
国民年金については、本調査の結果における就業形態が「常用雇用」の者と「パート・アルバイト・臨時」の者の合計が約六百三十八万人であり、調査対象である第一号被保険者約千五百八十三万人のうち約四十・三パーセントを占めるが、この中には、厚生年金保険の適用とならない事業所に勤めている者や適用事業所に勤めているが労働時間が短く厚生年金保険の適用とならない者も含まれている。厚生年金保険の適用の可能性があるにもかかわらず、国民年金第一号被保険者となっている者の数は、一から四までについてで述べたとおり、約二百万人程度と推計される。
国民健康保険については、お尋ねの数は把握していないが、平成二十五年度国民健康保険実態調査報告によると、市町村(特別区を含む。以下同じ。)の国民健康保険に加入している世帯のうち、世帯主が被用者である世帯が占める割合は約三十一・二パーセントである。
お尋ねの国民年金保険料を滞納した者に対する財産の差押えが行われた件数については、平成十七年度においては三千四十八件、平成十八年度においては一万千九百十件、平成十九年度においては一万千三百八十七件、平成二十年度においては五千五百三十四件、平成二十一年度においては三千九十二件、平成二十二年度においては三千三百七十九件、平成二十三年度においては五千十二件、平成二十四年度においては六千二百八件、平成二十五年度においては一万四百七十六件、平成二十六年度においては一万四千九百九十九件である。また、お尋ねの同年度に差押えが行われた件数のうち、本来、国民年金第一号被保険者とならない者に係る差押えの件数については、把握していない。
また、お尋ねの国民健康保険の保険料等を滞納した者に対する財産の差押えが行われた件数については、平成十二年度においては四万五千三百四十六件、平成十三年度においては四万四千百十二件、平成十四年度においては五万千四百六十一件、平成十五年度においては五万五千八百三十件、平成十六年度においては六万八千四百八十八件、平成十七年度においては七万七千二百六十二件、平成十八年度においては九万五千二百二十八件、平成十九年度においては十二万五百二十五件、平成二十年度においては十六万四千三百六十九件、平成二十一年度においては十七万七千二百六十件、平成二十二年度においては十八万七千四百十二件、平成二十三年度においては二十一万二千八十七件、平成二十四年度においては二十四万三千五百四十件、平成二十五年度においては二十五万四千九百八十二件である。また、お尋ねの同年度に差押えが行われた件数のうち、本来、国民健康保険の被保険者とならない者に係る差押えの件数については、把握していない。
御指摘のサンプル調査の実施については、先の答弁書(平成二十六年四月四日内閣衆質一八六第九八号)一の@及びAについて及び二の@及びAについてでお答えしたとおり、本来、厚生年金保険又は健康保険に加入すべき者が国民年金又は国民健康保険の被保険者となっている場合、そのことは適切なものとはいえないが、当該者の勤務先が厚生年金保険若しくは健康保険の適用事業所若しくは厚生年金保険若しくは健康保険を適用すべき事業所であるかどうか、又は当該者の勤務形態が厚生年金保険若しくは健康保険の被保険者資格を満たすかどうかについては、実際に事業所に対する調査を行って初めて把握可能であるため、現在行っている事業所に対する必要な調査に更に取り組み、確実な適用を進めていくことを優先すべきであると考えており、国民年金保険料又は国民健康保険の保険料等を滞納した者に対する財産の差押えのうち、本来、厚生年金保険又は健康保険に加入すべき者に対して行われたものの件数について、実態把握を行う考えはない。
国民年金保険料を滞納した者に対する財産の差押えについては、市町村において行っていないため、御指摘の「厳格なチェックをすること」を市町村に要請する考えはない。
また、国民健康保険の保険料等を滞納した者に対する財産の差押えについては、仮に、本来、健康保険に加入すべき者が国民健康保険の被保険者となっている場合、当該者の勤務先が健康保険の適用事業所若しくは健康保険を適用すべき事業所であるかどうか、又は当該者の勤務形態が健康保険の被保険者資格を満たすかどうかについて、実際に事業所に対する調査を行って初めて把握可能であるため、市町村の窓口において厳密に確認を行うことは困難であり、御指摘の「厳格なチェックをすること」を市町村に要請する考えはない。
御指摘の「救済策」の意味するところが必ずしも明らかでないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。
厚生年金保険を適用すべき事業所に対する厚生年金保険の適用に当たっては、適用事業所となった後においても、被保険者資格の取得及び喪失の届出、毎月の保険料納付等、事業主の義務を的確に履行させる必要があり、日本年金機構においては、事業主の理解を求めながら、可能な限り自主的な加入手続をするよう指導しているところである。
また、立入検査予告とは、加入指導に応じず、届出義務を果たさない事業主に対して、日本年金機構が権限により立入検査を行い、職権により適用することがあることを事前に通告するものであり、加入指導では面談することができなかった事業主と面談が初めて可能となる等の効果もあり、立入検査の実施の前に自主的な加入手続につながる最終的な届出指導として行ってきたものである。なお、会計検査院が平成二十七年に取りまとめた平成二十六年度決算検査報告(以下「平成二十六年度決算検査報告」という。)の結果においては、立入検査予告が行われた事業所のうち立入検査予告が行われたことにより自主的な加入に至った事業所の割合は約四割となっている。
御指摘の立入検査予告をしてから三か月以内に立入検査を行っていない理由については、加入指導では事業主と面談ができず、また、立入検査予告によってもなお、事業主と面談ができていない状況等により、立入検査の実施ができなかったため等である。
また、お尋ねの立入検査予告を行った後二年以上経過しても立入検査を実施していなかった件数については、平成二十六年度決算検査報告において、立入検査予告が行われても自主的な加入に至らなかった千百十七事業所について、そのような事案はない。
お尋ねの厚生年金保険への加入を三回以上指導したにもかかわらず加入に応じない事業所に対し、一年以上、立入検査予告を行わなかった件数は、平成二十六年度決算検査報告において検査対象となった百八十七年金事務所について、三千九百七十五事業所であり、また、立入検査予告を行わなかった理由は、勧奨により事業主から自主届出の可能性があると判断したこと等である。未適用事業所に対して立入検査を実施する際には、日本年金機構が定めた立入検査実施手順に基づき、事業実態が確認できた場合に立入検査を実施することとしているが、事業所の個々の実情に応じ柔軟に対応するため画一的な期限は設けていなかったものであり、日本年金機構において担当職員に対する処分等を行う考えはないものと承知している。
今後の改善策については、政府としては、日本年金機構において、効果的、効率的な適用促進業務全体の在り方を検討するよう指導してまいりたい。
厚生年金保険の適用事業所数については、平成二十四年度以降平成二十六年度まで一貫して増加しているところである。また、国民年金保険料についても、現年度分の納付率は平成二十四年度以降平成二十六年度まで上昇しているところである。
政府としては、厚生年金保険の適用促進について、しっかりと取り組むべき重要な課題であると考えており、今後とも、更に効果的、効率的な取組について検討してまいりたい。