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答弁本文情報

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平成二十八年十一月二十五日受領
答弁第一五〇号

  内閣衆質一九二第一五〇号
  平成二十八年十一月二十五日
内閣総理大臣 安倍晋三

       衆議院議長 大島理森 殿

衆議院議員仲里利信君提出米軍のヘリコプターに使用されている放射性物質やジャングル戦を想定した訓練で使用している枯葉剤等の環境汚染物質から沖縄県民の命の水がめと希少生物・絶滅危惧種の住処である「やんばるの森」を守ることに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員仲里利信君提出米軍のヘリコプターに使用されている放射性物質やジャングル戦を想定した訓練で使用している枯葉剤等の環境汚染物質から沖縄県民の命の水がめと希少生物・絶滅危惧種の住処である「やんばるの森」を守ることに関する質問に対する答弁書



一について

 お尋ねの「ヘリ墜落・炎上事故の際に米軍が警察や消防等の立ち入りを拒んだこと」が具体的に何を指すのか必ずしも明らかではないが、平成十六年八月十三日に発生した我が国に駐留するアメリカ合衆国軍隊(以下「米軍」という。)のCH五三ヘリコプターの墜落事故(以下「CH五三事故」という。)に際しては、沖縄県警察、宜野湾市消防本部等の関係機関は、米軍とも必要な連携を図りつつ、CH五三事故の発生直後から事故現場の警備、消防活動等を実施しており、適切な対応が行われたものと考えている。なお、昭和二十八年十月の刑事裁判管轄権に関する事項についての日米合同委員会合意第20において、米軍機が米軍の使用する施設及び区域の外部にある公有又は私有の財産に墜落又は不時着した場合には、日米両国の当局は、許可のない者を事故現場の至近に近寄らせないようにするため共同して必要な統制を行うとされている。

二について

 政府としては、米軍がCH五三事故の現場周辺の土壌を搬出した理由は、汚染物質の特定を目的とした土壌調査を実施するためであったと承知している。

三について

 平成十六年九月、在京米国大使館は、CH五三事故の現場におけるガイガーカウンターの使用に係る報道機関からの質問に対し、ガイガーカウンターが使用されたこと、墜落したCH五三にはストロンチウム九十を含む回転翼安全装置及び氷結探知機が装備され、回転翼安全装置の六つの容器のうち五つの容器及び氷結探知機が回収されたが、回転翼安全装置の残りの一つに含まれるストロンチウム九十(約五百マイクロキュリー)は機体の燃焼及び溶解で気化した可能性が高く識別不能であること、その焼失による人体への危険性はないこと等について回答したと承知しているが、米軍が行った調査の詳細については承知しておらず、お尋ねについて確たることをお答えすることは困難である。
 なお、沖縄県が行ったCH五三事故の現場周辺の放射性物質による汚染の調査においては、特に異常は認められなかったと承知している。

四について

 お尋ねの「宜野座村の要求を米軍が理由も示さずに拒否したこと」が具体的に何を指すのか必ずしも明らかではないが、平成二十五年八月五日、キャンプ・ハンセン内に米軍のHH六〇ヘリコプターが墜落したこと(以下「HH六〇事故」という。)に伴い、宜野座村は、墜落場所の放射性物質による汚染の調査のため、キャンプ・ハンセン内への立入りについて、同年十一月八日、沖縄防衛局を通じて、在沖米海兵隊に立入申請を行い、平成二十六年三月六日、同海兵隊から立入許可を得ている。また、同様に、同村は、墜落場所の確認のための立入りについて、平成二十五年十一月十八日に立入申請を行い、同月十九日に立入許可を得ており、さらに、宜野座大川ダムの水の安全確認のための立入りについて、平成二十六年六月十九日に立入申請を行い、同年八月六日に立入許可を得ている。

五について

 政府としては、HH六〇事故の現場において米軍が実施した環境調査の報告書により、当該現場における鉛とヒ素の検出値が土壌汚染対策法施行規則(平成十四年環境省令第二十九号)第三十一条第一項の基準(以下「土壌溶出量基準」という。)を超えたものと承知しており、それぞれ最大検出値をお示しすると次のとおりである。
 鉛 一リットル当たり〇・七四四ミリグラム
 ヒ素 一リットル当たり〇・二一五ミリグラム
 また、お尋ねの鉛やヒ素について、それぞれの人体への影響(国際がん研究機関による分類)をお示しすると次のとおりである。
 鉛 ヒトに対して発がん性があるかもしれない物質
 鉛(無機化合物) ヒトに対して恐らく発がん性がある物質
 鉛(有機化合物) ヒトに対する発がん性については分類できない物質
 ヒ素及びその化合物 ヒトに対して発がん性がある物質

六から八までについて

 米軍機においてお尋ねの物質が使用されている目的及び理由、当該機体が燃焼した場合の対策等については、米軍の装備品に関することであり、個別の機種におけるお尋ねの物質の使用の有無を含め、政府として確たることをお答えすることは困難である。
 また、環境試料に付着したストロンチウム九十の測定方法については、平成十五年に文部科学省が改訂した「放射能測定法シリーズ二 放射性ストロンチウム分析法」に記載されている。お尋ねの「監視体制」及び「被曝の可能性」の意味するところが必ずしも明らかではないが、一般的に、環境中の放射性物質の濃度の測定を行う必要が生じた場合には、国、地方公共団体等が連携し、測定を行い、監視することとなる。測定の結果、高濃度の放射性物質を確認した場合、放射線障害を防止するための対策として、放射性物質による汚染の除去等が行われることとなる。

九について

 米軍機の個別の機種におけるストロンチウム九十の使用の有無については、米軍の装備品に関することであり、政府として確たることをお答えすることは困難である。その上で、一般論として申し上げれば、ストロンチウム九十はカルシウムと化学的な性質が類似していることから、体内に取り込まれた後、一部は血液を通じて骨に沈着し、一部は尿等と共に体外に排出されるものと承知している。また、骨に沈着したストロンチウム九十が発する放射線は、内部被ばくをもたらすものと承知している。

十及び十一について

 お尋ねの「なぜ・・・米軍ヘリ等の部品として使用され続けているのか」については、米軍の使用する装備品に関することであり、確たることを申し上げることは困難であるが、政府としては、引き続き、米国政府に対し、米軍機の運用に際しての安全確保を求めていく考えである。

十二について

 御指摘の「米軍がベトナム戦争で使用した猛毒のダイオキシンを含む枯葉剤が一九六一年から六二年にかけて北部訓練場で散布され、作業に携わった元米兵が前立腺がんの後遺症を認定され、証言も行っている」とする平成十九年の報道については承知している。

十三について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、十二についてで述べた報道を受けて、米国政府に対して確認した結果、沖縄における枯葉剤の保管や使用を裏付ける記録は確認できなかった旨の回答を得ている。また、その後さらに、米国政府は調査を行った結果として、沖縄において枯葉剤が荷揚げ、保管、使用若しくは埋設されたこと又は沖縄向け若しくは沖縄経由で運搬されたことを裏付ける記録は確認できなかったとしている。

十四及び二十について

 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和三十五年条約第七号)第四条1において、「合衆国は、この協定の終了の際又はその前に日本国に施設及び区域を返還するに当たつて、当該施設及び区域をそれらが合衆国軍隊に提供された時の状態に回復し、又はその回復の代りに日本国に補償する義務を負わない」旨規定されている。このため、米軍から施設及び区域が返還された場合には、我が国の責任において原状回復措置を行っているところである。沖縄県における米軍の施設及び区域の返還に際しては、沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法(平成七年法律第百二号。以下「跡地利用特措法」という。)第八条の規定に基づく返還実施計画を定め、航空写真による確認や米軍に対する使用履歴の確認等を行い、米軍の使用に起因するものに限らず土壌汚染等の状況の調査を実施した上で、返還が合意された区域の全部について、返還後において当該土地を利用する上での支障の除去に関する措置を当該土地の所有者等に当該土地を引き渡す前に講ずることとしている。

十五について

 御指摘の「水質や土壌汚染の蓋然性が高い」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

十六について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、CH五三事故においては、米軍、沖縄県及び沖縄国際大学が現場周辺の土壌及び水質の調査を行った結果、米軍の調査からは土壌から多量の油分が検出され、同大学の調査からは鉛等で土壌溶出量基準を超えた値が検出されたが、同大学により土壌の除去が行われたと承知している。
 また、HH六〇事故においては、米軍、同県及び宜野座村が土壌及び水質の調査を行った結果、米軍及び同県の調査からは鉛等で土壌溶出量基準を超えた値が検出されたが、米軍により土壌の除去が行われたと承知している。
 お尋ねの「調査」等については、その対象が必ずしも明らかではないため、お尋ねについてお答えすることは困難である。

十七について

 垂直離着陸機MV二二オスプレイ(以下「MV二二」という。)は、普天間飛行場において常時運用される機数としては二十四機が配備されていると承知しているが、今後、当該運用機数を変更する計画を米国政府が有しているとは現時点では承知しておらず、MV二二による訓練の詳細についても、米軍の運用に関することであり、政府として承知していない。
 また、お尋ねの「オスプレイの大規模な配備と過密で危険な訓練」の意味するところが明らかではないが、政府としては、引き続き、米国政府に対し、MV二二の飛行に際し、安全を確保するとともに、地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう求めていくことに加え、米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄の負担軽減を図るべく、沖縄県外でのMV二二の訓練等の実施を着実に進めるなど、沖縄県民の皆様の気持ちに寄り添いながら、政府としてできることは全て行うとの姿勢で取り組んでいく考えである。

十八及び十九について

 お尋ねについては、仮定の質問であり、お答えすることは困難であるが、政府としては、お尋ねのような事故が発生しないよう、引き続き、米国政府に対し、米軍機の飛行に際しての安全確保を求めていく考えである。

二十一について

 政府としては、北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業について自主的に行っている環境影響評価で実施することとしている事後調査において、MV二二等の飛行運用を踏まえた騒音、植物、動物等の調査を実施するなどヘリコプター着陸帯の運用に伴う野生動植物への影響の把握に努めることとしている。さらに、米軍が訓練を実施するに当たっては、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払うこととなっており、その一環として環境の保全にも考慮が払われるものである。また、同訓練場については、平成八年十二月に発表された沖縄に関する特別行動委員会の最終報告において、ヘリコプター着陸帯を、返還される区域から同訓練場の残余の部分に移設すること等を条件として、その過半を返還することとされており、その返還は、沖縄県内の米軍の施設及び区域の面積の約二割に当たる本土復帰後最大の返還である。しかしながら、返還に関する日米合意から既に二十年が経過しているものの、いまだ返還は実現しておらず、政府としては、もはや先送りは許されないものと考えており、沖縄の負担軽減のため、同訓練場の早期の返還を目指し、引き続き、着実に取組を進める必要があると考えている。

二十二及び二十四について

 北部訓練場の過半約四千ヘクタールの返還に係る跡地利用特措法第八条の規定に基づく返還実施計画については、同条第五項の規定に基づき平成二十八年十一月十六日に沖縄県から提出された意見書の内容を踏まえつつ、返還される地域の情勢に配慮したより実効性のあるものとなるよう定めたいと考えている。
 また、これまでも、政府としては、同訓練場周辺の航空機の騒音測定や、同訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業に係る自主的な環境影響評価を行っており、引き続き、地元の方々の生活環境や自然環境に十分に配慮しながら、同訓練場の早期の返還を実現していく考えである。

二十三について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(昭和三十五年条約第六号)が、我が国の安全並びに極東の平和及び安全の維持に寄与するため、米軍の我が国への駐留を認めていることは、別段の定めがある場合を除き、米軍がかかる目的の達成のため、訓練を含め、軍隊としての機能に属する諸活動を一般的に行うことを当然の前提としていると解される。一方、米軍は全く自由に訓練等を行ってよいわけではなく、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきものであることはいうまでもなく、米軍もこの点には十分留意して、安全面の配慮を払うとともに、地域住民に与える影響を最小限にとどめるよう努めているものと承知しているが、政府としては、我が国における米軍の活動について、必要な場合には、協議を行う等、適切に対応していく。



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