答弁本文情報
平成二十八年三月一日受領答弁第一四〇号
内閣衆質一九〇第一四〇号
平成二十八年三月一日
衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員仲里利信君提出久辺三区への再編関連特別地域支援事業補助金の交付に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員仲里利信君提出久辺三区への再編関連特別地域支援事業補助金の交付に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の「政府の判断のみで構築し制定できる予算補助」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一般論として申し上げれば、法律によらない予算措置による補助金の交付は認められていることから、平成二十七年度当初予算において、再編関連措置の円滑化を図るための事業として計上し、国会における審議を受け議決を経て、同予算は成立したところであり、防衛省としては、当該事業を執行するため、平成二十七年十一月二十七日、再編関連特別地域支援事業補助金交付要綱(平成二十七年防衛省訓令第五十号。以下「補助金交付要綱」という。)を制定したものである。
一についてで述べたとおり、一般論として申し上げれば、法律によらない予算措置による補助金の交付は認められている。再編関連特別地域支援事業補助金(以下「本件補助金」という。)は、政府が普天間飛行場代替施設建設事業を進めていく上で、直接最も大きな影響を受けることとなる地域に対し、生活環境の保全や生活の向上を図るため、よりきめ細やかな施策が必要であることから設けられたものである。したがって、本件補助金は、自衛隊等の行為又は防衛施設の設置若しくは運用により生ずる障害の防止等のため防衛施設周辺地域の生活環境等の整備について必要な措置を講ずるとともに、自衛隊の特定の行為により生ずる損失を補償することにより、関係住民の生活の安定及び福祉の向上に寄与することを目的としている防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和四十九年法律第百一号)に基づく法律補助ではない。
名護市辺野古区、豊原区及び久志区(以下「久辺三区」という。)は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百六十条の二第一項に規定する地縁による団体(以下「地縁による団体」という。)に該当し、また、名護市久志区は同条第七項に規定する認可地縁団体に該当する。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号。以下「補助金適正化法」という。)第三十二条第一項に規定する法人は、法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含むこととされており、久辺三区は当該法人に該当する。さらに、地縁による団体に対して、国が直接補助金を交付した事例はある。
久辺三区に対する本件補助金については、防衛大臣が、補助金適正化法等の関係法令に基づき、補助金の交付が法令及び予算で定めるところに違反しないかどうか、補助事業の目的及び内容が適正であるかどうか、金額の算定に誤りがないかどうか等の調査を行い、その交付を決定しているところである。また、補助事業者等である久辺三区は、補助金適正化法第十一条等の規定に基づき、法令の定め並びに補助金等の交付の決定の内容及びこれに付した条件その他法令に基づく各省各庁の長の処分に従い、善良な管理者の注意をもって補助事業等を行わなければならないこと等とされている。したがって、当該補助事業等の実施に関する責任については、久辺三区が負うこととなる。
お尋ねの「選挙で選ばれた政治家が最終的な責任を負う団体」の意味するところが必ずしも明らかではないが、公金については、一般的に国又は地方公共団体に属する金銭の総称と解している。公金の支出先となる補助事業者等である久辺三区に対して本件補助金を交付することは、四から六までについて及び七についてでお答えしたとおり適正であり、また、久辺三区においては、本件補助金について補助金適正化法等に基づいて補助事業を適正に実施しているところである。
本件補助金の補助の対象については、補助金交付要綱第五条第一号において、再編関連特定防衛施設に所在する駐留軍(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)に基づいて日本国にあるアメリカ合衆国の軍隊をいう。以下同じ。)又は自衛隊の部隊又は機関が保有する航空機の数が四十機を超えて増加すること及び当該防衛施設に所在する駐留軍又は自衛隊の部隊又は機関の人員の数が千人を超えて増加することのいずれにも該当し、又は該当すると見込まれることを要件とし、かつ、同条第二号において、関連地縁団体が再編関連特別地域支援事業を行う場合に、国が当該事業の支援を行うことが駐留軍等の再編の円滑な実施に資するため特に必要と認められることを要件としており、明確に規定されている。その上で、久辺三区は、区域内に所在するキャンプ・シュワブが同条第一号の要件を満たし、また、普天間飛行場代替施設建設事業を進めていく上で、直接最も大きな影響を受けることとなる地域であることから、同条第二号の要件を満たしているので、久辺三区を補助の対象としたところであるが、補助の対象となる要件を全て満たしているのは、沖縄県内において久辺三区のみである。
また、久辺三区からは、普天間飛行場代替施設建設事業に関し、様々な要望がなされたことを受けて、関係府省庁と久辺三区の代表者との間で久辺三区の振興に関する懇談会等において議論するなど、これまで意見交換を重ねてきたところである。このような経緯を踏まえ、久辺三区は、当該代替施設建設事業を前提とし、住民の不安の除去と生活の向上に取り組むよう要望しているものと承知している。
久辺三区は、政府が普天間飛行場代替施設建設事業を進めていく上で、直接最も大きな影響を受ける地域である。また、防衛省は、当該代替施設建設事業の事業者であり、久辺三区が受けている影響を生じさせている事業主体者であることから、かかる状況に鑑みれば、国による補助において、補助事業者等である久辺三区に負担割合を生じさせることは適切ではないことから、補助率については十分の十としたものである。
防衛省としては、普天間飛行場代替施設建設事業の影響を緩和し、住民の生活の安定を図るため、久辺三区の要望に対して、できる限りの配慮をすることは当然のことであり、合理的理由があるものと考えている。また、これまでも防衛施設の影響を受ける防衛施設周辺の団体や個人に対して、補助を行ってきているところであり、本件補助金については、国が補助を行うもののあくまでも事業そのものは久辺三区が実施するものである。したがって、「政府自らこれまで培ってきた地方自治や財政支出の基本的なルールを崩壊させる無謀な行為」及び「憲法第十四条の「法の下の平等」の原理からすれば、「特段の合理的理由がないにも関わらず、不当に特定人の行う事業に対してのみ補助金等を交付し、または補助率を高くする」ことは許されないことである。翻って今回の補助金を見ると、同補助金は正しく憲法違反である」との御指摘は当たらない。